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羽生結弦の「会見力」 通訳使わず英語で応対、一瞬で「ゆづ色」

定番の「プーさんは森に……」以外にも、こんなやりとりが……。

会見中に水を飲む羽生結弦選手=2018年4月22日、仙台市青葉区、林紗記撮影
会見中に水を飲む羽生結弦選手=2018年4月22日、仙台市青葉区、林紗記撮影 出典: 朝日新聞

目次

スポーツ選手の会見や取材では、試合では見られない一面を知ることができます。サッカーの強豪レアル・マドリードへの移籍が発表された久保建英選手(18)がスペイン語で見事な受け答えを披露し、その「会見力」が話題になりました。フィギュアスケートにおいて、「会見力」が優れている選手と言えば、羽生結弦選手(ANA)、宇野昌磨選手(トヨタ自動車)です。演技と同様に、周りの人間を自分の世界に引き込む羽生選手の「世界観会見」。名言連発でいじられがちな宇野選手の「自然体会見」。試合後の楽しみを深掘りしてみました。

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気づけば羽生結弦ワールド

羽生選手は自ら仕切るタイプです。報道陣とコミュニケーションを取りながら、時にはユーモアも交えながら質問に答えてくれます。気づけば「羽生ワールド」にその場を変えてしまいます。

今年3月、さいたま市で開かれた世界選手権。総合2位になった羽生選手の取材には、国内外から数十人が押し寄せました。羽生選手の一言一句を聞き逃すまいとピリピリした雰囲気の中、羽生選手が周りを見渡しながら一言。「(取材を始めて)大丈夫ですか」。報道陣を気遣う一言でした。

その後のやりとりは羽生選手がテンポを作っていきました。「(もっと強くなりたいという発言について)練習しかないですよね。ただの練習じゃなくて、いろんなことに着手していかないとダメだなっていうのをすごく感じています」「(演技後、氷に触れたことについて)今日は氷がすごく締まっていて、6分間に入った瞬間に『ありがとう、大好きだ』って思いながらやっていたので。本当に『跳ばしてくれてありがとう』っていうふうに思っていました」
 
報道陣の質問の意図を自分なりに解釈し、考えていることを的確に言葉にします。海外記者とのやりとりも通訳を介さず英語で対応しています。

時にはユーモアを交えてくれます。ショートプログラムの後の囲み取材では、4回転ジャンプでミスしたことに触れ、「頭が真っ白になった」と発言。すると「これ1面に書かれるのかな。書かないでくださ~い」と冗談ぽく語り、報道陣を笑わせてくれました。

ファンからのプレゼントで、リンクに大量に投げ込まれる「くまのプーさん」のぬいぐるみに関して、「プーさんは森に……」と返すのも定番のやりとりになっています。

男子フリーの演技後、会見にのぞむ羽生結弦=2016年10月29日、遠藤啓生撮影
男子フリーの演技後、会見にのぞむ羽生結弦=2016年10月29日、遠藤啓生撮影 出典: 朝日新聞

報道陣だけではありません。世界選手権の公開メダルセレモニーでは、約3千人のファンを前に、「これ(メダルセレモニー)に来るために(ファンの方は)大変だったと。来られなかった方にも声を届けたい。どんな状況からでもいろんな熱い思い、応援、心配の声が届いていました。これからも心配かけさせると思うんですが、一緒に戦ってくださるとうれしいです」と、甘いメッセージ。最後までファンに向けて手を振り続け、ファンの心をわしづかみにしていました。

氷上以外でも圧巻のパフォーマンスを見せてくれるのが羽生選手です。

世界選手権のメダルセレモニーで、ファンに笑顔を見せる羽生結弦=内田光撮影
世界選手権のメダルセレモニーで、ファンに笑顔を見せる羽生結弦=内田光撮影 出典: 朝日新聞

会場がほっこり、宇野昌磨

一方、宇野選手は自然体のタイプです。

「一つ目のジャンプを失敗した時点で笑えてきました」(18年平昌五輪)。「(遠征先で)僕は食事にはあまり興味がない。起きて、ここが日本なのか海外なのかわからないくらい、場所に興味がない」(19年JOCシンボルアスリート認定式)。

自分の気持ちを素直に表現し、その言葉のチョイスは独特で、会場はいつもほっこりした雰囲気になります。

今年3月にあった世界選手権の前日会見では、羽生選手に質問が集中する中、宇野選手に質問がいくと、「気を遣って質問していただいてありがとうございます」と答えて、会場内は和やかになりました。

宇野選手のコメントは度々メディアに取り上げられ、ファンも注目しています。

昨年は語録を集めた卓上カレンダー「EVERYDAY SHOMA」も発売されました。「(ゲームの)課金は負けではない。手段です」「野菜を食べている時が一番ツラい」など数々の名言が紹介されました。

試合では4回転フリップをはじめ、高難度のジャンプをいくつも跳び、豊かな表現力を見せる宇野選手。その姿と会見や囲み取材で見せる姿のギャップも魅力です。

四大陸選手権で優勝し、記者会見に応じる宇野昌磨=2019年2月12日、千葉県成田市の成田空港、根岸敦生撮影
四大陸選手権で優勝し、記者会見に応じる宇野昌磨=2019年2月12日、千葉県成田市の成田空港、根岸敦生撮影 出典: 朝日新聞

新たなスタート「全部リセット」

たびたび「ネタ」にされることが多い宇野選手ですが、率直さ故に、心を打つ言葉が生まれることもあります。

先の世界選手権で4位に終わった宇野選手は、演技後、報道陣の前にしばらく姿を現しませんでした。気持ちの整理をつけるのが難しい中、瞳を潤ませながら取材に応じてくれました。

「僕は今、本当に正直な気持ちで答えると、結果を求めてとか1位になりたいって言っていた自分がこのような演技をしてしまうと恥ずかしいという、本当に自分にはそのような実力はなかったと思ってしまうほど、今は落ち込んではいるんですけど。まず、本当に僕を1からトップで争うためにはとか、そういう以前に自分がどこで戦っているかっていうのをまず全部リセットして、1から見直していこうかなと思っています」

世界選手権後、新たなスタートを切ることに決めた宇野選手は、長年師事した山田満知子、樋口美穂子両コーチの元を卒業すると発表しました。さらに、平昌五輪女子金メダルのアリーナ・ザギトワら有力選手を指導するるロシア人のエテリ・トゥトベリゼ・コーチの夏季合宿に参加すると、同コーチのインスタグラムで明らかになりました。

5回転ジャンプへの意欲を示すなど、さらなる活躍が期待されます。

インタビューで笑顔を見せる宇野昌磨=2019年4月27日、横浜市
インタビューで笑顔を見せる宇野昌磨=2019年4月27日、横浜市 出典: 朝日新聞

羽生選手は2年ぶりNHK杯出場へ

国際スケート連盟(ISU)は、今年のグランプリ(GP)シリーズの出場選手を発表しました。

羽生選手は、第2戦スケートカナダ(10月25~27日、ケロウナ)と第6戦のNHK杯(11月22~24日、札幌)に決定しました。右足の負傷で欠場した2017年以来のエントリーとなります。

宇野選手は第3戦のフランス杯(11月1~3日、グルノーブル)と第5戦のロシア杯(11月15~17日、モスクワ)に出場予定です。
今年はどんな会見が繰り広げられるのか、演技と合わせて注目です。

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