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グルメ

カメムシを食べ比べたら…意外な結果に!「洋ナシ?」「なんか痛っ」

カメムシをアイスクリームに乗せて食べる強者たち=紀の川市粉河
カメムシをアイスクリームに乗せて食べる強者たち=紀の川市粉河

目次

 食糧危機対策としても注目されている昆虫食。強烈なにおいで嫌われるカメムシを食べるイベントに参加しました。意を決して口に入れると「うああああ」「なんか痛っ」。と思いきや「パクチー?」「普通に青リンゴ味のアイス」という種類も。やっぱり食用はなし? それともあり?

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【動画】「カメムシ料理」衝撃の食レポの現場

「から煎りにしましょうか」

 イベントは7月29日、和歌山県紀の川市で開かれました。大阪や和歌山の猛者が集まり、未知の味に挑戦。記者もチャレンジしてみることに。

 「油で揚げたら、香りが飛ぶかも」「から煎りにしましょうか」

 午後7時の料理室。集まった10~50代の参加者8人が、調理台の食材を前に意見を出し合います。食材はセミやハチ、カエルなど様々ですが、メインディッシュはカメムシ約50匹。日中に近くの河原で捕れたばかりの新鮮なものや、事前に捕獲してしばらく寝かせておいたものです。

 地域活性化支援団体「いなか伝承社」(同県高野町)が主催。「野食倶楽部」と称し、これまでも、昆虫や魚を捕まえたり野草を摘んだりして試食してきました。「都会やスーパーでは見ない食材に挑戦を」と2014年に始まり、近畿各地から延べ約70人が参加してきました。

自然を満喫しながら生き物を採集する野食倶楽部の参加者=紀の川市
自然を満喫しながら生き物を採集する野食倶楽部の参加者=紀の川市

なぜ食べるのか

 今回、なぜカメムシを食べるのか。団体代表の田中寛人さん(35)は「カメムシは昆虫の中でも種類が多い。種類によって味がどう違うかを調べてみたい」。

 参加者は、料理自慢の会社員や接客業、農業関係者、中学生ら様々。草むらで目当てのカメムシを見つけては「臭い!」「食べられへん気がする」と苦戦しながら捕獲。洗濯用ネットに入れて調理室に持ち帰りました。

 集まったカメムシは、クサギカメムシ、アカスジカメムシ、マルカメムシ、ホシハラビロヘリカメムシ。においの違いを比べやすいよう、フライパンでから煎りするシンプルな調理法に決まりました。

集まった様々な種類のカメムシ=長島聖大さん提供
集まった様々な種類のカメムシ=長島聖大さん提供

マルカメムシはパクチー?

まずは、マルカメムシに挑戦。口に入れると、パクチーに似た清涼感ある風味が意外にさわやか。

 記者のイチ押しは、細長い形のホシハラビロヘリカメムシ。食べた瞬間、青リンゴ味のソフトキャンディを凝縮したような風味が広がりました。大阪市の接客業、浜田園子さん(26)も「超おいしい。フランス料理に合いそう」。

 バニラアイスにトッピングして食べた大阪市の会社員小松聖児さん(29)は「普通に青リンゴ味のアイス」。小松さんは3年間ほどラオスに住んでいた頃、市場で食用カメムシが売られているのをよく見かけたといいます。「洋ナシの風味がするフルーティーなやつもいました」

マルカメムシ=長島聖大さん提供
マルカメムシ=長島聖大さん提供

アカスジカメムシに「うああああ」

 一方、強烈な風味で参加者を悶絶させたのが、アカスジカメムシ。イタリアのサッカーチーム「ACミラン」のユニホームを連想させる赤と黒の縞模様が鮮やかで、においは全く気になりません。

 でも、口に入れると、「うああああ」「なんか痛っ」。参加者は苦虫をかみつぶした表情に。記者も口の中がしびれる感じがしました。

 種類によって違いはありますが、試食会は意外と好評。田中さんは「これからもカメムシなど身近な生き物の食用の可能性を探っていきたい」と話しています。

アカスジカメムシ=長島聖大さん提供
アカスジカメムシ=長島聖大さん提供

「すごく臭いのは一部」

 臭いイメージが先行するカメムシは、なぜ食べるといろんな味がするのでしょうか。

 「多くのカメムシのにおいをかぎ続け、カメムシのにおいを嗅ぐだけで大体の種類が分かる」という伊丹市昆虫館の学芸員、長島聖大さん(38)に聞きました。

 カメムシがにおいを発するのは外的から身を守るためと言われていますが、「すごく臭いのは一部」。甘いにおいがするものや、におわないものもいるといいます。

 味は、カメムシが食べたものに左右されるが、「個体差も」。世界には約4万種のカメムシがいるといい、味もその分多様です。食べ方として「から煎りはいい方法。風味を飛ばさないよう、火を通しすぎないことも大切です」。

「カメムシのにおいを嗅ぐだけで大体の種類が分かる」という伊丹市昆虫館の学芸員、長島聖大さん=伊丹市昆虫館
「カメムシのにおいを嗅ぐだけで大体の種類が分かる」という伊丹市昆虫館の学芸員、長島聖大さん=伊丹市昆虫館

カメムシの行事「カンカンプー」

 カメムシを食べる催しは始まったばかりですが、和歌山県内では、戦前から続くカメムシの行事もあります。

 県南部の串本町高富地区。ここではカメムシは「サネモリ」と呼ばれることがあります。毎夏、田んぼで捕まえたカメムシをワラの船(約1メートル)に乗せて担ぎ、「サネモリ殿のお通り。よろずの虫はお供」と唱えながら集落を練り歩きます。「カンカンプー」という伝統行事です。

 これは、カメムシに化けたとされる平家の武将斎藤実盛の霊を供養し豊作祈願する虫送り行事。カネを鳴らしホラ貝を吹くからカンカンプー。カンカンに腹が立つほど屁のように臭い、という意味ではありません。

 行列が向かう先は海。カメムシを船ごと流すのです。「昔は、サネモリが海の向こうへ消えていくまで、和尚が念仏を唱えていたもんです」と話すのは、地元の区長、中野實さん(82)。

ツバキの葉の裏で集団越冬中のオオキンカメムシ=高知県土佐清水市足摺岬
ツバキの葉の裏で集団越冬中のオオキンカメムシ=高知県土佐清水市足摺岬 出典: 朝日新聞

けつまずいた恨み?

 ちなみに、なぜ、実盛はカメムシに化けたの? 中野さんによると「昔、戦いのさなか、田んぼの稲の株にけつまずいたところを敵に討たれたから」。それを逆恨みし、稲を荒らすカメムシに化けたという逸話です。

 このごろは、カメムシが田んぼにいる光景も減ったといいます。「百姓が減って、田んぼ自体が減った」と寂しそう。カメムシは、農業や人の暮らしと深く関わっている生き物なんですね。

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