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「子どもにやさしい」赤羽に。東洋大が地域と目指すまちづくり

PR by 東洋大学

目次

東京都北区赤羽。安くておいしい居酒屋さんが集まる歓楽街のイメージが強いですが、実は「住みやすい町」「子育てにやさしい街」としても近年話題の注目エリアです。

大規模な団地の再開発の中で生まれた東洋大学赤羽台キャンパスには、今春「福祉社会デザイン学部」と「健康スポーツ科学部」が新設されます。地域の子どもや保護者の思いや考えを聴きながら「子どもにやさしいまち」づくりと、子ども支援のあり方を研究する内田塔子准教授に伺いました。

「赤羽って子どもにやさしいまちですか?」

市民グループのネットワークが心強いまち・赤羽

京浜東北線や埼京線など多くの路線が乗り入れているJR赤羽駅。駅周辺にはイトーヨーカドーや西友といった大型スーパーのほか、「赤羽一番街商店街」や「赤羽スズラン通り商店街(LaLaガーデン)」といった活気ある商店街があります。平日の昼どきに駅前を歩くと、小さな子どもをつれたお母さんの姿や、小学生の集団下校を見守る大人を多く見かけました。

「2年前に赤羽台に移転してきました。北区は、近年は人口増加傾向にありますが、中長期的には少子高齢化が進展すると予測されており、地域のきずなづくりと子育てファミリー層や若年層の定住化が北区の最重要課題であるとされています。地域をリサーチするなかで、町会・自治会活動の高齢化について話を聞く一方、プレイパークや、子ども食堂、学習支援や子どもの居場所づくりなど、地域の子どもたちの課題を改善し、子どもの育ちを支えようと自主的に子ども支援活動を行っている市民の方々に多く出会ってきました。子どもや子育て中の保護者にとって、何か困ったときに、公的な支援だけでなく、支えてくれる人がいる地域というのは、大きな魅力ではないかと思います」と内田先生は話します。

「困ったときに、公的な支援だけでなく、支えてくれる人がいる地域は大きな魅力」と話す内田塔子先生
「困ったときに、公的な支援だけでなく、支えてくれる人がいる地域は大きな魅力」と話す内田塔子先生

2023年4月に開設される「福祉社会デザイン学部」の前身である「ライフデザイン学部」は、2021年に朝霞キャンパス(埼玉県)から赤羽台キャンパスに移転しました。内田先生は、朝霞キャンパスにおいて、大学生が小学生の学習サポートをしたり、一緒に遊んだりする「東洋大学きゃんぱす」という活動を2016年から継続するなど、地域の中で大学ができる社会貢献活動を学生とともに模索してきたそうです。

「ようやく活動が地域に定着してきたかなというときにキャンパス移転になり、地域との関係をまた一からつくることになりました。移転初年度は、コロナ禍ということもあり、活動をすることができない代わりに、すでに地域で活動されている方々のもとに足を運びました。そのなかで、まだ支援が十分ではないと感じる不登校の子どもの話をうかがうことになったのです」

「街全体が大学キャンパス」地域を歩いて、見て、聞いて学ぶ

「何をするかは子どもたちが決める」居場所づくりの活動で。サポートする東洋大の学生とお絵かきを楽しむ=内田先生提供
「何をするかは子どもたちが決める」居場所づくりの活動で。サポートする東洋大の学生とお絵かきを楽しむ=内田先生提供

地域に出て、歩いて、見て、聞いて――。地域に深くコミットしながら、「課題」を見つけ、学生とともに「解決」に向けた実践に取り組むのが内田先生のスタイルといえそうです。

「ある時、コミュニティソーシャルワーカーの方の紹介で、北区内で不登校の子どもの自由登校を見守る活動をしている団体の方にお会いしました。『学校に行かなくなった途端、家庭以外に居場所がなくなり、子どもも親も孤立しがちになる』『子どもが安心して行ける場所・いられる場所が学校・地域の中にない』。このような話を聞いたことをきっかけに、こちらの団体との共催で、2022年6月から不登校の子どもの居場所づくりを始めてみることにしました」

