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病気を理解し、一歩を踏み出すために~医師・看護師と考える【PR】

WEB市民公開講座シリーズレポート PR by 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 2021年12月19日(日)開催

目次

皮膚の病気について理解を深めるWEB市民公開講座シリーズ「みんなで考える市民公開講座―皮膚の病気、患者さんの笑顔のために」が2021年12月19日、オンラインで開催されました。

皮膚の病気の患者さんは見た目に症状が表れるため、痛みや痒(かゆ)みだけではなく、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)低下につながることがあります。周囲の視線が気になって行動範囲が限られてしまったり、夏でも肌の露出を避けて長袖を着たり、自分に自信が持てなくなってしまう方も。

また、皮膚の病気に対する周囲の誤解による社会的スティグマ(患者さんの一部分にすぎない何らかの属性に注目して、ネガティブな評価をすること)に傷付けられることもあります。そのため、周囲の理解や正しいサポートは、皮膚の病気を持った患者さんが笑顔で暮らしていくために欠かせません。

今回は皮膚科専門の医師と看護師の視点で、患者さんの実態やこれからの課題などについて語り合いました。

看護師は患者さんと医師の架け橋

福島県立医科大学 看護学部 基礎看護学部門 准教授・佐藤博子先生(写真左)と帝京大学 医学部 皮膚科学講座 主任教授・多田弥生先生(写真右)
福島県立医科大学 看護学部 基礎看護学部門 准教授・佐藤博子先生(写真左)と帝京大学 医学部 皮膚科学講座 主任教授・多田弥生先生(写真右)

WEB市民公開講座シリーズ「みんなで考える市民公開講座―皮膚の病気、患者さんの笑顔のために」。第3回となる今回は「病気を理解し、一歩を踏み出すために〜医師・看護師と考える、皮膚の病気への誤解」がテーマです。

帝京大学医学部皮膚科学講座主任教授・多田弥生先生と、福島県立医科大学看護学部基礎看護学部門准教授・佐藤博子先生が登壇しました。

東京大学医学部附属病院で皮膚科病棟・外来の看護師として20年以上皮膚科看護を経験された佐藤先生。その経験を元に、より高度な皮膚疾患ケアの知識を有するスペシャリティナースを育成するため、日本皮膚科学会認定の「皮膚疾患ケア看護師制度」(平成30年4月発足)の設立に尽力しました。

佐藤先生は看護学生時代の先輩の影響を受けて皮膚科看護の道を志したと言います。

「私たち皮膚科の看護師は、患者さんに対してやさしく体を洗う方法を石鹸の泡だて方から説明し、薬の塗り方、痒みがある時の対処法などを丁寧に指導します。医師と共に治療やケアを通して患者さんと関わる中で、皮膚の症状が回復した患者さんのうれしそうな様子を間近に見ることは、私たち皮膚科の看護師の喜びややりがいになっています」
 
佐藤先生は症状が目に見えることによる皮膚疾患のメリットとデメリットについて、こう話します。
 
症状が見えることで、ケアの結果が患者さん自身の目で確認できるというメリットがあります。『頑張って治療をしたらよくなる』と実感が得られるのです。また看護師もその喜びを一緒に感じることができます。私が皮膚科看護にやりがいを感じた理由でもあります。
 
一方で、他人にも皮膚の症状が見えることで、辛(つら)い思いをされている患者さんも大勢います。手の皮膚に症状のある患者さんは『電車などでつり革につかまると周囲の視線が集まっている気がする』、顔に症状のある方は『ずっと下を向いている』と語っておられました。
 
また、かなり前の話ですが、皮膚科外来に患者さんの職場の同僚と名乗る人から電話があり、『(その患者さんが)乾癬(かんせん)という病気だと聞いたが、周囲にうつるんじゃないのか? 一緒に働いて大丈夫なのか?』と言われたことがありました。(かんせん)という言葉の響きからうつる病気と思ってしまったようでした」
 
皮膚疾患は慢性的な疾患が多く治療が長くなりがちなため、「ゴールが見えない」と悩む患者さんも多くいます。
 
また患者さんの中には、マスコミの報道や周囲の意見によって医師の治療が妨げられることもあったそうです。
 
「患者さんご本人やご家族が、特定の外用薬に対して“作用が強い薬” “だから怖い薬”と思ってしまい、嫌がることがあるのです。症状がとても酷(ひど)い状態でも、頑なに拒否される方もいました。
 
そういう場合は医師と共に丁寧に説明して、納得いただいてから使用することもあります。ただ、お子さんに外用薬を処方することをご両親が強く拒否されるケースもあり、症状が出て困っている患者さんの治療が難航したこともあります」
 
