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2016年10月09日

刑務所の木工品が…かわいくない! 京都女子大が異例のコラボを決断

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京都刑務所で現在、作られている木製カスタネット。新デザインは来年度に生まれる予定

京都刑務所で現在、作られている木製カスタネット。新デザインは来年度に生まれる予定

 「女子大×刑務所」。異例の組み合わせの包括連携が結ばれました。刑務所内で作られる木工作品を見た大学教員が、その「かわいくなさ」に絶句。女子大生が木製おもちゃのデザインを提供することに。学生にとっても受刑者にとっても、実社会と接点を持つ貴重な機会になりそうです。

学長もびっくり「えっ、そういうのもあるの?」

 5日に協定書を交わしたのは、京都女子大(東山区)と京都刑務所(山科区)。同刑務所によると、国内の刑務所が大学とこうした協定を結ぶのは聞いたことがない、といいます。

 「刑務所と女子大という意外な組み合わせで、最初話を聞いた時には、『えっ、そういうのもあるの?』という感じで驚いた」

 そう語るのは、他でもない京女大の林忠行学長。運営母体の学園は120年近い伝統を持つ、京都屈指の女子大です。2015年10月、地域連携研究センターを開設し、社会との接点作りに力を入れてきました。

 そんな林学長もびっくりのこの組み合わせ。「刑務所は社会の重要な部分を代表している側面もあり、学ぶことは少なくない」との狙いがあるといいます。

協定書を交わした京都女子大の林忠行学長(左)と京都刑務所の山本孝志所長=京都市東山区

協定書を交わした京都女子大の林忠行学長(左)と京都刑務所の山本孝志所長=京都市東山区

出典: 朝日新聞

東山を隔てた「ご近所」同士

 京女大は11年には日本の女子大学で初めて法学部を設置するなど、司法への関心が高いことでも知られています。しかし通常、大学が連携協定を結ぶ対象と言えば、自治体や企業、さらには大学同士などが多いもの。なぜ「お相手」が刑務所になったのでしょうか?

 「仲人役」になったのは、京女大の地域連携研究センター長を務める竹安栄子さん。地域社会学が専門です。大学と刑務所は東山を隔てた「ご近所」ですが、これまでほとんど「ご縁」はありませんでした。

 それが急接近を見せたのは3月。京都府内の保護司を選考する委員でもある竹安さんが、同じく委員を務める京都刑務所の山本孝志所長と会合で同席した際、刑務所の実態について話を聞いたことがきっかけでした。「受刑者のために何かできることはないか」。そう考え、翌4月に刑務所を見学に行きました。

「仲人役」になったのは、京女大の地域連携研究センター長を務める竹安栄子さん

「仲人役」になったのは、京女大の地域連携研究センター長を務める竹安栄子さん

出典: 朝日新聞

「かわいくしてあげましょう」

 そこでは受刑者たちが、高い技術を駆使して木工作品を作っていました。作品は、受刑者によっては貴重な社会とのいわば「接点」。作品が売れると社会に受け入れられたと感じ、励みに思う受刑者も多いといいます。

 しかし、この時に作っていた動物の顔の木製カスタネットを見て、竹安さんは絶句しました。

 「かわいくない!」

 デザインを考えるのは、それまで刑務所の職員でした。「ほんま、大したことないんですよ。企画力がない」と職員自身も力不足を認めるほどのデザインでした。

 「デザインを無償で提供してもらえるとありがたい」
 「かわいくしてあげましょう」

 女子学生を巻き込めば実現できると、竹安さんが提案。「受刑者を帰す先は社会。その社会がどういう色をしているのか、刑務所はもっと知らないといけない。社会との連携を進めるべきだ」と山本所長が応じ、包括協定締結が実質的に合意されました。

