話題
世界のサウナ事情「日本とドイツだけ異様」二極化するスタイルとは?
サウナの魅力をより多くの人に知ってもらうため、私をサウナの世界に導いた張本人「サウナ大使」ことマンガ家のタナカカツキさんに話を聞きました。
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サウナの魅力をより多くの人に知ってもらうため、私をサウナの世界に導いた張本人「サウナ大使」ことマンガ家のタナカカツキさんに話を聞きました。
                    今、世界中でサウナのムーブメントが起きているそうです。ニューヨークやロンドンでは都市型サウナが増え、休むことに意識的な若者カルチャーに。その一方で、日本とドイツのサウナでは独特な進化も。テレビがあったり泊まれたり。世界でも「異様な」サウナ文化とのこと。サウナの国際事情について、日本サウナ・スパ協会が任命したサウナ大使、マンガ家のタナカカツキさんに聞きました。
―フィンランドのサウナについて教えてください。
フィンランドではおよそ4人に1人は自宅にサウナを持っているそうです。その感覚は日本人で例えると、居間と縁側を持ってる感じでしょうか。「実家にはあるよ」みたいな。フィンランドといえど、都市で暮らす人の家にサウナがあることは少ないようです。            ―サウナの使い方はどのようなものなのでしょうか?
「サウナ室では教会にいるようなつもりでいなさい」という言葉があります。サウナは特別な場所で、日常から離れた場所。文化的な空間であり、「サウナ室内では本音で語り合う」と言われるようにメンタルと密接に結びついた場所なんです。            ―サウナが生まれた背景とはどのようなものなのでしょうか?
フィンランドは湖が多くて水が良い。森林も多く、自然が豊かです。ですから、豊かな森からの恵みを享受するために、湖畔の近くで生活したい、しかし、何せ冬は寒い。そこでサウナで暖をとった。サウナは生活に欠かせないものだったのです。            ―本場フィンランドのサウナ、その特徴は何ですか?
湖とサウナ室がセットなので基本的に水風呂がありません。本来サウナとはオーガニックなエンターテイメント、自然を使ったアクティビティです。湖とシームレスに繋がり、自然を体験する。日本との大きな違いはそこじゃないかと思います。            ―世界のサウナ事情については何かご存じですか?
今、面白いのはドイツとニューヨークとロンドンのサウナだと聞きました。 サウナが若者のカルチャーとして捉えられているようです。それが世界同時多発的なムーブメントとして発生している 。            ―何か理由があるのでしょうか?
世代交代ですね。都市型サウナが増えて、ひと昔前のサウナから変化している。具体的には「休む」ということに意識的ということです。「休むにはサウナが効率的」という認識が生まれている。そうした動きが世界の様々な都市で発生しているようです。            ―なるほど。そうした世界のサウナ事情の情報はどこから手に入れていらっしゃるのですか?
「国際サウナ会議」で各国のサウナ大使がサウナ情報を報告をしています。「国際サウナ会議」は大規模なものは4年に1回、小さいものは毎年開催されています。ちょうど今年大規模なものがスウェーデンで開催されまして、約20カ国から200人くらい集まりました。            ―すごい規模ですね。日本のサウナ事情についてはどのように受け止められているのですか?
日本のサウナは大ウケです。「え、サウナに泊まれるの!?」なんて感じ(笑)。海外の人にしてみたら「神社に泊まる」みたいな感覚でしょうから。「しかも漫画も読めるの?」みたいな。今年の会議では日本とドイツのサウナ事情が大ウケしましたね。            ―日本とドイツですか。
日本とドイツだけ異様なんです(笑)。フィンランド以外でもデンマークやスウェーデン、バルト三国などのサウナは基本的に静かにするところ。厳かで、暗くて、静かな空間としてのサウナですから。            ―日本ではよくサウナにテレビがついていますものね。
日本独特の面白いサウナ文化ですよね。ドイツのサウナもそうした「エンターテイメントとしてのサウナ」という方向です。そうした楽しみ方、もちろんアリだと思います。            ―アウフグースもドイツの文化ですものね。
ドイツのサウナについては、ここ数年で大きな進化があったみたいですね。「世界アウフグース大会」とか開催していて大変盛りあがってます。タオル使いのレベルが凄いことになってるそうですよ(笑)。            ―これからのサウナについて何か希望されることはありますか?
