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激レア!スピノサウルスの本物の〝頭骨〟5日間だけ公開 あの恐竜も
こんなに間近で見られるなんて!
スピノサウルスやトリケラトプス、プテラノドン……。普段は関係者しか見られない恐竜などの化石が、東京のギャラリーで7月24日から5日間だけ特別公開されます。
数億年前の地球に暮らしていた生物の化石を、至近距離で見られる貴重な展示。
化石は1人のコレクターからの寄贈で、「実物の化石を見て地球と生物の歴史を知ることで、現在を考え、未来を想像してほしい」という思いが込められていました。
成城学園(東京都世田谷区)の敷地内にある、「杉の森館 恐竜・化石ギャラリー」。1階の展示室に入るとすぐ、〝海の王者〟モササウルス類の頭の骨が出迎えてくれました。推定全長は15mですが、頭部だけでもその大きさに圧倒されます。
中学校の旧校舎の一部を改修して作ったギャラリーは、1階「海の世界」と地下1階「陸の世界」の2フロア(いずれも約500平方メートル)。
古生物や恐竜などの化石が約140点展示されていて、その8割がレプリカではなく本物の化石です。
「海の世界」には、モササウルス類や首長竜類の全身骨格、アンモナイトの化石などが並び、「陸の世界」には、スピノサウルスやティラノサウルスの仲間の頭骨、トリケラトプス、プテラノドンといった人気の恐竜の化石が展示されています。
化石は、成城大学OBで宗教学者・古生物学者でもある化石コレクターの十津(とづ)守宏さん(49)から寄贈・提供されました。
十津さんは「本物の化石を見て生き物の進化や多様性を感じていただきたい。どれだけ精巧なレプリカでも、本物の質感にはかないません」と話します。
十津さんによると、最も希少なのは「陸の世界」に展示されている本物のスピノサウルスの頭骨です。「世界で最も保存状態のいいスピノサウルスの頭骨と言える」と評価します。
ティラノサウルスの仲間の頭骨も展示されていますが、頭部が完全な状態で残る実物は、国内で同ギャラリーのみだといいます。
「海の世界」にある新種のモササウルス類の全身骨格は、骨が岩石に埋没した状態のまま展示されている「産状標本」です。
「化石とはこういう形で出てくる、と見ていただくためにあえて産状標本をそろえています」
ギャラリーの総合監修は、「恐竜博士」として知られる国立科学博物館副館長の真鍋真さんが務めました。
展示の配置や見せ方は「地球史上で意味のある展示」にするため気を配ったといいます。
ティラノサウルスの仲間の頭骨とトリケラトプスの頭骨(レプリカ)は向かい合っていますが、「同じ白亜紀後期を生きて戦っていたであろう様子」を表現したそうです。
展示されている化石の一部は、ガラスケースで覆われることなく間近で見られるようになっています。「本物を至近距離で観察し、イマジネーションをかきたててもらいたい」という思いからです。
十津さんは「一般の博物館では、このようなセキュリティー状態で見ることはできない」と話す一方、「化石は繊細なため、お手を触れないようにお願いしています」と注意を呼びかけます。
このギャラリーは、基本的には一般に公開しておらず、普段見学できるのは成城幼稚園・成城学園初等学校・中学校高等学校・大学の関係者のみ。初等学校や中学校では、理科の授業で使用されています。
ただ、「研究・教育に資する目的」であれば、外部の研究機関や教育機関からの見学も受け付けているそうです。
オープンしたのは2020年11月。十津さんから「化石を提供したい」と連絡があったことがきっかけでした。十津さんは15年前から化石を集め始めたといいます。
「本来の専門は宗教学・哲学でしたが、昔から古生物が好きでした。生命の始まりはどういったものだったのか、進化のメカニズムはどういったものなのかに関心を持ち始めました」
「現代は、地球史上では『第6の大量絶滅の時代』と言われています。種の多様性が人間の文明活動によって急激に損なわれた結果、何が起こるのか。古生物を通して、そういった環境問題や生態系全体の問題に目を向けていただくきっかけになればと思い、ギャラリーを構想しました」
ギャラリー内の黒板には、監修した真鍋さんのメッセージも掲げられていました。
「過去の大量絶滅から学ぶことによって、私たちは地球の未来を想像することができます」
「このギャラリーに集う一人一人が、地球の未来に想像力と行動力で貢献することが求められています」
もし恐竜が絶滅していなかったら人類は存在していたのか。人類は今後どんな道をたどるのかーー。
夏休み、子どもも大人も想像力を膨らませてみると楽しいかもしれません。
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