地域の中で子どもが安心して行ける場所・いられる場所を増やすために、月に1回、赤羽台キャンパスの教室に、工作やゲームなど子どもたちが自分で選択して遊べるコーナーを、保育士や教員を目指す学生たちが考えて準備し、子どもたちと保護者に来ていただいているそうです。子どもの年齢に制限はなく、現在は、未就学児から中学生までの子どもたちが参加し、子どもたちとその親、学生を合わせると、毎回20人ほどが参加しているとのことです。

「ここで何をするかは、子どもたちが決めます。大学生と話しながら、何かをつくったり、ゲームをしたり。何もせずに話しているだけでもいいんです。何かをすることを強制されない。誰とも比べられない。評価もされない。ありのままでいることがあたりまえに認められる場所で、個々の子どものペースで、おもしろそう、やってみたいと思うことを存分にやってみる。そうすると次第に『楽しかった。また来たい。次はいつ?明日もある?』という言葉が聞かれるようになりました。子どもたちの中にエネルギーが蓄えられていくのを毎回目の当たりにして、子どもたちの持つ力はすごいなあと改めて実感しています。どの子にも好奇心や意欲があります。それが解き放たれるまで、おとながじっくり待つ姿勢が大切なのだと思います。実際にはなかなか難しいことですけれども、このような場をぜひ活用していただき、親同士が思いを吐き出したり、情報共有したりすることが重要だと思っています」

保護者からは「子どもたちが素直に『楽しい!行きたい!居たい!ここ、いいかも!』と思える場所が1つ増えました。そう思えること、心がウキウキすること、向かう足が速くなること。単純だけどこれってすごいことだと保護者が気づかされました」「笑顔が増えて、できることも増えました。いろいろなことができるわが子に気づくことができました」「家族としか打ち解けない子どもでしたが、学生さんたちと関わるようになって、家族以外の人とも関われるようになりました」「この間、習い事の合宿に行けたんです!」「文章を書けなかったのに、(学生たちへのお礼の)手紙を書けたの!書いたの!」といった声が寄せられ、保護者が子どもたちの変化を実感したり、子どもの力に気づけたりする場にもなっているそうです。その上「参加している学生にも大きな学びがある」と内田先生は言います。

「子どもたちと関わる以前は、『不登校の子ども』と一括りにして、元気がないイメージを持つ学生もいましたが、直接かつ継続的に子どもたちと関わることにより、それが偏見だったことに気づきます。私たちの専攻は、卒業後子どもに関わる教育や福祉の現場で働く専門職になる学生が多いので、目の前にいる子どもと向き合い、自分が持っている先入観や固定観念を崩す体験を大学にいながらできることは、とても貴重な学びです」

5人に1人は外国ルーツ?多文化共生が進む保育の現場

様々な言語で書かれた絵本が用意されている保育実習室
様々な言語で書かれた絵本が用意されている保育実習室

ほかにも、大学は地域で子ども支援の活動をしている方同士をつなぐ役割も果たしているといいます。赤羽を含む北区には2万人以上の外国人が住んでおり、外国にルーツのある家庭も多く、5人に1人は外国にルーツのある子どもという保育園もあるそう。特に大学が隣接する地域にはムスリムの家庭が少なくなく、そうした家庭に対する支援を地域の子ども食堂がしたくても、ハラルフードを提供できないことがネックになって実現できていないことを、内田先生は聞いたそうです。

「近隣にハラル給食を提供する私立保育園がありました。偶然なのですが、この保育園は、私のゼミの卒業生が園長を務めていました。このような地域のニーズがあることを直接伝えたところ、とんとん拍子で話が進み、今ではこの保育園に、コミュニティソーシャルワーカー、外国人コミュニティのリーダーの方、地域で活動する方々、そして大学の関係者が定期的に集まって、支援のための活動計画を練っています。外国にルーツのある家庭への具体的な支援活動に学生も参加させていただくことで、日頃大学で学んでいる多文化共生保育・教育に関する専門知識とスキルを実際に活用してみるまたとない機会となり、学生にとってとても貴重な学びの場となっています。まさに地域がキャンパス、なのです」

