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鳥好きの偏愛が生んだ「インコ臭いサイダー」、仰天の鳥マーケット
「目がリアルでキモい」「脚がグロい」などと言われることも多い鳥。鳥好きたちは、普段、隠れキリシタンのように、ひっそり鳥を愛でながら、鳥好き同士でディープな会話を繰り広げています。一方、「インコ臭いサイダー」や、小鳥のにおいを再現した「インコアイス」などユニークな商品がきっかけとなり、鳥マーケットが活気づいています。鳥好きならではの愛し方、仰天のグッズの最新事情を探りました。(朝日新聞松江総局記者・富岡万葉)
2月中旬。神戸市内で2日間にわたって開催された「鳥フェス神戸2017」。のべ千人が訪れたこのイベントですが、1日目の夜に懇親会があり、記者も参加させてもらいました。
実は記者も鳥好き。実家で文鳥を10羽以上飼育していますが、友だちに「鳥が好き」とカミングアウトしたことはありません。鳥友だちもいません。
懇親会にはどんな人が集まっているのでしょうか。鳥の話ができるというだけでワクワクします。
フェスの会場でそのまま開かれた懇親会は、酉年の新年会も兼ねられ、大変な盛り上がりでした。50人近くが参加し、約10のテーブルに分かれました。
記者が交ぜてもらったテーブルの6人中5人は、鳥フェス初参加者です。しかし、そこは鳥好き同士。うちの子自慢が過熱しました。
「わたし、抜けた羽を瓶に入れて保存してんねん!ほんで時々フタ開けてにおってんねん!」
モモイロインコ「2人」と暮らしている兵庫県川西市の会社員下野縫子さん(40)が、いきなりぶちまけます。
下野さんは会社の机を鳥グッズで埋め尽くしているという猛者。カミングアウトをものともしない力強い先輩です。
「ジップロックで保存派もいますよ」。隣の女性がすかさず続きます。
下野さんに写真を見せてもらうと、ふわふわのきれいなピンクの羽根が瓶に入っています。ちょっと高めの雑貨屋に売っているおしゃれアイテムのようです。
日頃抑えている分、鳥好きたちの発散は続きます。
「どうやったら自分以外の家族や友だちに慣れるの?」
「抜け毛が心配」
「どこどこの病院が良いよ」
悩み相談や情報交換でも盛り上がります。
過激な愛し方も飛び出しました。インコを「わしづかみにして、ぐりんってひっくり返しておしりにおうねん!」。またまた下野さんです。
「変態」「それはないわ」
びっくりする人も目を輝かせる人もいます。
「ほんまやって!こんなおしり!」
下野さん家の子ウメちゃんがおしりをふりふりさせる動画が披露させると、その「誘っている」様子にテーブルの6人は大興奮。
「これはにおうしかない!!!」
あっという間に意見が一致しました。そんな愛し方もあるのかと、記者のメモを取る手にも力が入ります。実家の文鳥たちは受け入れてくれるでしょうか。
鳥好きたちのエネルギーに圧倒されつつ、記者もスマホに入っている文鳥の写真を見せます。首をかしげている様子や2羽でくっついている様子にいちいち「これめっちゃいい!」「かわいい」と反応してもらえるのがうれしくてたまりません。
大阪市の川野沙知さん(29)も、普段は鳥好きを隠して生きている1人。仲の良い友人には、オカメインコのビビちゃんの動画を見せて「洗脳」しようとしていますが、まだ鳥友だちはいません。
「うちの舌打ち覚えて、かごに入れるときに『チッ』って言うんですよ」「お母さんと話してて笑うと、ビビもかごの中から『ンフフフフフ』ってまねしてくる」「おいでっていうと、たまに『だいじょうぶ!』って言われて傷つく」。
川野さんの物まねをするビビちゃんのエピソードを語り尽くし、「鳥友だちがほしかったんです。1人参加は不安やったけど来てよかった」ととても満足げ。きっとみんなも同じように満足しています。
マニアックすぎる鳥好きの世界ですが、ここ数年は鳥フェスなど「鳥ブーム」がきていて、世間にもその存在が少しずつ知られるようになりました。
ブームのきっかけになったのは、2013年5月に発売された「インコアイス」です。アワや麦などを混ぜたアイスで、エサの香りが羽につく小鳥のにおいを表現しました。
鳥好きでなければびっくりするかもしれません。「顔の上を走るインコの脚が口の中に入ったような風味」「口に文鳥を突っ込んだ時の触感」など、鳥好きあるあるを再現しているのです。
メリートリスマス!!
— とりみカフェ@3/3で十周年\(^o^) (@torimicafe) 2016年12月24日
インコアイスのパッケージをならべてみたら、レッツぱーりーな感じになりました(^◇^)良いイブをお過ごしください! pic.twitter.com/n4PszdaGCA
インコアイスは、もともと「ずっと触ってにおいを嗅いでいたら鳥に負担がかかる」という鳥好きの悩みが開発のきっかけでした。当初のターゲットは鳥好きだけだったのです。
しかし、百貨店のイベントや通販でお披露目されると、かわいいパッケージと豊富な味の展開などが次々と話題に。
SNSでは、鳥にポジティブな意見が見られるようになったといいます。アイスをきっかけに鳥の素晴らしさに気づけるなんて幸せですね。
本日でいよいよ広島での小鳥のアートフェスタも最終日!生菓子、インコアイス、インコ飯のもとなどお買い忘れはございませんでしょうかー!
— とりみカフェ@3/3で十周年\(^o^) (@torimicafe) 2016年7月19日
また来たいな、広島\(^o^)/ pic.twitter.com/sOKtwZnIwr
その後も、老舗の菓子店や日本料理店で修業したシェフなどプロを巻き込み、鳥の握り心地を再現した菓子、においを再現した炊き込みご飯、インコ臭いサイダーなどあらゆる商品が生まれていきました。
もはやただのマイノリティーにあらず。鳥はひとつのマーケットなのです。
鳥好きたちの世界をのぞいた記者。人の目を気にせずに思いっきり好きなことを話せて本当に楽しかったです。
先に届いたインコクサイダーのラベルを握りしめながら、サイダー本体の到着を正座待機なう! 張ってからの出荷が間に合わなければ、私、抱えて手持ちになるであります!うーん、タイト(リ)スケジュール! pic.twitter.com/1CHQZmk8Pu
— とりみカフェ@3/3で十周年\(^o^) (@torimicafe) 2015年12月4日
自分は偏ったかわいがり方をしているかもとぼんやり思っていましたが、取材してわかったのは、記者はまだまだ序の口ということ。上には上がいるとわかった貴重な体験でした。
きっとさらなるアンダーグラウンドで生きる鳥好きがまだいるはず。これから発掘していきたいです。
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