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クスっと笑えて、今の時代だからこそ、心に沁みる。

映画「川っぺりムコリッタ」公開記念 立川志の輔さん×荻上直子監督スペシャル対談

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「川っぺりムコリッタ」9月16日(金)より全国ロードショー
「川っぺりムコリッタ」9月16日(金)より全国ロードショー

目次

主演・松山ケンイチ、共演・ムロツヨシ、満島ひかり他、豪華キャストで贈る荻上直子監督の最新作『川っぺりムコリッタ』。9月16日(金)からの全国ロードショーの前に、自らオリジナル脚本を手がけた荻上監督と、落語家の立川志の輔さんの対談を実現。本作の見どころと魅力を語り合っていただいた。

炊き立てホカホカの白いご飯が食べたくなる

志の輔 私の故郷、富山が舞台と聞き、どの辺が出てくるかなと思いながら観始めましたが、すぐそんなことは忘れました。冒頭でアパートの隣人・島田が「風呂を貸してほしい」と上がり込んできた頃にはもうすっかり映画の世界に入り込んでいましたね。そしてエンドロールでは幸せな気分に。このコロナ禍で自分の中に蓄積していた「嫌なもの」が一掃された気がするほどスッキリ感がありました。

荻上 ありがとうございます。松山ケンイチさんが演じている孤独な山田が、築50年のアパートで暮らす住人たちに囲まれ、少しずつささやかな幸せに気づいていくシンプルな物語。決して大きな事件もないのですが。

志の輔 このアパートの住人たちがいいんです。ムロツヨシさん演じる島田をはじめ、満島ひかりさんが演じる大家、吉岡秀隆さん演じる墓石売り。みんな貧しいけど人間味があって魅力的。正直、私もここの住人になりたかった(笑)。それと荻上監督の真骨頂、食事のシーンもよかった。松山さん、ムロさんが炊飯器のふたを開けて炊き立てのご飯の香りを嗅ぐところなんて最高。二人の美味しそうな食べっぷりにも見惚れ、白いご飯が無性に食べたくなりました。

荻上 そんな風に思っていただけてうれしいです。

生きること、死ぬことをユーモラスに描く

志の輔 本作は荻上監督のオリジナル脚本。どんなことに着想を得て書かれたのでしょうか。

荻上 テレビ番組で、どこにも行き場のない遺骨の特集を観たのがきっかけです。遺骨の処分に困り、わざと電車の中に忘れてきたり、亡くなられた方の別れた奥さんに遺骨を届けて「その辺に捨てておいて」と言われたり。そういう現状を知り「遺骨」について描いてみようと思い立ちました。また、日本では予期せぬ災害で毎年多くの命が失われています。つまり私たちはいつ死んでもおかしくないギリギリのところで生きている。そんなことを日々感じる中で、「遺骨」を題材に、生と死の境目があってないような映画を作ろうと思った次第です。

志の輔 樹木葬、散骨葬など故人のさまざまな送り方を表現されているのも印象的でした。

荻上 遺骨を砕き花火の中に入れて打ち上げたという話は、私が友人から聞いた実話です。

志の輔 花火は痛そう。私は勘弁願いたいかな(笑)。骨をかじるシーンもありました。

荻上 愛する夫を亡くした女性が遺骨を食べたという話も聞いたことがあったので。
志の輔 うちの女房は間違っても私の骨は食べないでしょうね(笑)。ただ本作を観たら死ぬのが少し怖くなくなりました。

荻上 どうしてでしょう?

志の輔 監督の言うとおり、生と死は常に隣り合わせ。たった1秒であちら側の人になり、その瞬間から、死んでしまった自分は何もできません。遺された人たちに託すしかないわけです。誰かが志の輔の骨は花火で打ち上げてやろうと言えば、そうなるわけです。私は絶対に嫌なのに(笑)。だったら自分が死んだ後のことを今から心配しても仕方ないなと。そう思ったら心がスッと楽になりました。

荻上 タイトルの「ムコリッタ」とは、仏教の時間の単位の一つで30分の1日、つまり48分のこと。国語教師をしている友人が教えてくれました。おっしゃるように生と死の境界線は刹那で、それを表現するのにぴったりかなと思っています。

本作を観ることがささやかな幸せになる

志の輔 貧困や孤独死を扱っているのにカラッと明るくユーモラス。きっと登場人物がみんな正直者だからでしょうね。少し落語の世界に似ています。落語もバカ正直な人間が言わなくていいことを口にしてしまうところから笑いが生まれるので。

荻上 確かにそうですね。

志の輔 それにしても島田の巧妙なずうずうしさには笑いました。勝手に人の家の風呂に入ったり、ご飯を食べたり。しかもおせっかいです。でも、案外こういう人こそが今の時代には必要かもしれません。
 
荻上 そうなんです。今は誰もが孤立しがちで、島田のように厚かましい人が踏み込んでこないと関係性も生まれにくい。聞いた話では、自殺を考えている人にはより踏み込んでいかないとなかなか自殺をとどめることはできないそうです。このアパートの人たちの距離感はある意味、理想かもしれません。

志の輔 本作を観ることが幸せなひとときになりました。泣いたり笑ったりして観終えた時に自分がどんな気持ちになるかを楽しみに観てほしいですね。

荻上 映画館でじんわり楽しんでいただけたらうれしいです。
 
STORY
家族も生きがいもない山田(松山ケンイチ)は、北陸の小さな町の塩辛工場で働き口を見つけ、社長(緒形直人)から築50年の「ハイツムコリッタ」という川べりの古アパートを紹介される。ある日、隣の部屋の島田(ムロツヨシ)が「風呂を貸してほしい」と上がり込んできたことから生活は一変。夫を亡くした大家の南(満島ひかり)、息子と二人暮らしで墓石を売る溝口(吉岡秀隆)といった住人たちとも関わりを持つようになり、山田の心は少しずつほぐれていく。
 
【プロフィール】
落語家
立川 志の輔さん
たてかわ・しのすけ/1954年富山県生まれ。83年立川談志門下に入門。90年に落語立川流真打ち昇進。毎年1月に「志の輔らくご in PARCO」1カ月公演のほか、全国各地で独演会を開催。毎週日曜朝7時から「志の輔ラジオ 落語DEデート」(文化放送)に出演。

映画監督・脚本家
荻上 直子さん
おぎがみ・なおこ/1972年千葉県生まれ。2003年『バーバー吉野』で劇場映画監督デビュー。17年に『彼らが本気で編むときは、』で日本映画初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞受賞。他の監督作に『かもめ食堂』『めがね』『トイレット』『レンタネコ』など多数。
<公式サイト>
映画『川っぺりムコリッタ』|2022年9月16日(金)全国ロードショー (kawa-movie.jp)
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