ネットの話題
17歳で手足の自由を失って 「今を生きている理由」を一冊の本に
立ち止まっては前を向くことを繰り返してきたという彼女に話を聞きました
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立ち止まっては前を向くことを繰り返してきたという彼女に話を聞きました
会社経営者で、YouTuberで、パンテーンのCMにも出演――。17歳で交通事故に遭い手足の自由を失った高橋尚子さんの著書が、先日発売されました。立ち止まっては前を向くことを繰り返してきたという彼女に話を聞きました。
10月5日に発売された初の著書「生きる 一歩一歩、前へ」(評言社)。
事故に遭った時のことから現在に至るまでの思いや出来事を綴った一冊です。
熊本県出身で高校時代は卓球選手として活躍。
県高校総体で優勝するほどの実力がありました。
事故が起こったのは2011年1月22日。
東京で開催された全日本選手権の帰り道、熊本空港から寮に向かう途中で、乗っていた車とトラックが交差点で衝突。
後部座席からフロントガラスに頭から突っ込むかたちとなり、手術は5時間に及びました。
頸髄損傷により、鎖骨から下がまひし、車椅子で生活することに。
腕は曲げられる範囲や角度が限られていて、胸から下は暑い、寒い、痛いといった感覚がありません。
気持ちが落ち込んですべてのSNSをやめた時期もありましたが、ウェブデザインのスキルを習得。
ホームページ制作やパンフレットのグラフィックデザインを手がけるように。
2019年に「熊本バリアフリープロジェクト(くまバリ)」という活動を立ち上げ、その後、株式会社CREIT(クレイト)の代表になりました。
CREITでは「心のバリアフリー」のきっかけとなるサービスや仕組みづくりを手がけていて、地元企業とのコラボ商品も発売しています。
YouTubeの「しょうこちゃんねる」では、車いすでの日常や、自身の体験から感じた気づきや思いを発信。
昨年は、P&Gのヘアケアブランド「パンテーン」のCMにバリアフリー活動家として出演しました。
書籍化のオファーがあったのは昨年6月。
尚子さんにとって、本を出すことはかなえたい夢の一つでしたが、即答できなかったといいます。
「本も読まない自分に文章が書けるのか、書いたところで誰が読むんだろう、本当に私でいいの?という迷いがありました」
出版社からの熱心な説得を受けて3カ月後に決心。
なぜ本を作るのか、読者にとってどんな意味がある本にしたいのか。
やってみたいことや、全体のイメージ、掲載したい言葉などを箇条書きにしたスライド資料を作り、編集者に送ったそうです。
執筆にあたっては、難しい言葉は使わず、改行も多くして読みやすさを意識したといいます。
「心がけたのは『前向きの強要にならないように』ということです。自分もつらいとき、前向きになろうと無理をして苦しくなったり、誰にも相談できなくなったりした経験があるので」
表紙写真やカバー、帯のデザインも自分たちで担当。
帯には「何度も死にたいと思った私が、今を生きている理由」と書かれています。
この一文に込めた思いについては、こう話します。
「今の自分しか知らない人にも、過去の葛藤を知ってもらいたい。そして、今『死にたい』と思っている人にこそ、私が生きている理由を知ってもらいたいんです」
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