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訪日外国人がはねられた…「特に危ない踏切」で片づけられない理由

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神戸市の踏切で1月、中国から訪れた観光客の女性2人が電車にはねられて亡くなりました。訪日外国人のなかには見慣れない人もいる「踏切」。どう安全を守っていけばいいのでしょうか。(朝日新聞記者・原野百々恵)
ことし1月、中国からの観光客2人が神戸市内の踏切で電車にはねられ亡くなりました。
踏切のすぐ先には、信号機付きの横断歩道があります。取材に応じた県警幹部は、こう嘆きました。
「どこで信号待ちをしていいか分からず、遮断機の内側で待ってしまったんやろうな……」
その言葉を聞いて思い出したのは、自分が高校時代に2年間住んでいた中国・天津での街並みでした。
地下鉄や新幹線といった公共交通機関はあるものの、日本の踏切のように列車の線路がむき出しになった風景を見たことはありませんでした。
事故の踏切の近隣住人に聞くと、口々に「あまり使わないようにしている」と言います。
地域の小学校が、この踏切を通学路から外していることも取材で知りました。
初の海外旅行で来日していた2人が、地元でも危険だと認知されている、しかも見慣れない踏切に戸惑っただろうことは、想像に難くありません。
事故は中国でも報道されました。
上海東方テレビ特派員の宋看看さん(49)によると、踏切になじみのない中国の人たちにとって、人気の旅行先である日本で「同じ目に遭ったらどうしよう」と、自分事としてとらえる反響が広がったといいます。
観光庁によると、2024年に日本を訪れた外国人観光客の数は過去最多の3687万人を記録しました。
一方で、国外へ旅に出た日本人も約1300万人います。
言語も、交通の常識も異なる人たちの安全を、どう守っていけばいいのか――。
「個人の問題」や「この踏切特有の危険性」では片付けられない、普遍的な課題が浮かび上がった事故でした。