ネットの話題
ウィキペディア「目立ちすぎる」寄付募集の理由 本家の財団の答え
最近、パソコンやスマートフォンで、ウィキペディア(Wikipedia)のページを開くと、寄付を呼びかけるメッセージをよく見かけます。スマホの場合、画面全体が呼びかけで覆われることもあります。SNS上では「気持ちは分かるけど、大きすぎる」という意見も。世界のアクセス数で見ると、アメリカに次ぐ二番目の日本。なぜ最近、寄付の募集が目立っているのか。そもそも寄付にこだわる理由は? 「日本はまだ寄付をそれほど認識していません……」。ウィキペディアを運営するアメリカの「ウィキメディア財団」に取材しました。
ウィキペディアを使って調べ物をしようとすると、パソコン上で最近、次のようなメッセージが出るようになりました。
スマホ版も英語版も、文字数や表現はやや異なりますが、ほぼ同じ内容のメッセージが出ています。そして両方とも「クレジットカード」と「PayPal」の寄付方式を案内しています。寄付額を載せたページには「300円」「1500円」「2000円」「5000円」「10000円」「その他」などと金額が選べるようになっています
財団によると、このお願いは年に一度、2~3週間かけて実施されるキャンペーンで、今回は9月いっぱい表示される予定です。
なぜウィキペディアはここまで寄付を重んじているのでしょうか。
取材すると、財団は、寄付への思いについて教えてくれました。
財団によると、運営資金は主に個人からの寄付で、一人当たりの平均金額は15ドル(約1600円)だそうです。財団は「個人の読者からの寄付で賄っているからこそ、『真』のパブリックなものになります」と説明します。
そして、「ウィキペディアには無料の知識を提供し続けるミッションがあります。読者への説明責任や信頼関係を維持するために、寄付が非常に重要な役割を果たしています」と訴えました。
さらに、「広告が入れば、中立の立場が保ちにくいし、読者からの全面的な信頼を損なうことにもつながります」というボランティア編集者の意見も紹介してくれました。
ウィキペディアへのアクセス数で日本は、アメリカに次ぐ第二位ですが、日本からの寄付金額は決して多いとは言えません。
2014年のデータによると、2014年6月期の寄付総額は5100万ドル(約60億1800万円)ですが、日本からは120万ドル(約1億4200万円)でした。わずか2%ほどしかありません。
財団が日本の読者の意識調査をした結果によると、大部分の人は「ウィキペディアが非営利組織によるページで、主に読者からの寄付で運営している」こと自体を知っていなかったそうです。
「読者の寄付がウィキペディアの発展にいかに重要なのかを、私たちは常に訴えている」と説明する財団。中でも日本は「寄付で成り立っていることを知らない読者がまだ多い」ということで、「私たちのミッションや非営利のスタンス、そしてウィキペディアの中立性や発展のために読者の寄付が頼りであることを、今回のキャンペーンを通して知ってもらいたかった」と目立ちすぎる表示の真意を明かしています。
なるほど、寄付の呼びかけが少し「うるさい」理由には、寄付を呼びかけることと、ウィキペディアのスタンスを日本に宣伝すること、両方が入っているわけです。
一方で財団は「日本の読者へのアプローチの方法は常に模索している」とも答えました。スマホなどのモバイルデバイスでの寄付表示を改善する工夫や、利用するユーザーからの寄付をより簡単・効率よくできる方法も模索しているそうです。
取材をした記者の私もさっそくスマホを通して、寄付してみました。
手順は基本的に以下の通りです。
(1)まずは寄付の金額を選択し、「すぐ寄付する」を押す。
(2)その後、名前とメールアドレスを記入し、「クレジットカード」か「PayPal」の寄付方法を選択。
(3)クレジットカードを選択した記者は、カード番号などを入力し、決定を押す。これで寄付完了。
予想より簡単でした。
これで終わりかと思ったら、「ありがとうございました」というページが出現。さらにその後、先ほど入力したメールアドレスにも感謝のメールも届きました。
1/10枚