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2015年02月10日

「あんな無料サイトに書くな」 東洋経済は意識をどう変えたか・中

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東洋経済オンラインの山田俊浩編集長=東京・日本橋本石町の東洋経済新報社で、古田大輔撮影

東洋経済オンラインの山田俊浩編集長=東京・日本橋本石町の東洋経済新報社で、古田大輔撮影



 「東洋経済オンライン」の編集長に昨年7月就任し、わずか半年でPVを倍増させた山田俊浩氏。従来の枠組みを崩した“社内改革”の具体策とは。3回に分けたインタビュー詳報の2本目です。

紙の編集局幹部をネットの会議に

 ――サイトの継続した成長のために、社内ではどんな改革に取り組んだのでしょうか。

 「管理職は、雑誌しか見えない部署にいるとどうしても『ちゃんと雑誌に書いているか』という目線で見てしまうと思います。東洋経済オンラインに対して『あんな無料のものに書くなら有料の雑誌に書け』という感覚があったのかもしれません」

 「(東洋経済オンライン編集部がある)デジタルメディア局と編集局は距離が離れているんですが、この1月1日から編集局の一部の幹部はデジタルメディア局を兼務することになりました。だから、デジタルメディア局の会議には編集局の幹部も出るようになった。距離を縮めて情報共有をしようという経営判断だと思います。そうした場で幹部のみなさんが『え、こんなに収入があるんだ』ということを知る。それが、幹部が記者と接するときに『ちゃんとオンラインにも書きましょう』ということにつながっていくと期待しています」

 ――雑誌の記者は、畑違いのオンラインへ書くとなると「仕事が増える」「何のために」という感覚を持つ人もいるのでは。

 「オンラインに掲載した一本一本の記事について、編集局が書いた記事は何%、外部が書いたのは何%と配分を計算することはできます」

 ――総売り上げをPV数で割り、「これは紙から来た記事なので紙の収入」と計算して貢献度を計るんですか。

 「それを見られるように数字を調べています」

 ――雑誌の記者がオンラインの記事を書くときには、とまどいもありますよね。

 「タイトルから何から全部、最後はこちらが調整するということで、最初の数カ月は議論がありました。でも、『こっちで責任をもってやるから』と丁寧に説明し、地道にやっていくと、みんなも『そういうもんだ』とリテラシーが変わっていきました」

週刊東洋経済新報

週刊東洋経済新報

仕事は編集と配信で終わりじゃない

 ――記者から記事を受け取ったあと、その配信の仕方や流通経路も日々研究しているそうですね。

 「記事の配信は昔から午前6時です。5時半とか6時半とかいろいろ試しましたが、キュレーションサイトへの採用されやすさなど、いろんなものを考えて結局、6時にしています。編集者は記事を編集・配信して終わりではなく、ツイッターやフェイスブックを使って、読者に届く最後の部分まで面倒をみるようにしました」

 ――具体的には。

 「編集部で話し合い、記事を配信したら、必ずワンポイント解説をつけてフェイスブックに投稿するよう、全編集者に義務化しました。見栄えがする写真をつけ、解説の長さにもルールをつくりました。編集長になった7月の時点では、フェイスブックの公式ページの『いいね』数は約3万人。これがいまは6万人を超え、1日200人のペースで増えています」

 ――フェイスブックへの投稿は『広告費』を払えば、それを読む人、つまり、リーチ数が伸びる。その機能も使っていると聞きました。

 「1日1本、その日のエース級の記事に広告費を出しています。良い記事がさらに読まれるように、水をやって育てる感覚です」

東洋経済オンラインのフェイスブックページ。ワンポイント解説と写真つきの投稿で記事への流入を増やしている

東洋経済オンラインのフェイスブックページ。ワンポイント解説と写真つきの投稿で記事への流入を増やしている

出典:フェイスブック

 ――ソーシャルからの流入の割合は。
 
 「ソーシャルからは全体の15%ぐらい。従来とあまり変わっていません。ただ、本当はもっとあるはずです。(アクセス解析ツールの)グーグルアナリティクスだと、フェイスブックのアプリから来た流入が別のものにカウントされているようで。最近は、記事がヤフトピに採用されなくても、ベースとして1日300万PV程はいくようになってきました」

