ネットの話題
「GLAYの20万人ライブみたい」ひじきの収穫後が〝まさか〟の姿に
ツイートの裏で繰り広げられていた壮絶作業
まるで「大観衆のライブ会場」のような1枚の画像がツイッターで話題になっています。写っているのは、食卓でもおなじみのあの食材でした。投稿した漁師に話を聞きました。
話題になった画像は、照明に無数の「黒い影」が浮かび上がっています。ブロック分けされていて、一見、観客で埋まったライブ会場のアリーナ席のよう。
画像とともに投稿した文章は、こう種明かししています。
この投稿には「だまされました」「完全に夜の野外ライブ」「照明の具合とか、ライブ会場感が出てる」「めちゃめちゃ盛り上がってるね!」と注目され、1.4万件のいいねを集めました。
おなじみの食材である「ひじき」の収穫されたばかりの姿に、「そうか……ひじきって”漁”だったんだ……!」などと、驚く声も上がりました。
大観衆のライブ会場だと思うでしょ?
— さかえる🏝ひじき漁師 (@sakaeruman) December 4, 2021
収穫したひじきだ。 pic.twitter.com/3UYNdRgZ2z
ひじき漁が解禁された直後の12月は、超多忙ですが、メッセージで裏話を聞かせてくれました。
榮さんは、山口県周防大島でひじきを生産している、32歳。
2019年に「師匠」について漁をスタートさせました。それまでは「ひじき漁」とはまったく異なる仕事をしていたそうです。
前職は東京・大手町にある日本政策投資銀行で、大企業向けの投融資を行ったり、銀行そのものの資金繰りや資金運用を担当したり。
「脱サラ」して地方移住し、いまの生活を始めました。
投稿した画像を撮影したのは、今年12月4日の明け方5時ごろ。収穫したひじきを干し場に広げているところを撮りました。
作業場で光を浴びて、黒く輝くひじき。以前、この様子をツイートしたところ、フォロワーから「GLAYの20万人ライブみたい」と反応があり、「ライブ会場」に見えてきたと言います。
収穫後のひじきの画像に反響が集まり、「多くの人に自分たちの収穫したひじきの情報が届いてうれしいです!」と榮さん。
でも、なぜそんな未明の撮影になったのか。
裏にはひじきの、壮絶な収穫風景がありました。
ひじきは磯の岩の上に生えています。
ひじきの漁期は12月から4月まで。この時期の最も潮が引く時間を狙って、磯に出かけます。それが深夜から明け方だそうです。
夜10時には、仲間と漁場や天候を踏まえて作戦会議。
漁場である磯は船が接岸できないところが多く、時には真っ暗な山道をかきわけ、ロープをつたって磯へ降ります。
夜11時ごろから、凹凸のある岩の上で、手作業でひじきを刈り取っていきます。
潮の満ち引きとの戦い。刈っては運びを繰り返して、多い時は一晩で1・5トンを運ぶといいます。
夜中2時半過ぎ、干し場にひじきを広げて、ようやく仮眠。そして日が昇ると、手作業でひっくり返して、乾燥させていきます。
夜の磯は危険がいっぱい。とにかく安全に気をつけてひじきを収穫します。場所によったら落ちたら命に関わるところも... pic.twitter.com/MesDOTWpWG
— さかえる🏝ひじき漁師 (@sakaeruman) December 14, 2021
ひじきを手で刈り取るのにも「けっこうなコツ」が必要で、きれいに刈り取るようになるまで2年かかったと言います。
前職の銀行での仕事とはまったく違う「ひじき漁」。
一方で、「漁も他の仕事同様、情報が命です」と言います。
「風向きや潮、天候、湿度まであらゆる情報を仕入れて予測を立てながら業務を遂行します。金融マーケットの分析などにも共通するようなところがあるなぁと感じていますし、高度な経験と分析に基づく判断が必要になる仕事です」と榮さんは話します。
これが、こうなるって10年前の自分に言っても信じないだろうな...。
— さかえる🏝ひじき漁師 (@sakaeruman) June 24, 2021
2年もあればマジで人生なんていくらでも変わるし、変えられる。 pic.twitter.com/lsWc94Vm8Y
いまはひじき漁以外にも、畑やWeb・動画・講演まで手がけ、収入の柱をいくつも持つ「現代の『百姓』」を自称します。収入は脱サラ前を上回るまでになったそうです。
田舎での暮らしは厳しさもありますが、庭付き一戸建ての家に暮らすという都会ではなかなか難しい生活もかなえました。
なにより、移住前の生活とは、まったく違う光景に出会う日々。
「以前の生活を思い返すことはほとんどありません!」と言います。
榮さんの目標を聞きました。
「しあわせに生きること」。
そのために、「自分が成長し、家族や友人と良好な関係を維持し、所属するコミュニティに貢献し続けていきたい」と言います。
目標に向き合いながら、進路を選んできた榮さん。
考え中。わしの住んでる集落で住み込みインターン?募集やったらこういうのって興味ある人おるかな
— さかえる🏝ひじき漁師 (@sakaeruman) August 18, 2021
・週3月10万円(副業前提)
・不便さをチャンスだと思える
・仕事はSNS、ウェブから制作畑や草刈りまでさかえるのやってること何でも伝える代わりに何でもたくましく一緒にやりつつ2年以内に独立前提 pic.twitter.com/Gv3ViIHcuC
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