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出産してもシェアハウス、夫婦で社会実験中 ぶっちゃけ大丈夫?
「保育園落ちた日本死ね」が流行語となった日本。「結婚してもシェアハウス、子育てもシェアハウスで」という生き方を提唱し、実際に、シェアハウスで結婚生活を送る「社会実験」を継続中の2人がいます。第1子を出産予定ですが、そのまま住み続ける予定です。家賃は? プライバシーは守れる? トラブルはないの? シェアハウスが解決できることについて話を聞きました。
「社会実験」をしているのは、ともに会社員で、10月に第1子を出産予定の栗山(旧姓茂原)奈央美さん(32)と、結婚後もシェアハウスに住むことを前提に結婚相手をブログで募集した阿部珠恵さん(32)です。
2012年には『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』(辰巳出版)を出版、シェアハウスで結婚生活を送る生き方を提唱し、有言実行しています。
東京都新宿区にある7LDKの一戸建て、名付けて「トーキョーフルハウス」に、夫婦2組、カップル1組を含む11人が住んでいます。家賃はだいたい1人当たり6万円程度だそうです。
「核家族で子どもができたご夫婦よりは不安が少ないのでは、と思います。例えば、子どもが病気になって急遽迎えに行く時も、夫以外に頼める人が9人いますし」と奈央美さん。
先日、同じく夫婦でシェアハウスに住み、妻が妊娠中の人たちとは「保育士の資格を持つ友人などに家に来てもらい、費用を折半して両方の子どもの面倒をみてもらう『保育のシェア』をしてはどうか」と話し合って盛り上がったそうです。
奈央美さんは、これから人口が減っていく中で、保育園という「箱物」が増え過ぎても後で無駄になる、という懸念もあるため、個人も行政も、ハードよりソフト面で知恵を絞ることが必要だと考えています。
奈央美さんと、阿部さんは、元々は同じ会社の同期でした。一人暮らしは家賃が高いし寂しい、ということで奈央美さんの妹を含めて2009年からシェアハウスを開始しました。
掃除は阿部さん、洗濯関連は奈央美さん、などというように家事を分担するととても効率的になることに気づき、当時から「結婚してもシェアハウス、子育てもシェアハウスでやると良いのでは」という話をしていたそうです。
奈央美さんは、友人の友人で、当時自身もシェアハウスに住んでいた栗山和基さん(34)と出会った際、そんな話をしたら、「それ、めっちゃ面白いね。いいと思う」と言われ、付き合う前から「あ、この人と結婚するんだろうな」と思ったとか。
2014年に結婚する際も、ちょっと広めの家に移ってシェアハウス生活を続けることに。
当初、双方の親には反対されましたが、両親顔合わせの時に「うちの子が変なことを言って……」「いえ、うちの子が変なことを言って……」「じゃあ、本人たちが良いと言うなら……」と落着したそうです。
その後、和基さんの友人夫婦が住んでいたシェアハウスが更新のタイミングになった際に、その夫婦も「吸収合併」して、以前より大きめな今のシェアハウスに転居しました。
他の住人たちは基本的には友達や友達の友達という関係で、奈央美さんは「全く知らない人と住みたい、というよりは、家族を拡大していく、みたいな感覚で暮らしていきたくて、それですごく助け合っていけるんじゃないか、と思っているんです」と話します。
このような奈央美さんたちの暮らし方を聞きつけた人たちからは続々と「これから結婚するのですが、シェアハウスに住みたくて……」などという相談が舞い込み、今年だけで既に4組の話を聞いたそうです。
その後、ちなみに夜の生活の方は、「今の家は、防音がしっかりしているから問題ないですよ」とのことでした。
一方の阿部さん。今は、ブログを通じて募集した彼氏と6.5畳の部屋で一緒に住んでいます。
以前から「シェアハウスで子育てすると良いと思う」という話を男性にすると、「何かニュータイプを見るような感じ」で引かれていた、という阿部さん。
いっそ、「結婚してもシェアハウスに住んでくれる人を募集しよう」と考えて昨年11月にブログに載せたところ、全国から25人の応募があり、説明会やグループディスカッションなどを経て12月から、7歳下の現在の彼氏とお付き合いすることに。
彼氏の住んでいた家の更新時期の関係で、今年2月から一緒に住んでいます。
応募してきた人たちは「みんな真面目で、私の考えに共感してくれている人が多かったのが意外だった」。その中で今の彼氏を選んだ理由は外見ではなく、自分のビジョンに一番近く感じたところがあったからとか。
「七つ下で同じことを考えている人がいるんだな、と感じた。結婚してもシェアハウスって、既存の概念ではないわけです。そんな中、全く同じ考えではなくても、課題意識を持って、解を自分の中で導き出せるという点で信頼感があった」と話します。
ただ、「子育てもシェアハウス」という考え方に課題はないのでしょうか。
奈央美さん、阿部さんはともに、子どもが学齢期などになった際、果たして今の都心に近い場所が子育てに良いのかどうか、という点を挙げました。
最終的に別の場所に移るとなった場合、それは住人全体で決めるのではなく、夫婦の判断で決めることになるのでは、と予想されます。
「それは、なった時に考えるしかない。ただ、1回やってみて、こうだったよ、という事例が生まれることがすごく大事」と阿部さん。
そうした「社会実験」の顚末(てんまつ)を、新たに本にすることも考えているそうです。
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