佐藤先生は「医師の診断を受け、看護師と共に適切な処置や治療をすることによって皮膚の状態はよくなる」と訴えます。しかしなかには、皮膚科に通わず保険適用外の高額な治療を受けたり、皮膚科の受診そのものを拒否したりする人もいるそうです。
 
「患者さんを適切な治療につなげるためには、患者さんと看護師の関係性や、医師をはじめとした医療従事者の連携の重要性を感じました」
 
そこで佐藤先生は「皮膚科の看護師の資格制度を設けることができれば、看護師の励みになり、患者さんにもっと貢献できるのではないか」と考え、周囲の医師に働きかけました。
 
そうして「皮膚疾患ケア看護師制度」が発足。現在、皮膚科専門医と患者の協力によって医療水準の向上を図り、国民の健康と福祉に貢献することを目的として活動されています。
 
では、皮膚科の看護師の具体的な役割とはどんなものなのでしょうか?
 
佐藤先生は「看護師は医師と患者さんの架け橋」だと言います。
「以前、看護師を対象に患者さんからよく聞かれる質問を調査したところ、医師が説明した後でも同じようなことを聞かれることが多いことが分かりました。つまり医療従事者が説明しても、必ずしも患者さんやご家族にすべて伝わっている訳ではないのです。
 
こういった状況を改善するために、看護師は治療法の選択をする際には患者さんの立場に合わせて一緒に考えます
 
たとえば仕事が忙しいので塗り薬をできるだけ簡単にしたい方、お金が掛からないほうがいい方もいます。車椅子を使っていて介助が必要な方には、自分でどのくらいのことができるのかを考えなければなりません」
 
治療法を選択した後は、具体的な処置の仕方を患者さんの状況に合わせて指導します。
 
それぞれの患者さんが継続できるような指導を心がけています。時には考え方そのものを変えることも必要です。毎日の保湿を面倒だと感じる方には『保湿は、赤ちゃんから高齢の方まで皆さんに必要なケアなので、歯磨きをするように習慣づけましょう』と説明するなどしています」
 
指導する際には「毎日こうしなければならない」と追い詰めないことがとても大切だそうです。
 
無理なく処置を続けられる方法を考えるようにしています。たとえば外用薬や保湿薬を脱衣所に置いてお風呂上がりに塗れるようにしたり、忙しければ平日は気になる部分だけをケアして休日にゆっくりメンテナンスしたりと、上手にコントロールしながら気長に治療を続けられるようお話しています」
 
皮膚の病気の治療には、患者さん、看護師、医師などの医療従事者が連携する「チーム医療」が大切だと話す佐藤先生。
 
「そのためにも私たち看護師が患者さんと医療従事者を結ぶ役目を果たし、少しでもお力になりたいと強く思っています」


「そのためにも私たち看護師が患者さんと医療従事者を結ぶ役目を果たし、少しでもお力になりたいと強く思っています」

乾癬ってどんな病気? 患者さんには周囲の理解が重要

皮膚科領域で著名な専門医である多田弥生先生は、2021年12月17日にオープンした乾癬の疾患啓発サイト「乾癬ひろば」の総合監修者でもあります。

多田先生は乾癬についてこう解説しました。
 
「乾癬は、表面に鱗屑(りんせつ)というフケのようなものが固着した皮疹が体の色々な部分に出てくる皮膚疾患です。通常の皮膚との境界が比較的はっきりと見えます。
 
強調しておきたいのは『乾癬』という病名ですが、決してうつる皮膚疾患ではないということです。
 
症状が目立つため、患者さんの日常の障害度が非常に高い疾患でもあります。頭皮の鱗屑が服を脱ぐ時に肩のところに落ちて目立ってしまい、気にする患者さんも多くいます」
 
乾癬は伝染性の疾患ではありません。では、どんな原因で発症するのでしょうか?
 