大学で、幼稚園や保育所の教室を想定してつくられた保育実習室を見せていただくと、韓国語や中国語といった日本語以外の言葉で書かれた絵本やおもちゃ、肌や髪の色が様々な赤ちゃんの人形、車いすにのった人形など「多様性」を感じさせる教材がたくさんありました。

保育実習室には「多様性」を感じさせる教材がいっぱい
保育実習室には「多様性」を感じさせる教材がいっぱい

そのねらいを内田先生は「近年、日本に在留する外国人が増加していますので、外国にルーツのある子どもも増えています。これから保育現場や教育現場では、これまで以上に言語や宗教、文化、個々の家庭の背景などを尊重し、個々のニーズに対応していく力が必要になります。ですので、このような教材をはじめ、地域の外国にルーツのある親子を対象にした『子育てひろば』を学生と一緒に大学で開催したり、地域の支援活動に参加したりする機会を十分に活用することで、学生には多文化共生保育・教育の知識や技術、姿勢をリアルに身につけたうえで社会に羽ばたいていってほしいと考えています」と話します。

「子どもにやさしいまちづくり」は子どもの意見を聞くことから

また、内田先生は、子どもの権利条約や「子どもにやさしいまち」づくりについても研究しています。子どもの権利条約は、1989年に国連が全会一致で採択し、現在アメリカを除くすべての国が批准し、日本も1994年に批准しています。

内田先生によれば「子どもにやさしいまち」とは、ユニセフが1996年に開かれた第2回国連人間居住会議(ハビタットⅡ)で初めて提起しコンセプトで、子どもの権利条約に規定される子どもの権利を実現するまちのことだそうです。そのようなまちになるためには、地方自治のもと、具体的に、①子どもの思いや考えを日常的に聴くことができる子ども参加システムの確立②子どもの権利実現を促進する法的枠組の整備(子どもの権利条例の制定)③独立した子どもの相談・救済機関(子どもオンブズパーソン・子どもコミッショナー等公的第三者機関)の設置④十分な子ども予算の確保 などの基本戦略が重要であるとされています。

「なかでも、子ども参加システムの確立が、子どもの権利条約の根幹にあたる部分で、子どもの最善の利益(第3条)が何かを決める際は、おとなだけで考えるのではなく、子どもの意見を必ず聴き、それを正当に重視(第12条)しなければならないとされています。子どもの参加の権利と参加のしくみを条例で規定し、法律に基づいて子どもの思いや考えを踏まえた子ども施策の推進をしていくまちこそが、『子どもにやさしいまち』だということになります」と内田先生。

日本では、川崎市を筆頭に、2022年10月現在、全国で62自治体が子どもの権利に関する総合条例を制定し、44自治体が条例に基づく子どもの相談・救済機関を設置しています。また、昨年6月に日本でもようやく、子どもの権利条約の理念を掲げたこども基本法、こども家庭庁設置法、および同法施行に伴う整備法が成立し、この4月から施行されます。「今後は、これまで以上に自治体で子どもの権利条約を踏まえたまちづくりを実施していくことが求められますので、子どもの権利に関する総合条例制定の取り組みは、全国で加速化していくと思います。北区でも条例制定に向けた協議が行われているので、大変注目しています。地域には、さまざまな課題を抱えた子どもたちと、子どもたちに関わり支援する多くの市民グループがあります。そのような地域の力も活用しながら、誰一人取り残さずにすべての子どもの思いや考えが反映された条例になることを期待しています」

誰もが暮らしやすいまちをつくるために――地域の中で果たす大学の役割

「大学が人と人をつなぎ、地域と行政の橋渡しの役割を担いたい」と語る内田塔子先生
「大学が人と人をつなぎ、地域と行政の橋渡しの役割を担いたい」と語る内田塔子先生

東洋大赤羽台キャンパスは、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の団地再開発計画から誕生しました。高度経済成長期に作られた古い団地群はモダンな「ヌーヴェル赤羽台」に生まれ変わり、キャンパスに隣接しています。

