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夜景まとめ記事、プロの写真家と検証したら…これ横浜?青森だよ!
利用者が記事を自由に投稿できる「まとめサイト」が、社会問題化しています。「肩こりは幽霊が原因のことも?」。IT大手DeNAが運営している医療情報サイトでは、こんな不正確な記事が載って批判を浴びました。まとめサイトの記事はどこまで正確なのでしょうか。グーグル検索で最上位に表示される、あるサイトを調べてみました。
今回調べたのは「【全制覇したい】王道から穴場まで!横浜の人気夜景ランキングTOP15」という記事。旅行情報のまとめサイト「RETRIP」に掲載されています。(*4月20日追記:記事が削除されたことを確認しました)
RETRIPのコンセプトは「あなたを旅に連れていく」。一般利用者が記事を投稿でき、「だれもが編集者となり発信をする」とうたっています。
なぜ、この記事を選んだのかというと、グーグルで「夜景 横浜」と検索すると横浜市の公式観光サイトなどを上回り、最上位に表示されるからです。閲覧数が50万を超える人気記事です。
内容はタイトル通り、横浜の夜景スポット15カ所がランキング形式で紹介されています。
写真はいずれも、使用が認められている画像販売サイト「PIXTA」や投稿サイト「Flickr」の素材。ただ気になるのは、転載ばかりで正しい情報が伝えられるのかということです。
今回はプロ夜景写真家の岩崎拓哉さんに助言をいただいたうえで、現地を歩いてみました。
記事に最初に登場するのは、第15位「大黒ふ頭西緑地」です。「ベイブリッジが綺麗に見える」と説明文つきで、青い照明に照らされた橋の写真が載っています。
岩崎さん「あれ、これ私が知っている横浜ベイブリッジと違いますね・・・」
実際に行ってみると、確かに橋の形が全然違いました。写真の橋は「逆Y字型」の塔が立っていますが、横浜ベイブリッジは「H型」です。
なぜ・・・?
画像の転載元である「Flickr」のページを見ると、撮影者のコメントに
「十二月の青森市」
と書いてあります。丁寧にも撮影地を示したグーグルマップへのリンクも張られています。リンクを押して表示された撮影場所は
青森ベイブリッジ!!
まとめ記事の筆者は、なぜ混同してしまったのでしょうか。
第12位は「臨港パーク」です。
水面のずっと向こうに、ヨットの帆の形をした「インターコンチネンタルホテル」や大観覧車「コスモクロック21」が光る写真が載っています。
岩崎さん「臨港パークで、この眺めは見られないのでは」
え、そうなんですか?
行ってみると、臨港パークはインターコンチネンタルホテルのふもとに位置しています。
ホテルを撮っても、水面の向こう側ではないし、大観覧車もホテルの裏に隠れがち。
では、まとめサイトの写真は一体? 結局1.5キロ離れた、別の夜景の名所「象の鼻パーク」で同じアングルの写真を撮れました。
続いて第11位。横浜市金沢区の「野島公園」です。
野島、公園・・・?
写真は明らかに、横浜港の真っただ中で撮られています。
横浜港から野島公園までは約15キロ。公園に行ってみると、展望台から港はほぼ見えません。
撮影者の人にメールで確認したところ、「びっくりしております」と返信が。撮影場所はやはり、横浜港の大さん橋ふ頭近くだそうです。
ランキングが上がっても、どうにもおかしい点が続きます。
第9位「横浜ワールドポーターズ ルーフガーデン」 →別の商業施設「クイーンズスクエア横浜」付近からの眺めでした。
第8位「ポートサイド公園」 →別の名所「万国橋」付近からの眺めです。説明文には「横浜駅の西側にあるポートサイド地区」とありますが、「東側」の誤り。
第4位「港の見える丘公園」 →撮影者にメールで確認したところ、約2キロ離れた「本牧山頂公園」からの眺めでした。
第3位「横浜マリンタワー」 →展望フロアの最終入場時間に誤り。22:30とありますが、実際は22:00。
ちなみに第14位「クイーンズスクエア横浜」の項目にだけ「※画像はイメージです。」と書かれていました。
ほかの写真はイメージじゃないんですね・・・。
調べた結果、15カ所のうち約半数の項目に疑問点が見つかりました。
例えば東京タワーを紹介する際、別の場所から撮ったタワーの姿を載せることは考えられます。しかし今回疑問点が見つかった写真は、紹介スポットが写ってすらいないものばかり。まるで違う眺めが掲載されています。
全国の夜景スポットを巡っている岩崎さんは「転載情報ばかりのまとめ記事は、現地に足を運んでいない可能性が高い。信じて現地に行くのはリスクもある」と指摘します。
野外のスポットなら懐中電灯は必要か、足元は安全か・・・など現地に行かないと紹介できないことも。岩崎さん自身、立ち入り禁止のエリアが夜景の名所として紹介されている記事を見て、驚いた経験があるといいます。
岩崎さんは「必ず自治体や観光地の公式サイトで、確かな情報を得てほしい」と話しています。
「RETRIP」の運営会社trippieceにも、記事の正確性確保への取り組みを問い合わせていますが、29日現在返事は来ていません。
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