連載
#4 ネットの話題フカボリ
むかしの生き物が現代に紛れ込んでいたら… 大きさが一目瞭然な図鑑
大昔の地球で暮らしていた生き物を、現代の日常に配置したらスケール感が伝わる?
大昔の地球で暮らしていた生き物を、現代の日常に配置したらスケール感が伝わるんじゃないか――。そんな思いで制作された「リアルサイズ古生物図鑑」が、発売前からネット上で話題になっています。3DCGを使ったり、何度も読みたくなる仕掛けを作ったり、随所に工夫を凝らした一冊について担当編集者に聞きました。
技術評論社から今月21日に発売される「リアルサイズ古生物図鑑 古生代編」(B5判208ページ、税別3200円)。著者はサイエンスライターの土屋健さん、監修は群馬県立自然史博物館です。
これまでの古生物図鑑と大きく異なる点は、生き物のサイズ感を直感的に捉えることができる点です。
魚売り場にサバなどと一緒に並んだ「アノマロカリス・カナデンシス」や、横断歩道を渡る「アースロプレウラ・アルマタ」、ラブラドールレトリバーと昼寝する「ディイクトドン・フェリケプス」など、日常生活を撮影した写真に3DCGで作った古生物を合成してあります。
まだ発売前ですが、ツイッター上では「すごく気になる」「編集者の光るセンスを感じます」「予約してしまった」と話題になっています。
「これまでにも土屋さんと古生物に関するシリーズを何冊も出してきました。大きさについては『全長1m』『頭胴長3.5m』といった感じで説明してきましたが、そのスケールを実感してもらう良い方法はないかと考えていたんです」
そう話すのは、リアルサイズ古生物図鑑の担当編集者・大倉誠二さんです。
「中生代の生き物になりますが『始祖鳥』がどれくらいの大きさか知っていますか? 実はカラスやハトとそれほど変わらないんですよ」
数字で伝えるよりも、身近なものと置き換えたり、日常シーンの中に紛れ込ませたりすることで実感してもらえるのではないかと考えたのが、きっかけになったそうです。
各ページでは日常生活の写真に、3DCGで作った古生物を合成しています。
「単なる悪のりに終わらせることなく、リアルさを追求した結果、3DCGを使うことにしました。費用はかかりますが、配置する際の角度など細かな点で効果がありました」
そのおかげで、「上面」「正面」「底面」「側面」といった角度から描いた三面図的復元図も掲載できることに。古生物の全体像を把握する資料性の高いものに仕上がったといいます。
また、ところどころに他のページに登場した古生物が「ゲスト出演」しています。
例えば、魚売り場に並んだアノマロカリス・カナデンシスのページには、こっそり「ネクトカリス・プテリクス」が登場していて、「売約済み」の紙が貼ってあります。そして、別のページではネクトカリス・プテリクスがお寿司になっています。
「『あっ、この生き物はさっきのページで見たやつだ』と気づいて、またそのページをめくってもらえたら、という狙いです」
発売前から話題になったことを受けて、来年には「中生代編」を出すことも決定。恐竜や原始的哺乳類などを紹介する予定で、次は「新生代編」も検討中だといいます。
注目を集めていることについて、大倉さんはこう話します。
「サイズ感をビシビシ味わって楽しんでもらいたいです。また、読んだお子さんが一人でもいいから『古生物を研究しようかな』と思ってくれたらうれしいです」
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