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結婚願望は吹っ切れたけど……「孤独死」不安に備える42歳女性

「単身社会」で孤立せず、前向きに生きていこうと、つながり合い、支え合う仕組みを模索する女性たちがいます(写真はイメージです)
「単身社会」で孤立せず、前向きに生きていこうと、つながり合い、支え合う仕組みを模索する女性たちがいます(写真はイメージです) 出典: pixta

目次

 平成とは単身化が進んだ時代でした。その「単身社会」で孤立せず、前向きに生きていこうと、つながり合い、支え合う仕組みを模索する女性たちがいます。朝日新聞デジタルで昨年7月に配信され、このほど刊行された『平成家族』(朝日新聞出版)に収録されたエピソードを紹介します。(朝日新聞記者、斉藤純江)※年齢や肩書などの内容は朝日新聞デジタル配信時のものです。

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「その時」に支え合える関係作り

 「どう、大丈夫?」

 2018年6月中旬、大阪北部地震の発生直後から、京都市のウォーキングセラピスト、澤野ともえさん(42)の携帯電話に安否を尋ねるメッセージが続々と入ってきた。相手は「ゆるい家族」のような仲間たちだ。

 澤野さんは独身。30代半ばまでは婚活に熱心で、友人の紹介や見合いで何人もの男性と会った。結婚を約束した人もいたが、両親が離婚していたこともあり、「石橋をたたきすぎて、渡れなかった」。

 30代後半になって、一度立ち止まり、「今の自分」について考えた。友人や家族とおいしい物を一緒に食べたり、仕事で客が喜んでくれたりしている。「結婚して家庭を持たなくても、今、幸せやん」。結婚に対する思いが吹っ切れた。

 一方で、結婚せず、今後1人で生きていくことを考えると、老いていく自分への漠然とした不安を抱くようになった。もし、病気になったら。孤独死するのでは――。

 そこで、気の合う友人たちに「将来も見据えて、意識してつながっていこう」と呼びかけ始めた。声をかけるのは独身の友人だけに限らない。今は家族がいても死別や離別で1人になることだってあるからだ。

 これまでに、既婚者を含め、仕事や趣味などでつながる年齢も性別も違う10人ほどと「ネットワーク」を作り、食事会などをする。澤野さんは「日ごろからつながり、いざという時に家族のように支え合える関係を作っていきたい」と話す。

文化財に詳しく、寺や神社を巡る街歩きの講師も務める澤野ともえさん=京都市
文化財に詳しく、寺や神社を巡る街歩きの講師も務める澤野ともえさん=京都市 出典: 朝日新聞

「1人です」気兼ねなく話せる

 2018年6月の日曜の午後、「NPO女性おひとりさまの会」(福岡市)の事務所に3人の女性が集まり、昼食を食べながら話を弾ませていた。いずれも独身の会員だ。

 1人が新しい習い事に行った時の話を披露。子どもや夫のことを尋ねられ、「1人です」と答えると周囲が沈黙してしまった、と話した。2人は「そうそう。子や孫の話をされてもねえ」とうなずいた。会社員の女性(54)は「ここでは気兼ねなく色々な話ができる」と話す。

 この女性が会に参加するようになったのは5年ほど前。新聞のお知らせ欄で知った。「もう結婚はないかな」と思っていた時期だった。

 女性は一人っ子。一緒に暮らしている79歳の母親が亡くなれば、家族がいなくなる。女性が1人で生きていくと直面する問題とは? どんな備え、心構えが必要なのか――。会に参加すれば、そんな疑問に答えてくれる「先輩」と出会えるかも知れないと思った。

 会の代表を務めるのは曽根田絹代さん(59)。夫を病気で亡くし、同じ境遇の仲間と8年前に会を立ち上げた。現在、独身者や死別、離別で1人になった50~70代の女性約20人が参加する。会費は月千円。

 ひとり暮らしに役立つ行政の情報などを提供する定例会や小旅行、食事会、サークル活動などを通じて交流を深める。お盆やクリスマスなど世間が家族で過ごす日には、会でもイベントを開く。希望する会員には、電話で日々の安否確認もする。

 曽根田さんは「病気、入院、災害など、単身者にとっていざという時の不安は尽きない。支え合う仲間を作り、不安を解消するための手立てを一緒に考えながら、残りの人生を楽しく過ごしたい」と話す。

「不安を解消するための手立てを一緒に考えながら、残りの人生を楽しく過ごしたい」と話す(写真はイメージです)
「不安を解消するための手立てを一緒に考えながら、残りの人生を楽しく過ごしたい」と話す(写真はイメージです) 出典:pixta

将来の不安「親の老い」がきっかけ

20~40代の働く未婚女性が将来に不安を感じ始めたきっかけをメットライフ生命保険が2014年に調査。回答の一部を紹介する。

・親の老いを感じたとき(32.7%)

・健康上の変化・衰え(21.0%)

・仕事がうまくいかないとき(12.8%)

・親族や友人の結婚式(10.3%)

・通帳を見たとき(10.1%)

・親族や友人に子どもが生まれたとき(5.4%)

 

家族のあり方が多様に広がる中、新しい価値観とこれまでの価値観の狭間にある現実を、「平成家族」として描いています。

みんなの「#平成家族」を見る

【お知らせ】「平成家族」が本になりました

 夫から「所有物」のように扱われる「嫁」、手抜きのない「豊かな食卓」の重圧に苦しむ女性、「イクメン」の一方で仕事仲間に負担をかけていることに悩む男性――。昭和の制度や慣習が色濃く残る中、現実とのギャップにもがく平成の家族の姿を朝日新聞取材班が描きました。

 朝日新聞生活面で2018年に連載した「家族って」と、ヤフーニュースと連携しwithnewsで配信した「平成家族」を、「単身社会」「食」「働き方」「産む」「ポスト平成」の5章に再編。親同士がお見合いする「代理婚活」、専業主婦の不安、「産まない自分」への葛藤などもテーマにしています。

 税別1400円。全国の書店などで購入可能です。

『平成家族』~理想と現実の挟間で揺れる人たち~(朝日新聞出版)

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