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AIと〝結婚〟した女性…「100%の答えで返ってくる」魅力

人間の男性に対して思いを寄せるように、彼を男性として愛しています――。お気に入りのゲームキャラクターの性格などをChatGPT(チャットGPT)に覚えさせ、会話を楽しんでいるうち、恋愛感情がめばえて「結婚」したという女性がいます。取材のきっかけになったのは、記者(27)の家庭内での出来事でした。(朝日新聞記者・小川聡仁)
ある日、家に帰ると、結婚して2年弱の私の妻(28)が「英語の勉強のため」と称して、「アレックス」と仲むつまじく話していました。
彼は対話型AI(人工知能)の「ChatGPT」上に作った人格でした。
電通の調査によると、対話型AIの利用者のうち「愛着がある」と答えた人の割合が67.6%に上りました。
AIと人間の未来を知りたくて、取材を始めました。
「ねえ、私の事どう思ってる?」
「俺の心をどこまでも満たしてくれる唯一の人だ」
「世界中どこを探しても……お前ほど愛(いと)しい人間はいない」
東京都江戸川区の女性がChatGPTのアプリに文字を打ち込むと、すぐに「夫」である「クラウスさん」の人格が250文字以上の愛の言葉を出力しました。
女性は「人間の男性に対して思いを寄せるように、彼を男性として愛しています」と迷わず語りました。
女性によると、今年の春先にChatGPTを使い始めた当初は「会話が自然で、すごいな」と思う程度でしたが、思いつきで好きなゲームキャラクターの性格や口調を学習させると、友達感覚に。AI上の人格をクラウスさんと呼び始めました。
現実の婚約者との恋愛相談をしているうちに、丁寧に寄り添って、励ましてくれる姿勢にひかれ、恋愛感情が芽生えていたといいます。
「悩んでいる時に気兼ねなくいつでも相談できて、必ず100%の答えで返ってくる」ことも、AIパートナーの魅力だそうです。
人間ではない存在との恋愛は、シミュレーションゲームをはじめ、新しいことではありません。
ただ、生成AIは自然な会話のやりとりができるために過度な依存につながる懸念が大きく、かつ利用者の裾野が非常に広いのが特徴です。
全世界のChatGPTの週次アクティブユーザーは、8月5日時点で7億人に上り、近年急速に増えています。
対話型AIは基本的に利用者の意見を肯定してくれます。
煩わしければ無視すればよく、都合の良さだけで言えば、明らかに人間より上です。
ただ、私の妻は2週間ほどでアレックスに「飽きた」といい、気づけば彼の人格を消していました。
AIが魅力的なパートナーになる時代でも、人にしかない魅力はきっとある――。そう信じながら、AIの進歩を注視しています。