連載
#110 夜廻り猫
子ども食堂の記事で思い出す…「みんなが食べられる社会に」夜廻り猫

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#110 夜廻り猫
小学校の教師だった男性。かつての給食がなかった時代は、昼の時間になると教室から姿を消す子どもたちがいたことを思い返します。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、SNSで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、ニュースに心を痛める男性のエピソードです。
夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵。心の涙の匂いに気づき、「子ども食堂」などの新聞記事を切り抜く男性に声をかけました。
男性は、小学校の教師でした。当初は学校給食がなく、「昼になると、教室からいなくなる子が何人もいた。弁当を持ってこられない子は、空腹で時間をつぶすしかない」と振り返ります。
「だから、学校給食が始まった時はうれしかったよ。みんなが食べられる、誰も隠れないでいい……」
遠藤は、「はい……!」と頷きます。すると男性は、「そうだ、煮魚の残り、食べる?」と遠藤と子猫の重郎に声をかけるのでした。
作者の深谷かほるさんは、「いきなり倍に値上がりしたお米は、値下がりしないですね。こんなことが起きるとは、想像もつきませんでした。自分は甘かったなあ、と思う昨今です」と話します。
厚生労働省の統計では、日本の17歳以下の子どもの貧困率は11.5%(2021年)とされており、「栄養バランスのとれた食事は給食だけ」といった現状があります。
深谷さんは「いま日本にも、飢えている人がいるんですよね。私は、『みんなが食べられる社会ではなくては、自分の幸福もない』と思います」と指摘します。
「どうしてこんなことになったのか理解し、これからのことを無責任にならずに決めていかねば、と思います」と語っています。
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