「原因は患者さんによってさまざまで、一つではありません。大きく分けて外的要因、遺伝的要因、内的要因があります。
 
外的要因の一つはストレスです。人間関係などでストレスがあると、約ヶ月後の肌に影響するという報告があります。また食生活も要因の一つと考えられています。コレステロール値を上げるような食生活が増えたことによる影響です。一部ですが、降圧剤痛み止めで発症のきっかけを作ってしまう患者さんも報告されています。
 
遺伝的要因は、日本人の場合は強く認められていませんが、素因を持っている方がいて、そこに他の要因が重なることで、発症リスクが高まるのではないかと考えられています。
 
内的要因としては、肥満糖尿病高脂血症などがあげられます」
 
これらの要因が複合的に免疫の異常をきたし、皮膚や関節の症状が出るのが乾癬だと考えられています。
 
「免疫とは、白血球などの血液の成分がウイルスや細菌が入ってきた時に戦い防御する働きです。しかし何かのきっかけで、免疫が攻撃するべき対象がいない状態なのに臨戦態勢に入ってしまい、皮膚の中で戦いを始めてしまうことがあります。それによって炎症が起きて、乾癬の状態を作ってしまうのです。言い換えれば、乾癬の皮膚はウイルスや細菌に対しては非常に強い皮膚だとも言えますね」
 
乾癬の患者さんの中には、関節でも炎症が起こる方が全体の10〜15%ほどいるとされています。
 
関節炎は指先や腰、首の後ろなど患者さんによって痛くなる部位が異なります。乾癬と関節炎が合併することは皮膚科の医師には知られていますが患者さんは知らないことがあり、乾癬に関係があると思わず整形外科に通う方もいます。その場合は、ぜひ皮膚科の先生に相談してください」
 
さらには、に炎症が起こることも。
 
「日本人の症例は多くはないのですが、目の霞み虫が飛んでいるように見える目の痛みや充血急速な視力の低下などの症状が現れることもあります。もしこういった症状があれば、皮膚科の先生を通じて眼科を紹介してもらい、ブドウ膜炎などの疾患を合併していないか診てもらってください」
近年では、乾癬メタボリックシンドロームに相互関係があるのではないかという研究が進んでいるそうです。
 
「皮膚科を受診した乾癬の患者さんと、それ以外の皮膚疾患の患者さんのメタボリックシンドロームの罹患率を比較すると、乾癬の患者さんの方が高いことが見えてきました。
 
そこで、減量すると乾癬の皮疹がよくなるかという調査をしたところ乾癬の症状がよくなるという報告もされているようです。ただしこの調査は、カロリーを厳しく制限するような非常に専門的な方法で行われました。医師の指導の元で行うことが絶対条件なので、絶対に自己判断でやらず、必ず医師の指導に従いましょう
 
また、多田先生は乾癬の患者さんに注意してほしいこととして、「ケブネル現象」を挙げました。これは皮膚に刺激を受けると、10日から20日後にその部分の症状が悪化してしまう現象のこと。
 
「たとえば頭皮に固着した鱗屑をむしり取ってしまうと、ケブネル現象が起こります。もし洗髪時などにゴシゴシこすってしまったら、続けて医師から処方された薬剤による治療を行うようにしてください
 
また、立ち仕事などで足がむくむと、皮膚が引っ張られて悪化することもあります。立ち仕事の多い方は、休憩時間などに足を高く上げて、むくみを取ってあげるといいでしょう。女性はブラジャーの金具が皮膚に当たったりする部分に乾癬の皮疹がある場合には、締め付けられたりしにくい、刺激の少ない下着に変えてみるといいです」

患者さんの心に影を落とす、QOLの低下と社会的スティグマ

多田先生は、乾癬の患者さんを社会的に追い詰める要因に「社会的スティグマ」の存在を挙げました。

「社会的スティグマとは、特定のカテゴリーの人々にネガティブな評価が加わることによって生じるものです。皮膚病患者さんは病というその人の一部でしかない属性に注目されてしまい、対象になりやすいという問題があります」

周囲の誤解によってネガティブな先入観を抱かれてしまい、患者さんの行動範囲が狭められると、適切な治療を受ける機会を阻害されたり、自己肯定感の低下や社会的な孤立を招いたりすることになります。

「たとえば、皮疹を周りに見られてしまうといけないから、夏場の暑い時期でも長袖長ズボンで肌を隠して、汗だくになってしまう。ゴルフをしに行っても、隣の人に皮膚を見られてしまうのを避けてシャワーを浴びずに帰る。さらに、黒い服を着ると肩の鱗屑が目立ってしまい、周囲に不潔な人と思われたり、不快な思いを与えてしまったりするのではないかと、白い服を選ぶようになる。さらには、そういった気遣いから他の人と接触する機会を減らし、人間関係や社会から遠ざかってしまう、孤立してしまうこともあるのです」

このように、皮膚が綺麗になっても、社会的スティグマが患者さんの心の中に残り長い間苦しめられることでQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を低下させると多田先生は指摘しました。
乾癬によるQOL低下は、糖尿病心筋梗塞鬱病などの疾患と同じくらいの辛さだという結果が出ています。またお子さん向けの調査結果では、喘息やてんかんと同じくらいの辛さということもわかりました。乾癬のお子さんがいる親御さんの場合、睡眠が上手くとれなくなるなどの影響もあります」

