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「いいね」7万級の「火の元チェッカー」!お年寄り向けと思いきや…
とある企業が、お年寄りによる使用を想定し手がけた「火の元チェッカー」。ツイッター上で7万ほどの「いいね」を獲得する、まさかの事態となっています。開発の経緯は? 何がネット民の心をつかんだのか? ヒットについて「うれしい誤算」と語る担当者に、話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
今月3日、商品を紹介する画像がツイートされました。
家出る際の脅迫行動を予防にも、これはいいどうぐだな。あ、物忘れにもね。 pic.twitter.com/DxHkz7Zkpz
— 竹林崇@SNSで知識・講義を頒布する作業療法士 (@takshi_77) 2019年5月3日
板状のプラスチック製パネルには、縦長で長方形の枠が、六つ設けられています。黒い太字で書かれているのは、「ガス」「電気」「玄関」などの単語です。
枠の下には、つまみを上げ下げすると、「○」「×」の表示が切り替わるチェッカー部分も。例えば「ガス」なら、元栓を閉めた後、「×」を「○」にかえる……というように使います。
ツイートは「家出る際の脅迫(強迫)行動を予防(するの)にも、これはいい」と評価。「朝出かけていく時も安心」「災害時にも迷わず行動出来そう」などのコメントが殺到しています。
14日時点で、7万近い「いいね」がついている他、リツイートも3万回を超えました。
商品名は、ずばり「火の元・戸締りチェッカー」。ネットショップなどで取り扱われており、価格は1058円(税込み)です。誕生までのいきさつに関し、今年4月から販売を始めた企業、コモライフ(大阪市)に聞きました。
発案者は、同社の商品企画部長・長尾与志秀さん(56)です。
長尾さんは50代になってから、外出後に自宅の鍵を閉めたか分からなくなるなど、物忘れを疑う機会が増えたといいます。
そこで自身を含め、70人ほどの社員の親にヒアリングを実施しました。すると多くの人が、「火の元や戸締まりができているか、外出先で不安になる」との本音を打ち明けたのです。
結果は、商品に生かされました。象徴的なのは、枠に貼る全17種類のラベルです。「勝手口」「窓」の他、「こたつ」「アイロン」など、家電製品の名前が採用されています。何も書かかれていないものも3枚あり、カスタマイズが可能です。
縦幅5.5センチ・横幅10センチという、持ち運びやすいサイズも特徴の一つ。付属のキーホルダーで、鍵に取り付けることが出来ます。
同社は1972年の設立以降、主に生活用品を開発。全国の生協や、通販業者に卸してきました。長尾さんによると、現在の利用者は、60~70代がほとんどです。
それだけに、ツイッターでのヒットは予想外だったそう。長尾さんは「20代の娘にも『ツイートを見た』と言われました。うれしい誤算ですね」と笑います。
ツイートには、「自分用に買いたい」「親にあげたい」といった声が寄せられました。それについて、長尾さんは次のように語ります。
「心配事があると、外出を楽しめないのは、誰もが同じ。商品が、そうした悩みを解消したり、若い人とお年寄りが交流するきっかけになったりすれば、とてもありがたいですね」
火の元や戸締まりの確認。そう聞くと、何となく「お年寄りへの呼びかけかな」と思われるかもしれません。今回の投稿が反響を呼んだのは、なぜなのでしょう?
コメント欄には、「個人的には、この機能では足りない」「タグを書き換えて使いたい」などの内容が並びました。投稿主の多くは、現役世代とみられる人々です。
考えてみれば、朝の出勤前などの余裕がない時には、周囲への注意がおろそかになるもの。私自身、部屋のライトをつけたまま出かけ、電気料金の請求額を見てのけぞった……という経験が何度もあります。
「他人事じゃない」「自分でも使えそうだ」――。
そんな思いが広く共有され、ヒットにつながったと言えそうです。取材を通じ、世代に関係なく、人々の生活を豊かに出来るという、「アイデアの底力」を見た気がします。
ちなみに私は、腕時計や鍵を、部屋のどこに置いたか分からなくなりがちです。定位置にしまったかの確認に、チェッカーを活用してみたいと思いました。
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