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YMO高橋幸宏が号令! 豪華すぎるバンドの「安全じゃない音楽」
それぞれ強烈な個性と実績のあるミュージシャンが一緒になったら……。そんな、壮大なバンド「METAFIVE(メタファイブ)」が生まれました。集まったのはYMOのメンバーとして知られる高橋幸宏さん(64)ら6人。
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それぞれ強烈な個性と実績のあるミュージシャンが一緒になったら……。そんな、壮大なバンド「METAFIVE(メタファイブ)」が生まれました。集まったのはYMOのメンバーとして知られる高橋幸宏さん(64)ら6人。
それぞれ強烈な個性と実績のあるミュージシャンが一緒になったら……。そんな、壮大なバンド「METAFIVE(メタファイブ)」が生まれました。集まったのはYMOのメンバーとして知られる高橋幸宏さん(64)ら6人。「だいたい、そういうメンバーが集まると失敗するんだよな」。笑いながらも、手応えを感じる高橋さんと、電気グルーヴを経てソロとしても活動する「まりん」こと砂原良徳さん(47)に、結成の経緯や音楽業界の現状について聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部・後藤洋平)
METAFIVEに集まったのは、2人のほか、テイ・トウワさん(52)、小山田圭吾さん(47)、ゴンドウトモヒコさん(49)、LEO今井さん(35)とそうそうたる顔ぶれです。
高橋さんが「少しは『そのメンツで、この程度かよ』と言われるのが怖かったけど、思ったよりうまくいった」と振り返るように、今年1月にリリースした初のオリジナルアルバム「META」は同月下旬のオリコン週間CDアルバムランキングで13位にチャートインしました。
この週のトップ20はゲスの極み乙女。(1位)、ゆず(2位)、死去直後のデビッド・ボウイ(5位)、福山雅治(8位)、星野源(12位)で、METAFIVEは強烈な存在感を放ったのです。
1990年に全米デビューしてヒット曲も飛ばしたグループ、ディー・ライトの中心として名をとどろかせ、DJとしても日本のクラブシーンを引っ張り続けるテイさんの役割は、まりんさんによると広報担当。
フリッパーズ・ギターを経てソロプロジェクトのコーネリアス名義で活動を続ける小山田さんについては、高橋さんが「普段は一人でやっているけれど、このバンドではクールなギタリスト。コーネリアスとは違う面を見せてくれている」と評価します。
YMOのサポートメンバーで、原田知世さんがボーカルを務めるバンドpupa(ピューパ)でも幸宏さんと一緒のゴンドウさんには、「コード進行が完璧で技術屋」(まりんさん)、「僕の中ではマニピュレーター」(高橋さん)と信頼が厚さをうかがわせます。
そして、マルチリンガルな今井さんは高橋さんにとって親子ほど年の離れた存在ですが、「このバンドのフロントマン」と語りました。
結成のきっかけは、2年前の1月のライブイベントでした。
「バンドとして出演するために、スケジュールの空いてる人に声をかけて……」と高橋さんは振り返りますが、そこは日本音楽界のレジェンドの「号令」。まりんさんは、すかさず「あはははは!」と爆笑して、「幸宏さんね、これは初めて言いますけれど、それは『空けた』んだと思いますよ」とツッコミを入れました。
そして、まりんさんは続けます。
「なんでこんなに気持ちよくシンセベースを弾けるのかと考えたら当たり前だった。僕は幸宏さんのドラムばっかり聴いて育ったんだから」
「ただ、憧れの人ではあるけれど、緊張するために呼ばれた訳じゃない。一緒に戦場でやるんですから、遠慮はしないです。遠慮して失敗したらダメだし。音楽を良くするために呼ばれている訳ですから。ただ、今でも幸宏さんから電話がかかってきたら『わあ!どうしよう!』と慌てますが」
高橋さんも「細かな音楽性の違いはあるけど、表現がアイロニカルなところやユーモアを大事にする部分で根っこは同じ。僕らは共通言語を持っている」と語ります。
ちなみにバンド名は「高橋幸宏とクール・ファイブ」、「高橋幸宏とピチカート・ファイヴ」なども検討されましたが、「METAFIVE」に決まったそうです。
曲づくりは、メンバー間でメールに添付された素材にそれぞれ手を入れながら作業します。回し終えた後に曲ごとの「責任者」が最後に整えて完成させるそうです。
ご存じのとおり伝説的なバンドを経験している高橋さんですが、「全員がプロデューサーをできて、曲を作れて、自分の演出の仕方も知っているという点で、やっぱりMETAFIVEは特殊ですね」と語ります。
「バンドってのは普通、ある程度売れてからメンバーがソロ活動を初めて、だんだん仲悪くなって、解散して、ソロ活動だけになる。だけど、ここは逆なんですよね」
一方、まりんさんは電気グルーヴ時代を「あれはもう戦争ですよ(笑)。常に騒がしいし、距離感が近い状態。僕も若かったですしね……」と、笑いながら振り返りました。METAFIVEはクールな大人のバンド、といったところでしょうか。
ダンスミュージックでは、歌謡曲的なテイストを含む「EDM」と呼ばれるジャンルが若者に広く支持され、盛り上がりも見せた時期が続いていますが、ブームには早くもかげりも見えます。
高橋さんは「ハッキリ言って嫌悪感を持ってますね」、まりんさんは「最近では『EDMバブルは弾けた』というニュースも目にする。僕は最初から触らなかった。ジュリアナテクノ、サイバートランスに近い音楽で、たぶんそういう流れになるだろうな、というのも分かっていたし」ときっぱりと語りました。
今夏のフェス参戦では、サマーソニックで観客に温かく迎えられたというMETAFIVE。一方で、Jポップ中心の催しではアウェーを感じたこともあったといいます。
高橋さんは「勉強になったけど……正直この年で勉強したくないかな。30代、40代の方の支持が中心のJポップって、僕はずっと理解ができなくて。逆に20代には、美意識を感じるバンドも出てきた」と日本の音楽シーンを分析するとともに感想を語りました。
バンドは11月9日、5曲入りミニアルバム「METAHALF」(ワーナーミュージック)をリリースする予定で、月末からは広島、大阪、東京、札幌の4カ所でライブツアーを控えます。
まりんさんによると、これまでのライブでは客層が結構若く、20代も目立ったそうです。その理由については「その親の世代に刺さっているからでしょうね」と分析していました。
高橋さんは「METAFIVEに飛びつく子はエッジが効いてるんでしょうね。『みんなと同じ音楽を聴いていれば安全』という人ではない。僕たちもそうやって育ってきたから」と目を細めました。
来年以降の活動も気になるところですが、高橋さんは「みんな仕事を持っている人が集まった。それぞれソロの活動もあるから、このバンドは『生もの』だと思ってほしい。だから今決まってる活動以後は、どうなるか分からない。『いつまでも あると思うな METAFIVE』ですよ」と話していました。
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