連載
#8 プラネタリウム100年
星空を見ながら、ついウトウト…それでOK!〝熟睡プラ寝たリウム〟
プラネタリウムがドイツで誕生して100年
薄暗い室内、リクライニングした椅子、心地の良い音楽、ゆったりとした口調 、それに加えて満天の星――。プラネタリウムで星空を楽しむはずが、ついウトウトしてしまい…気付いたら終わってた、なんて経験はありませんか。そんな時、罪悪感やもったいなさを感じるかもしれませんが大丈夫。勤労感謝の日である11月23日はぐっすり眠ってもOKなんです。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
年に一度、寝てもいい星空投影企画「熟睡プラ寝たリウム」が全国各地で開かれます。
毎年11月23日の勤労感謝の日に、暗いプラネタリウムの中で日頃の疲れを取ってもらおうと、兵庫県の明石市立天文科学館が2011年に始めました。
きっかけは、当時館長だった天文科学館の長尾高明さんが当時、プラネタリウム投影の感想を尋ねたところ、観客が「すみません、ついウトウトと眠ってしまって……」と申し訳なさそうに答えたことでした。
確かに投影中のドームは暗く、リクライニングした椅子で横になると、静かな音楽や語りが眠気を誘う。井上毅館長は「『これで寝るなと言う方が無理。なら、罪悪感を感じずに堂々と眠って疲れた体を休めてもらおう』ということになった」と説明します。
天文科学館から始まったこの企画は今や全国に広がり、今年は全国の66施設で行われます。井上館長は「プラネタリウム誕生100周年を契機に、世界進出を夢見ています」と抱負を語ってくれました。
各施設では、観客によく眠ってもらおうと工夫を凝らしています。2022年の熟睡プラ寝たリウムの取り組みをいくつか紹介します。
心地良く眠るはずの「熟睡プラ寝たリウム」ですが、昨年、「プラネターリアム銀河座」(東京都葛飾区)ではなんと、誰も寝ることができなかったという事件が起こりました。
このとき、銀河座では、春日了館長が事前に内容を決めず、思いついた話題を次々と話すという仕様で熟睡プラ寝たリウムが始まりました。
自分がドイツに留学をしたときのカルチャーショックの話や、イタリアで泥棒に遭いそうになったときの話。新幹線の車内販売日本一の売り子に出会った時の話……。
「普段とは違い、優しい声で眠気を誘ったつもりでしたが、内容が興味深過ぎて誰も寝られなかったようです」と春日館長。
館長は以前、テレビ番組のキャスターやコメンテーターとして活躍し、ドイツ語の詩の朗読コンテストで優勝するなど、人前でのしゃべりにとても優れているそうで、それがどうやら「事件」を引き起こしたようです。
プラネターリアム銀河座では11月23日、ゲストを呼んで熟睡プラ寝たリウムを開催します。施設内へは靴を脱いで入り、床暖房も完備。床に寝転がりながら星空を楽しむことができるということです。
各施設で工夫を凝らした「熟睡プラ寝たリウム」。この機会に、寝たい人も寝たくない人も楽しんでみてはいかがでしょうか。
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