話題
さんからの取材リクエスト
夏休みの宿題で出た自由研究のテーマ、どうしよう?
おっぱいで育つ鳥?自由研究にぴったり!あべ弘士さんの動物クイズ本
話題
夏休みの宿題で出た自由研究のテーマ、どうしよう?
「おっぱいで育つ鳥ってだ~れだ?」。旭山動物園(北海道旭川市)の元飼育係で、絵本作家のあべ弘士さん(70)が手がけたクイズ本が人気を呼んでいます。ゆるい絵柄とともに語られる動物たちの生態は、意外なものばかり。夏休みの自由研究のテーマにもぴったりです。構想に5年かけたというあべさんに、著作に込めた思いを語ってもらいました。(withnews編集部・神戸郁人)
クイズ本『あべ弘士どうぶつクイズ教室』(クレヨンハウス)は、今年4月に発売されました。あべさんがモデルの「あべ先生」の授業に、3人の小学生が参加するストーリーです。
「1時間目/国語」「2時間目/理科」。目次は授業の時間割のようになっていて、科目に沿って出される動物クイズを解いていきます。
たとえば、「給食」に出てくる問題は、こんな具合です。
子どもたちは「ぜんぜん分からない!」「ヒントください!」と困り顔です。
正解は①のハト。食道の一部にあり、食べ物をためておく「そのう」という場所でミルク(ピジョンミルク)がつくられ、親がヒナに口移しする……。あべ先生はそう解説します。
文章の脇には、ゆるい絵柄のハト親子が描かれ、何とも良い雰囲気です。
「日本の国鳥は?」「ウサギを『1羽、2羽』と数えるのはどうして?」。クイズは全部で96問あり、中には大人が頭を悩ませるような難問も。
ネット上には「動物好きなのが伝わってくる」と、家族で楽しむ人の声が寄せられています。
作者のあべさんは、ゾウなどの飼育係として、旭山動物園に25年間勤務しました。1996年に退職して以降、絵本作家として活動し、120冊以上の作品を手掛けています。
構想の原点は、あべさん自身の経験にあります。これまで、飼育係の経験を生かし、動物に関する講演会を、親子向けに開いてきました。
その中で、動物の基本的な知識が、あまり広がっていない現状に気付いたそうです。
「例えば動物の場合、『手』は『前脚』と呼びます。人間でいう『足』は『後ろ脚』です。それを伝えるだけでも驚かれる。だから、学術書ほど難しくなく、正しく動物について学べる本を作りたい、と思ったんです」
授業形式にしたのは、登場人物と一緒に考えてほしいから。内容にもこだわり、出版元の編集者とひざ詰めで話し合いました。「辞書何冊分にもなる」ほど、クイズのアイデアが生まれ、まとめるのに5年もかかったといいます。
クイズには、実体験も盛り込んでいます。
クジラ?ゾウ?答えは、アメリカ・カリフォルニア州にある、高さ約84メートルの樹木「ジャイアントセコイア」。実はあべさんが、非常勤講師を務める短大の授業で、学生に出した問いなのだそうです。
「生き物と聞くと、つい動物を思い浮かべてしまいますね。学生も同じで、答えを知りびっくりしていました。通り過ぎてしまいがちな、『命って何だろう?』という問いに立ち返ってもらうのが狙いです」
登場人物の会話にも、自身の考えを反映させています。象徴的なのは、カメの歩く速さについて語らう場面での、先生のせりふです。
飼育係として、それぞれの生態に沿って暮らす動物に触れ、「命には色々な形がある」と実感したあべさん。
読者には、生き物への温かいまなざしも養ってほしい。そんな気持ちを、本に込めたといいます。
ところで、この本には、動物を「だれ?」と表現する問題文がたびたび登場します。
この理由を、あべさんは「動物が人間よりもすてきな生き方をしている」と感じてきたから、と語ります。
「動物は必要以上に殺生をしない。差別をすることもない。そうした美しい生き方に、僕は命を大事にする権利、『命権』とも言うべきものを見ました。『だれ?』とは、そのことへの敬意を表しているんです」
「一方で人間には、想像力と創造力がある。他の生き物の営みから、自分たちなりに学び、実生活に生かせる能力です」
「クイズ本が、そうした自然と人間の関係に目を向けるきっかけになれば、とてもうれしく思います」
1/15枚