「高齢の住民の方々に聞くと、以前は団地内でもっとつながりがあったといいます。今は、あいさつすらできないことも珍しくないという話もありました。そこで、高齢者の方々に昔の伝承遊びを教えていただくイベントを企画したり、大学生が主導して、高齢者の方々と一緒に体を動かすプログラムを実施したりするなど、地域の中で人と人とをつなぐ橋渡しの役割を担っていきたいと考えています」と内田先生は語ります。

東洋大学はUR都市機構、北区と地域活性化に向けた連携協定を締結しています。その取り組みのひとつとして、高齢者福祉や障害者福祉、児童福祉やユニバーサルデザインなど、福祉社会デザイン学部の多様な専門分野の教員とUR都市機構、北区の三者で、定期的に情報共有をする場「赤羽台Life Design Lab」を設け、誰もが暮らしやすいまちづくりのために、意見交換しているそうです。この場には、コミュニティソーシャルワーカーや自治会メンバー、赤羽台キャンパスに隣接する東洋大学国際交流宿舎(世界各国からの留学生が300人が入居)の寮長(学生)が参加することもあるそうです。

「地域と向き合う様々な活動を通して、子どもを含む地域住民がどのような課題に直面し、支援する人々が何に問題を感じているかを多く聞くことになります。そうした地域の声を『赤羽台Life Design Lab』をはじめ、あらゆる機会を通じて行政に届けることも、今後大学の重要な役割になると思っています」

このように地域全体を大学のキャンパスとして、学びの実践の機会として様々な地域活動に携わることができること、さらに子どもを含む人々のウェル・ビーイングを支え、よりよい地域づくりに関わる多様な専門領域を、学生は学科を超えて横断的に学ぶ機会もあることが、「福祉社会デザイン学部」の魅力だと内田先生は話します。

「例えば、人間環境デザイン学科の学生が、子どものおもちゃをデザインする時、私たちの学部には、多様な専門領域の教員が集まっているので、デザイン系の教員だけでなく、保育・教育を専門とする教員に直接アドバイスをもらいに行くことも容易にできます。また、完成したおもちゃを『東洋大学きゃんぱす』の活動で小学生に遊んでもらい、子どもの思わぬ使い方に触れ、遊んでみての感想を直接聴くことで、改良点を見出せるなど、刺激的な学びの場がたくさんあります。こうした学科を超えた連携やフィードバックによって得られる学びと、地域の子どもやおとなとのかかわりあいの中での実践的な学びを通じて、誰もが暮らしやすいまちづくりを担える専門知識・スキル・態度を身につけた学生たちを、社会に送り出せるのではないかと考えています」

東洋大学赤羽台キャンパスに新設される福祉社会デザイン学部。地域をキャンパスにした学びによって、赤羽がますます「子どもにやさしい」「誰にとってもやさしい」まちになっていくのかもしれません。

内田 塔子(うちだ・とうこ) 東京都出身。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得修了。博士(文学)。専門は、教育学、子どもの権利論。自治体子ども政策の評価・検証にも携わる。国連NGO「子どもの権利条約総合研究所」事務局長
内田 塔子(うちだ・とうこ) 東京都出身。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得修了。博士(文学)。専門は、教育学、子どもの権利論。自治体子ども政策の評価・検証にも携わる。国連NGO「子どもの権利条約総合研究所」事務局長

東洋大学赤羽台キャンパスは、新時代を担う「情報」「福祉」「スポーツ科学」「デザイン」の拠点へ

2023年4月、東洋大学は福祉・健康・スポーツ科学・デザインに関わる2学部5学科を赤羽台キャンパスに開設します。

新学部一覧表

新キャンパスは隈研吾氏がデザイン

2023年1月完成した、HELSPO HUB-3は体育館棟、図書館棟、食堂棟などを構え、主に福祉社会デザイン学部、健康スポーツ科学部の学生が使用します。INIAD HUB-1(2017年完成)、WELLB HUB-2(2021年完成)に続き、隈研吾氏の設計によりキャンパス全体に統一感を演出しています。体育館の屋根には鉄骨と木のハイブリッド構造である「木屋根架構」が採用されました。

(左)HELSPO HUB-3(体育館棟・図書館棟)(右) 体育館内イメージ

(左)HELSPO HUB-3(体育館棟・図書館棟)(右) 体育館内

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