 ――細かい話になりますが、ツイッターへの投稿はフェイスブックより回数が多いですね。

  「ツイッターは自動設定で、サブタイトルとタイトルを入れて10分以内にボットで投稿しています。フェイスブック用につくった文言で、いいなと思うものは、同じ文言でツイッターにも再度入れています。配信して、すぐに広まる記事はいいのですが、リツイート2件とか、空回りすることもある。それが良い記事でより広く読まれたいときは、もう一度投稿します。ツイッターやフェイスブックでの反応は、すべての記事で100件は超えるようになりました。ヒットすると1000を超えます」

東洋経済オンラインのツイッターアカウント

東洋経済オンラインのツイッターアカウント

出典:ツイッター

 ――見出しのつけ方や配信の仕方、オンラインならではのテクニックは、どう学んだんですか。

 「恥ずかしがらずに人に聞きに行きました。(ハフィントンポスト編集長からスマートニュースに移籍した)松浦さんとかに聞きに行って、『ここが悪い』とどんどん言ってもらいました。昨年10月に始めたコメント欄も、この人はわかっているという人に聞きに行きました。ネットのポイントをよく知っている人には、事前に聞くようにしています」

山田編集長が「参考にした」というハフィントンポスト

山田編集長が「参考にした」というハフィントンポスト

出典:ハフィントンポスト日本版

 ――それも山田さんの人脈ですね。

 「いままでのつきあいの中で、わかっている人に聞いています。正しいと思ったら、『これはこうだからこうしてくれ』と編集部の全員でシェアしています。それと海外の例ですね。海外の大手紙がどうやっているかも、中の人に聞きました。向こうの場合は、朝日新聞もそうかもしれないけれど、編集者がどうのじゃなくて、記者自身がちゃんと写真も入れてツイッターで宣伝しています」

トップページは死んでいない

 ――サイトのデザインを昨年10月に大きく変えました。写真が増え、さらにビジュアル重視に。その後も検索窓の位置や大きさを変えるなど、改良を加重ねています。

 「ヤフーの人から『検索窓が端っこにあるようでは駄目。うちは検索窓をつくるのに1ピクセル単位で議論しています。それぐらい重要ですよ』と聞いて、すぐに変えました(笑)」

 ――ビジュアル重視への反応はどうですか。
 
 「トップページのPVが増えています。1日50万~60万PVいくことがある」 

 ――ソーシャル流入が増えた結果、トップぺージからサイトに入る人が減り、「トップページは死んだ」という議論もありますが。

 「そんなことはないと思います。個々の記事をクリックしなくても、トップページを見ればどんなニュースがあるのか見通せる。そういう風に見に来る人を増やさないと。結局、ここ(トップページの右上の広告枠)が人通りが多くて一番目立つ“銀座4丁目”です。ここの広告が高く売れないといけない。広告を出す人は必ず『トップページのPVはいくつですか』と口にします」

 「私も最初のころは、個別の記事が大事でトップページはどうでもいいと思っていました。だけど、実際はトップページを見に来る人が多いので、記事の順番も気にするようになりました」 

東洋経済オンラインのトップページ

東洋経済オンラインのトップページ

出典:東洋経済オンライン

インドの水着美人に殺到

 ――トップページの記事の編成にはどういうルールが。

 「明け方に他の編集部員とメールでやり取りをしながら、設定しています。最終責任としては編集長が設定するルールになっています」

 ――それも山田さんですか。睡眠時間4時間といううわさを聞きました(笑)。

 「あまり寝なくてすむんで、大丈夫です(笑)」

 ――読まれそうなものをトップページの上に置くのですか。

 「一番上は気をつかっていて、あまり読まれていなくても、企業に関するその時々の記事を入れています。ちょっとした分析がついているのが必須なんですけれど、ややストレートニュース的な企業記事。その次に、よく読まれそうな記事を置いています。写真はすごい気をつかっていて、クリックしたくなるものを選んでいます」

 ――企業ニュースのサムネイルにすごい美人の写真がついていることもありますよね。

 「この『インドのイケてる企業家、規格外すぎる活躍』という記事(インドの飲料メーカー、キングフィッシャーに関する記事)は、水着姿の女性をサムネイル写真にしたおかげですごい読まれたんですけれど、普通はこういう記事ならキングフィッシャーのビールを見せますよね。でも、ビールの写真だと誰もクリックしない。中身がしっかりしている記事なのに、読まれないのはもったいない。だから工夫しました。この女性、キングフィッシャーが出しているカレンダーに写っているモデルです(笑)」

