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「15歳の妊婦」の衝撃 中国の留守児童、「自撮り」写真の深刻さ
中国で、15歳の少女の妊娠した写真がネットに投稿され波紋を広げています。女性は20歳からしか結婚できない中国。伝統的な家族の価値観を揺るがす行為に批判の声が殺到しました。少女の両親は音信不通で出稼ぎ労働者の可能性が高く、15歳の妊娠は、中国社会が抱える「留守児童」という問題も浮き彫りにしています。
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中国で、15歳の少女の妊娠した写真がネットに投稿され波紋を広げています。女性は20歳からしか結婚できない中国。伝統的な家族の価値観を揺るがす行為に批判の声が殺到しました。少女の両親は音信不通で出稼ぎ労働者の可能性が高く、15歳の妊娠は、中国社会が抱える「留守児童」という問題も浮き彫りにしています。
中国で、15歳の少女の妊娠した写真がネットに投稿され波紋を広げています。女性は20歳からしか結婚できない中国。伝統的な家族の価値観を揺るがす行為に批判の声が殺到しました。少女の両親は音信不通で出稼ぎ労働者の可能性が高く、15歳の妊娠は、中国社会が抱える「留守児童」という問題も浮き彫りにしています。
4月24日に、1200万人以上のフォロワーを持つ法律関係の新聞『法制晩報』の新浪微博(中国版ツイッター)のアカウントに、「00後はもう子供を産む」のメッセージと同時に、4枚の写真が投稿されました。
2枚の写真は若い女の子が大きなおなかを自撮りしたものだと思われます。女の子の後ろには、パソコンに向かっている男性も写っています。
別の画像では、男性と女性の生年月日、出身地などの情報も掲載され、二人はすでに結婚していることが記されています。
元の写真は、本人が投稿したと見られ、『法制晩報』など様々なメディアがネット上で転載しました。
中国の法律では、結婚できる年齢が男性は22歳で、女性20歳です。そのため、2人の「結婚」は法律的に認められていません。生まれる赤ちゃんも4、5年の間は戸籍がない子になります。そもそも、中国では「できちゃった婚」が日本ほど受け入れられていません。
10代同士の妊娠に対して、ネット上では厳しい意見が寄せられました。
投稿によると、おなかの赤ちゃんの性別は男で、「李允熙」と名付けられました。「李允熙」という名前は、韓流スターの名前をイメージさせます。そのため、2人の教育環境についても、コメントが集まりました。
また、中国の都市部では、女性の社会進出が広がったことによる晩婚化が深刻化しています。「残った女性」という意味の「剰女」という言葉も生まれていることから、「00世代」の妊娠は衝撃だったようです。
批判的な意見が多いなか、当事者は、4月25日、ついにコメントを出します。2人は、同郷の河南省許昌市の出身者が集まる「同城会」アカウントを通して自分の立場を説明する声明文を公表しました。
2人はネットユーザーの質問にも答えました。
女の子の回答は、さらに続きます。
妊娠した女の子の「心の話」からは、両親と音信不通の「留守児童」であったことがうかがえます。
「留守児童」は中国語で、両親が都市部に出稼ぎに行き、農村部に取り残された子どものことを意味します。「片方の親と農村に暮らし、あるいは都市部に生活しても親と一緒に暮らしていない」子どもを指すこともあります。
中国では都市部と農村部の経済格差から、多くの農村出身者は、裕福な沿岸部の大都市に出稼ぎ労働に出ます。しかし、子どもは、出身地以外の学校に入れない戸籍制度に縛られているため、農村の実家で暮らすことが少なくありません。そのため、親が仕送りをして、子どもたちは祖父母世代に育てられます。
2010年人口調査によると、中国全土の農村部には6102.5万人の留守児童がいます。農村部全体の児童の37.7%、未成年者全体の21.8%が留守児童になります。
留守児童は、親から十分なケアをされていないため、成長期に大きな悪影響を与えていると言われています。2015年には貴州畢節で児童が自殺しました。2012年には暖を取るためゴミ箱に身を寄せ火をおこした5人の子どもが一酸化中毒で犠牲になった事故も起きています。
留守児童は、大人になっても就職先が限られ、出稼ぎ労働しかできない場合が少なくありません。結果、留守児童の子どもも十分な教育を受けられず、負の再生産が繰り返される事態が起きています。
今回の15歳の母親は、その一つの縮図だとも考えられます。
2人は、今後、どうなるのでしょうか? 2人が声明を発表した河南省の出身者が集まる「駐馬店同城会」に聞きました。
「駐馬店同城会」の担当者は「道徳も法律も、今の結婚と妊娠を認めていません。2人自身、まだ子どもですので、温かく見守るしかないです」と、苦しい胸の内を明かしました。
さらに「2人は未成年者なので、未熟なところが多く、将来のことをあまり考えていません。彼らの家庭を考えてみると、両親の愛情とケアなどを受けていないので、こんな結果になったのは、ある意味では仕方ないかもしれません」と同情の気持ちも。
これからについては、「今後の道はまだ長く、彼らもすでに『親』になる身ですので、お金を稼ぐことを考えるばかりではなく、子供のことを多く考え、子供のそばに一緒にいてほしいです。負の連鎖が起こらないように…」と、将来を案じていました。
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