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幻想的!〝サイバーアブラゼミ〟に「強そう」「かっこいい!!」の声
どのように撮影したのでしょうか?
「ジリジリジリ……」と鳴き、夏から秋にかけて見られるアブラゼミ。茶色い羽に黒く焦げ茶色っぽい体ですが、ブラックライトを当てた姿がとても幻想的で、SNSで話題になりました。「かっこいい!!」「めちゃくちゃ強そう」というコメントが寄せられています。
話題になったのは、生き物を中心に撮影する写真家・森久拓也さん(43)=島根県松江市在住=がツイッターに投稿した写真です。
黒の背景に、アブラゼミの輪郭が青や緑、紫色で浮かび上がります。
「かっこいい!!」「試してみよう!」「めちゃくちゃ強そう」「生物界は不思議に満ちてる」といったコメントが寄せられ、「いいね」は5.6万を超えました。
一体、どのように撮影されたのでしょうか?
「アブラゼミの標本を黒い背景の上に置いて、ブラックライト(紫外線を発するライト)を当てて撮影しました」(森久さん)
森久さんによると、「体に紫外線が当たり、そのエネルギーを受けてアブラゼミ自体が光っている」そうです。
そこには、「紫外線」と「蛍光」という現象が関係しています。
「紫外線は、光のうち紫よりも波長の短い光線で、ヒトの目で見ることはできないもののことです」
「紫外線がものに当たると、普通は反射します。しかし、中には紫外線のエネルギーを吸収して、その過剰なエネルギーを目に見える光として放つものがあります。これが蛍光という現象です」
蛍光は弱い光のため、写真を撮るときには「長い時間シャッターを開けて撮影」していたといいます。
森久さんは「紫外線を当てることで、アブラゼミ自体が光り出す。それだけで私はワクワクしてしまいます」と話します。
「眼と翅脈(しみゃく)という羽のスジが特に光っており、まるでこういったデザインのアートの様です」
カニやトンボ、クモ、ムカデ……。
生物の蛍光について調べている森久さんは、セミのほかにもライフワークとして数々の「紫外線写真」を撮ってきました。
もともと生物が蛍光するとは知りませんでしたが、過去に仕事で蛍光鉱物に紫外線を当てて撮影した経験がありました。
「ある日、『ミドリイソギンチャク』を海で見かけ、この鮮やかな色彩は蛍光を使っているのかもしれない、と考えました。蛍光鉱物と同じように撮影すると、非常に強い蛍光を放ち、心底驚きました」
生物の蛍光については、まだほとんど解明されていないそうです。
「誰も知らないだけで、蛍光する生物が他にもいるだろう」。そう思い、様々な生物を撮影しています。
「最初は不思議さ、美しさが楽しくて撮影していたのですが、中には生態的に意味があるとしか思えないような蛍光を示す生物もいて、学術的にも貴重な検証なのではと思うようになりました」
「これまで紫外線で生物の蛍光を調べるアプローチはあまりなかったので、どの生物がどんな蛍光を示すか、カタログを作っていくだけでも『非常に有意義である』と研究者の方から評価いただいたこともあります」
夏休みの自由研究や趣味など、紫外線写真にチャレンジしたいと思う人へ向けて、森久さんにアドバイスをもらいました。
「蛍光の様子を観察するためには、紫外線の『質』と『強さ』の二つにこだわると良いと思います。市販のブラックライトでも十分蛍光を観察することができますが、あまり安いものだと、紫外線の『質』が悪いことが多いです」
ここでいう「質」とは、「可視光線」を含まない紫外線をさします。
「ちゃんとしたブラックライトはピーク光の波長を明記してあります。これが『365nm』のものを選ぶと良いと思います」
「強さ」に関しては、「電池を多く使うブラックライト」がおすすめだそうです。
撮影時のポイントは、「ライトと被写体」をなるべく近づけること。「距離が離れると紫外線が弱くなってしまう」そうです。
一方で、紫外線の扱いには注意しなければいけません。
森久さんは、「ブラックライトの発光部は絶対に直視しないでください。紫外線は目に見えないので非常に強い紫外線が目に入っていても気がつきません。紫外線をカットするメガネかサングラスをかけて観察すると安全です」と話しています。
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