写真の効果もありヒットした記事「インドのイケてる企業家、規格外すぎる活躍」

写真の効果もありヒットした記事「インドのイケてる企業家、規格外すぎる活躍」

出典:東洋経済オンライン

 ――この人が女性企業家なのかと、ついクリックしてしまいます(笑)。

 「たくさんのモデルの中で、日本人好みの女性を時間をかけて探しました(笑)。(きっかけの一つとして)それによって記事が読まれると嬉しいし、達成感がある。これのおかげで読まれたと感じて、編集部のメーリングリストでシェアしています。ただ、『女性の写真がいいとすごく読まれるんだね』とわかって、翌日のサイトは女性の写真ばかりに。薬が効きすぎることもあります(笑)」

記者ブランディングの重要性

 ――先ほども話題に出ましたが、海外では記者個人がツイッターで活発に発言し、記者のブランド化が目立ちます。

 「うちも記者を主役にして、個人のツイッターも全面的にやるという考えもありますが、時期尚早という判断です。でも、いずれはその方向に行きます。東洋経済オンラインでは記事の署名の下をクリックすると、その記者の書いた記事がプロフィールとともに一覧で全部見られるようになりました。これまではなかった。一部ですが、すでにプロフィールに写真を入れている記者もいます。圧倒的に映える。そして、ファンがつきます。そういう記者が書く記事は読まれるし、コメントもつきます」

 「3人とか4人とかで書いたら、その名前をすべて入れたくなるものです。でも、やめました。本当に最も関わった記者の名前に絞って、極力1人にしています。署名は記者のモチベーションにもなります。ヤフーなどの外部に配信された時でも、記者の名前を検索して記事が出せるようになっていますよね。山田俊浩と入れると私の記事が全部見られる。そのときに東洋経済は関係なく、記者が何を書いているによってブランディングされる。誰が書いているのかわからないのはバツです」

記者のプロフィールと執筆記事を一覧にしたページ

記者のプロフィールと執筆記事を一覧にしたページ

出典:東洋経済オンライン

「コメント欄」に期待する理由

 ――昨年10月にフェイスブック連動型のコメント欄を始めました。でも、反応は少ないですね。

 「おっしゃるとおり、書き込みゼロが多いです。記者に『コメント欄に必ず一言入れてね』といえばいいんでしょうけれど。社内で議論したとき、『問題が起きたら困る』と関係者は書き込まないルールではじめました。いずれは、記者が登場して『あなたは批判なさいますが、実はこうです』みたいなやりとりがあればコミュニティになると思うんです。ニューズピックスなんかはそうですね。うちはそこができていない。次のステップでは、あらぬことで批判されていれば『そんなことありません』と記者が書く。いわゆる炎上になることがあっても、コメントは増えると思います」 

記事の下にフェイスブックと連携したコメント欄がついているが、書き込みは少ない

記事の下にフェイスブックと連携したコメント欄がついているが、書き込みは少ない

出典:東洋経済オンライン

 ――炎上を覚悟してまで、コメント欄を設ける目的は。
 
 「読売オンラインの『大手小町』が読まれるのは、コメントを書き込んで評価されたのか、批判されたのか、書いた人が知りたいからという部分があります。自分がコメントしなくても、あんな変なコメントを書いた人はその後どうなったんだろうとか、何度も見に行きたい感覚があると思うんです。2ちゃんねる的な。そういったものにうまくつながるようにしたいです」

 ――コメント数が増えると、誹謗中傷などノイズも増えます。

 「フェイスブックのガイドラインで、おかしいものは先方も削除するでしょうし、実はこちらでも削除しています。ガイドラインを設けていて、書かれたものは全部チェックしています」

 ――コミュニティの「管理コスト」と「得られる利益」を比べれば、将来的には後者が大きくなる、と。

 「これからコミュニティができる形にもっていければ。ハフィントンポストは、オリジナルのコメント欄を設けていたのを、去年8月にフェイスブックに変えましたよね。理由を聞いてみたらコストの問題だと。東洋経済オンラインでもその例を参考にして、フェイスブックを入れました」
 
 「実は、コメント欄を独自につくろうと、すでに社内で見積もりもとっていたんです。やるなら自分たちでユーザーのIDもとって、やろうというのも一つの考えです。だけど、検討した結果、自前だとコストがかかるので、フェイスブックにしました。シェア機能がある点も大きいです」


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