現状だと大きく分けてサウナには2つの楽しみ方があると思います。 一つはマインドフルネスとか禅といったものに通じるような気持ちを整えるようなサウナ。もう一つは漫画読み放題で、宿泊もできて、ご飯も食べられて、といったエンターテインメント要素が強いレジャーとしてのサウナ。            ―なるほど。
現状、特に女性を中心にリラックスするためサウナを使う人が増えていると思います。ただその一方で、今までテレビ付きのサウナを楽しまれてきた世代には、その人達の楽しみ方がある。サウナの楽しみ方が二極化しているように思います。            ―サウナの楽しみ方が違うせいでトラブルに!なんてことになったら辛いですね。
でも、一つの解決案を提示しているのがウェルビー栄店。同じサウナ室の中で、先ほどの2つの楽しみ方、どちらも楽しめるんです。            ―どのようなサウナなんですか?
テレビのスピーカが指向性なので、テレビ画面が見えないと音声が聞こえないんです。画面が見えないところでは川のせせらぎが聞こえる。「どちらの楽しみ方でも楽しんでいただきたい」そんな気持ちをテクノロジーの力を借りて実現している。一つの進化の形だと思います。            ―この先、さらに新しいサウナの楽しみ方が生まれる気配はあるのでしょうか?
サウナって結構単純です。サウナストーブがあれば、湖畔に行ってテントを建ててサウナを楽しめる。なので若い人の間でテントサウナがブームです。キャンプとサウナが合体してどんどん大きな動きになってますね。―自然の中でサウナを楽しめるんですね。
日本の特徴として注目すべきは川だと思います。フィンランドに湖があるように、日本には良い川がある。キャンプ×川×サウナ、すごい可能性を秘めていると思います。            ―今後もサウナと親和性がある「何か」との掛け算が広がりそうですね。
世界的に見ればフェス×サウナといった動きもありますしね。楽しみです。            ―今後日本のサウナについて、希望することはありますか?
サウナがもっと当たり前のものになって欲しいですね。例えば「休み方」の一つの提案として国が本格的に提案する、とか。            ーなるほど。休むためにサウナを活用できればと。
他にも企業の福利厚生として社内にサウナ作るとか、近くのサウナと提携するとかできたら良いと思います。メンタルに不調を抱える方が多い現状に対して「休みなさい」「リラックスしなさい」とだけ言うだけでは十分ではないと思います。我々は「休み方の訓練」なんてしてないじゃないですか。リラックスするにもテクニカルな部分があると思います。休むための具体的な方法としてサウナを活用できればと期待してしまいます。            ―まだまだサウナ未体験の人も多いと思います。サウナ初心者へのアドバイスはありますか?
サウナってサウナ室をイメージしますけどやはり水風呂です。サウナの原理を知った上で「水風呂って気持ちいいんだ」と感じて欲しいですね。生活の中に気持ちいいこと1つ増えると、相当楽しいですよ。 具体的なイメージとしては、ヨガみたいになるといいですね。ヨガだってもともと「インドの修行」っていうイメージがあったと思いますが、今では体調を整えたり、フィットネスとしての側面がクローズアップされている。そういった形でサウナを生活に取り入れていただきたいと思います。―大使は長野県小海町で「日本サウナ祭り」を開催されていますが、どんなイベントなんですか?
フィンランドのサウナ祭りを参考にしながらスタートしたイベントで、今までに3回ほど開催しています。フィンランドサウナ、スモークサウナ、可動式サウナ、テントサウナなど様々なサウナを楽しみます。サウナ関連のトークイベントやワークショップも開催しています。            ―本格的なサウナが楽しめると聞きましたが、どのようなものなのですか?
サウナがある「フィンランドビレッジ」はもともと在日フィンランド企業や大使館の保養施設だったので、フィンランド人が設計している本格フィンランドサウナ。構造からしっかりフィンランド式です。            ―湖を水風呂として使えるそうですね?
はい。湖に飛び込めるサウナなんて日本で他にないですよ。日本で初めて「本物のサウナ」を味わえる場所、それが小海です。スモークサウナも多分日本でここにしかない。スモークサウナは石を8時間くらい温め、その余熱でロウリュする完全オーガニックなサウナです。            ―実は今度取材で小海町のサウナに入る機会があるのですが、楽しむポイントはありますか?
サウナは環境を楽しむためのものです。暖をとって湖畔を楽しむ。ただ汗を掻くのではなく自然をどれだけ体感するか、それがサウナの醍醐味です。小海町には山があって白樺並木があって湖がある。そうした自然を味わいながらサウナを楽しむのが良いと思います。            ―小海町でしか味わえないサウナですか。これはなんとしても体験するしかないですね!
唯一無二のサウナ体験です。ぜひ楽しんで来てください。            
本場フィンランドのサウナから、世界のサウナ事情、さらにはサウナの今後についてまで、たくさんお話を聞くことができました。
やはり大使。サウナに対する深い洞察と未来への展望、そして何より深い愛をお持ちでした。
ぜひ皆さんもサウナを「休む」ために使ってみてはいかがでしょうか?特にサウナ未体験の方はぜひお試しを。とても気持ちいいですよ。
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