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連載

#17 #ふしぎなたてもの

「ゲームボーイかと…」4回名前変えたホテルに高度経済成長の面影

L stay & grow晴海=旧デン晴海
L stay & grow晴海=旧デン晴海 出典: 朝日新聞社
東京五輪の選手村があったことでも記憶に残る東京都中央区の晴海エリア。付近を歩くとユニークな外観をした建物に気づきます。見た人から「ゲームボーイかと思った」「ブラウン管テレビをたくさん貼り付けたみたい」と評されるデザインは、この50年、名前や運営を変えながら残り続けたホテルです。経緯を取材しました。(withnews編集部・朽木誠一郎)
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「過去4回改名」のホテル

東京オリンピックの選手村があった東京都中央区の晴海エリア。再開発中の街を歩くと、月島警察署を挟んで旧選手村の反対側に、ユニークな外観をした建物が佇んでいることに気づきます。

ネットで「ゲームボーイかと思った」などと書き込まれるデザインは、高度経済成長期に一部の建築家たちにより行われた、「メタボリズム」建築を思わせるものです。メタボリズムとしては、黒川紀章さんの中銀カプセルタワービルが有名です。
 
解体工事の進む中銀カプセルタワービル=2022年4月18日
解体工事の進む中銀カプセルタワービル=2022年4月18日
一体これは何なのか、調べてみました。結論から言うと、これは1975年に竣工された旧「デン晴海」というホテル。現在は株式会社マックスパートが「L stay & grow晴海」として運営しています。

他方、このホテルはこれまでに「晴海グランドホテル」「ホテルフクラシア晴海」として運営されていた時期もあり、何回か長期の休業も経験。こうした経緯について、マックスパートに話を聞きました。

同社によれば、デン晴海は当初、リクルートコスモス系のコスモスホテル開発が運営していました。個性的なデザインは建築家の上浪恒さんによるもの。​​その後、マックスパートの親会社であるカラカミ観光がこれを買収、晴海グランドホテルとしてオープン。運営はマックスパートが行うことになりました。

晴海グランドホテルとしては、ホテル専門誌『週刊ホテルレストラン』の調査で4年連続客室稼働率1位を獲得。その後、ブランド変更に伴う改装再開業のため、​​2017年10月~18年5月まで​​休業。その後はホテルフクラシア晴海として運営されましたが、21年3月​​に一度、閉業を発表しました。

その上で、大和ライフネクストのカンファレンスホテル「L stay & grow」ブランドのホテルとして、マックスパートが引き続き運営する形で、22年6月に再度オープン。このように複雑な経緯をたどりました。
現在のL stay & grow晴海。
現在のL stay & grow晴海。 出典: 朝日新聞社
この旧デン晴海について、建物マニアのhacoさんに、その魅力をうかがいました。hacoさんが以前、共著で出版した、東京の東側にあるいいビルを集めた写真集『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』の表紙はこのホテル。かねてから愛好していたと言います。

まずはやはり「まるでブラウン管のテレビをたくさん貼り付けたように見える、個性的な外観に惹かれます」とhacoさん。

「勝どき駅から晴海通りを歩いて向かう途中、黎明橋の手前から、近代的なビルとホテルの特徴ある外観が並んで見えるのが面白い。屋上にある、斜めに切り取られたような塔屋もかっこいいです」

hacoさんはフクラシア晴海時代に宿泊したこともあるそうで、当時の内部の様子も教えてくれました。

「ホテルの内装や設備は新しく綺麗になっていて、過ごしやすかったです。竣工当時の痕跡はほとんど見当たりませんでしたが、2階のエレベータ前の照明と非常用誘導灯、駐車場の文字など、一部に名残りを感じました。

四角い窓を内側から見ることができ、どう開くのかわかったのもうれしかったです。押して開けるタイプの窓で、下側が10センチほど開きます​​」

この50年、手から手へと渡ってきたホテル。逆に言えば、過去の特徴的な建築物が取り壊されていく中、こうして旧デン晴海が引き継がれていったとも言えます。晴海に立ち寄った際は、L stay & grow晴海から、高度経済成長の面影を感じ取ってみるのもよさそうです。

【連載】#ふしぎなたてもの

何の気なしに通り過ぎてしまう風景の中にある #ふしぎなたてもの 。フカボリしてみると、そこには好奇心をくすぐる由縁が隠れていることも。よく見ると「これなんだ?」と感じる建物たちを紹介します。

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