ネットの話題
目印はボロボロの首輪 姿消した愛猫「奇跡の再会」導いたツイート
インターネットがつないだ飼い主の願い
2年前に姿を消してしまった愛猫。必死の捜索もなかなか実を結ばず、再会を諦めかけていた飼い主の運命を変えたのは、一本のツイートでした。「まさに奇跡」とSNS上で大きな話題を呼んだ、小さな物語。一部始終に関わった動物保護団体のスタッフに、大切な”パートナー”の命を守る方法について聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
団体はこれに続き、ちびちびが飼い主と対面したときの様子もツイート。名前を呼びかけられ、弱々しくも確かな声で「にゃあ」と返事をしたことについて、動画と共に報告しました。そして「迷子猫を探しているかた、諦めないでください」と結んでいます。
いずれのツイートにも5千以上の「いいね」がつき、「長い間よく頑張ってくれた」「もう絶対離さないで」といったねぎらいのコメントが、いくつも寄せられました。
奇跡が起きました!
— 四日市にゃんこレスキュー愛の手(ランちゃん捜索中) (@nekomusume28) June 24, 2020
昔、知り合いが2年前に飼い猫が行方不明になったことを話していました。
当時、写真がなかったため、情報を絵に書いて残していたのですが…
最近、Twitterに負傷猫の情報が挙げられていたので、上記の飼い猫ちゃんについて思い出し、飼い主さんに聞いたところ、自分の猫だと… pic.twitter.com/r0d9u4fDp7
ツイートの「中の人」は、保護団体スタッフ・黒猫娘さんです。飼い主の女性とは、過去に保護した猫を団体に預けたことが縁で、親しくなったといいます。自身はちびちびと会ったことがなかったものの、預けた猫などに関する相談に乗っていたそうです。
普段の暮らしぶりを聞く機会もありました。気ままな性格だけれど、知らない人にはついていかないこと。痛んだ首輪を交換させようとしない、頑固な一面があったこと。寝るときは必ずベッドに潜り込んできたこと……。飼い主はいつも楽しそうに語っていたといいます。
ところが2018年10月、穏やかな日常が突然絶たれます。「当時、団体の代表が営んでいたハンドメイド雑貨店を飼い主さんが訪れたとき、『自宅の外に散歩へ行ったきり、戻ってこない。近所中探しても見つからない』と打ち明けてくれたんです。とても悩んでいる様子でした」
黒猫娘さんは捜索を申し出ます。しかし飼い主の手元には、手がかりとなるような写真がありません。そこで猫の特徴を聞き取りながら、スマートフォン用のイラスト制作アプリを使い、全身のイメージ画像を手がけました。
画像をSNS上で拡散するなどしましたが、有力な情報が寄せられることは全くなかったといいます。「飼い主さんは行方不明の間、いつか戻ってくるのではないかと、ずっと庭を眺めながら過ごしていたそうです」
転機が訪れたのは、今年6月23日のこと。三重県内の別の動物愛護団体が、前日に保護したという、瀕死(ひんし)の虎猫の写真をツイートしたのです。
「何か見覚えがある」。たまたま写真を目にした黒猫娘さんは、過去にツイッター上で投稿した情報を見返し、その猫がちびちびではないかと思い至ります。
黒猫娘さんによると、猫は飼い主の自宅周辺から、10キロ以上離れた路上で発見されました。全身傷つき、脱水症状がひどく、いつ命を落としてもおかしくない状況だったそうです。地元の保健所に収容されていたところ、愛護団体が譲り受けたといいます。
その後、元獣医である団体代表が看護を担当。24日夕方、飼い主が猫のもとを訪れ、ちびちびであると確認しました。
判断できたのは、あの青い首輪をつけていたから。ボロボロになっても、交換しようとすると嫌がって逃げてしまい、ついに付け替えられなかったことが、プラスに働いたのです。
飼い主の姿を認めたちびちびは、顔を上げ、うれしそうに鳴きました。しかし帰宅してから、意識が混濁。黒猫娘さんが冒頭のツイートを投稿した後、夜になって、静かに息を引き取ります。
電話で一報を受けた飼い主は、ほどなく遺体を焼いて弔い、動物向けの共同墓地に埋葬したそうです。形見として持ち帰ったのは、生前の時間を深く刻んだ、首輪だけでした。
ちびちびが生涯を閉じる前に、飼い主とかろうじて顔を合わせられたのは、インターネットの拡散力あってこそーー。黒猫娘さんは、愛護団体への感謝を述べつつ、そのように振り返ります。
そして、猫を自宅に迎えた人々に対し、次のように訴えました。
「愛猫を失いたくないのであれば、完全に室内飼いとすることが大事だと思います。中外飼いをされている方には、これをきっかけにやめたり、リードやハーネスをつけて、目に見える範囲で散歩をさせたりすることも検討して頂きたいです」
「それでもなお、室外に逃げてしまうことはあり得ます。そのときには、どうか『諦めない気持ち』を持って下さい。今の時代は、あらゆる情報がインターネット上に載っています。細かく追えば、いつか姿を消した子たちの足跡に行き着くかもしれませんから」
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