京都刑務所で作られている木製カスタネット

京都刑務所で作られている木製カスタネット

まず呼吸法の講習、刑務官に変化が…

 これを受け、5月には発達教育学部教育学科のガハプカ奈美教授が刑務所を訪れ、約100人の刑務官に「自己をコントロールするための呼吸法」と題した講習会を開きます。

 ガハプカ教授は、声楽教育や呼吸と表現の関係の専門家です。息を吸ったり吐いたりしながら心や身体をコントロールするドイツ仕込みの技を伝授しました。

 刑務官は、受刑者同士のけんかや自殺の予防など強い緊張感の中で働かざるを得ません。一瞬の判断が鈍れば重大な結果を招きかねない、そんな過酷な現場に日々、身を置いています。どんなアクシデントに遭っても、自分自身を見失わず、持っている力を発揮できる。刑務官にとって、そんな能力の養成は大きな課題でした。

 ガハプカ教授の実践的な講習で、刑務官の様子が変わったといいます。山本所長は「刑務官が落ち着いたので、受刑者も落ち着くようになった」と効果を話します。協定締結へとつながる実績はすぐにできました。

京都刑務所

京都刑務所

出典: 朝日新聞

「京都の現実の社会も学んで」

 10月22、23日には、同じ学部の児童学科の矢野真教授のゼミ生が刑務所である矯正展に参加し、箸作りなど工作に関するワークショップも開く予定です。受刑者が作る木製おもちゃなどのデザインを提案するのは、幼稚園教諭や保育士などを目指す彼女たち。来年度に実現する見通しです。

 大学側にとってのメリットも、もちろんあります。京女大は来年度から、全学部を対象にした地域連携科目を始めることになっています。その中で刑務官に刑務所の実情などを講義してもらうことになりました。

 伝統ある京女大には、京都の歴史や文化の側面に興味を持った学生が、全国からたくさんやってきます。そうしたニーズに応える講義などは多く用意されていますが、「京都の現実の社会ももっと学んでほしい」との思いがあったと竹安さんは言います。

 「学生には、社会の一つの側面として、刑務所に入っている方々の現実のほか、単に隔離するだけではなく更生のためにこれだけ努力しているという刑務所の役割も知ってほしいのです」

「女坂」と呼ばれている京都女子大の通学路

「女坂」と呼ばれている京都女子大の通学路

間接的でも「まなざし」伝わればいい

 そして学生にはこんな理解も深めてほしいと言います。「社会は(受刑者を)単に排除するだけではいけません。共に生きていくことを考えることこそが、安心・安全のまちづくりにつながるのです」。その心は――。

 「受刑者にとっては、自分に対して社会的なまなざしが向けられていると知ることが、更生への大きなモチベーションになります。自分たちが切り捨てられた存在ではない、社会から排除されているわけではない。そう理解してもらうことが大いに役に立つのだと、刑務所を訪れて知りました」

 プライバシーなどの問題から、大学側による受刑者への直接的な接触は限定的にならざるを得ません。しかし、間接的にであっても、女子大学生が提案したデザインに乗って、その「まなざし」が伝わればいいと、竹安さんは願います。あなたが作る製品のために学生が一生懸命デザインを考えたのですよ、と。

「隔離でなく支援しようという人がいることを伝えることで、受刑者には社会とのつながりを感じてもらいたい」と話す京都女子大地域連携研究センター長の竹安栄子さん=京都市東山区

「隔離でなく支援しようという人がいることを伝えることで、受刑者には社会とのつながりを感じてもらいたい」と話す京都女子大地域連携研究センター長の竹安栄子さん=京都市東山区

出典: 朝日新聞

クッキーは無理!

 そんな熱い思いの竹安さんが、ちょっといたずらっぽく、こんなことを口にしました。

 「うちには家政学部に食物栄養学科がありまして……」。刑務所との連携を考えた時、当初は学生が実習で作ったクッキーを、クリスマスパーティーに差し入れするくらいのことでいいのかな、と思ったといいます。

 しかし、受刑者数が約1100人もいると聞いて、「これだけのクッキーは作りきれない」と断念。その結果、期せずして小さくまとまらず、全学を巻き込む大きな動きに広がっていくことになったのです。

 「全然違う展開になっていきました。まったく予想しなかった方向に新しい化学反応が起こったのです」。このとんとん拍子の急展開に一番戸惑っているのは、仕掛け人の竹安さん自身なのかもしれません。

東女と本女はどう違う? 全国40大学を「擬人化」してみた
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