社会的スティグマを無くしていくためには、周囲の正しい知識と病気への理解、そして適切な治療を受けることが大切だと多田先生は話します。

「乾癬にはさまざまな治療方法があるので、ご自身の希望はきちんと医師や看護師に伝えてください。たとえば爪や頭皮を綺麗にしたい、あるいは全体を綺麗にしたいなど、症状の気になる部分を言って、治療結果に結び付けてもらいたいと思います。

治療は症状をよくするためのものですが、それによって患者さんに生き生きとした毎日を過ごしていただくことが、非常に重要なのです」

では、患者さんの周囲の人たちはどんなことを心がければいいのでしょうか? 
多田先生はこう強調しました。

「当事者のお話に耳を傾けて、疾患や患者さんの苦しみを正しくご理解いただくことが重要です。もちろん医療関係者は最前線に立って患者さんをサポートしますので、ご家族、親しい方たちのサポートもお願いできればと思います」

患者さんを傷付けない声かけとは?

講演の最後の質疑応答では、参加者から寄せられた質問に多田先生と佐藤先生が答えました。

Q1:看護師として患者さんのことを理解しているつもりでも、無意識のうちに傷付けてしまわないか心配で関わるのを避けてしまいます。どんな言葉がけを意識するといいのでしょうか?
 
佐藤先生:声をかけられるのを待っている患者さんは大勢いるので、遠慮するのはもったいないと思います。
病院でも、看護師から話しかけることでまわりの患者さんに「話しかけてもいいんだ」と思ってもらえることもあります。病気のことではなくても、お天気の話などなんでもいいので、話しかけてみましょう。
 
たまに看護師が患者さんに「何か困ったことないですか?」と声をかけると、「大丈夫です」と返事されて、その後は少し話しかけにくく感じることがあります。その時に大事なのは、「では何か心配なことや聞きたいことがあったら遠慮なくお聞きくださいね」と一言を添えることです。これが大切だと思います。また看護師の方でなくとも、患者さんの周囲の方々も同じようにサポートできると患者さんは喜んでくださると思います。

Q2:周囲の人がスティグマを持たないようにするために、患者自身ができることはなんだと思われますか?
 
多田先生:一つは皮膚疾患を正しく理解してもらうことだと思います。最近はインターネット上でもさまざまな情報を得ることができます。たとえば乾癬であれば乾癬の患者会のホームページ、あるいは製薬企業のウェブサイトに参考になる情報が載っています。
 
そういったところでご自身が知識を得ながら、皮膚疾患について正しく周りに知っていただくと偏見が生じにくいと考えています。
 
佐藤先生::職場で「自分はこういう病気で皮膚科に通院して治療しているんだよ」と話してみるのも大事だと思います。芸能人の方でも乾癬であることを公表している方が増えてきています。
 
私が患者さんから聞いた例では、「暖房が強いと痒みが強くなってしまう」と話すことによって、暖房の設定温度を低めに設定してくれるようになったそうです。職場の方のご理解を得ることで、ほかの皆さんは衣服を着込んで体温調整し、患者さんをサポートしてくれるようになったというのです。このように、自分から少し勇気を出して話してみることも、必要かもしれません。

Q3:主治医の先生に治療に関して聞きたいことがあるのですが、「何度も同じような質問をしてはダメかな」と、なんとなく聞けないことがあります。こういう場合はどうすればいいでしょうか?
 
多田先生ぜひ、何回でも聞いていただければと思います。私たちもできるだけわかりやすくお話したいと思っているのですが、専門用語を使ってしまって患者さんに十分に伝わっていないと反省することもあります。先生に直接聞きにくい時には、看護師さんを介して聞いていただくのも一つの手です。
 
佐藤先生:多田先生のおっしゃる通りだと思います。私たち看護師は診察が終わった後に患者さんに「先生のお話、わかりましたか?」などと、話しかけるようにしています。看護師から医師へお伝えしますので、遠慮なくお話してください

皮膚科の専門医、そして看護師の視点から皮膚の病気について、わかりやすく話を展開してくださった多田先生と佐藤先生。お二人の患者さんに対する思いや、皮膚の病気について正しい知識を知ってほしいという熱意が伝わってくる内容でした。

私たち一人ひとりが考え、行動を少しずつ変えることが、患者さんの笑顔を守ることにつながっていくのかもしれません。

【おらせ】
WEB市民公開講座シリーズ「みんなで考える市民公開講座 皮膚の病気、患者さんの笑顔のために」の第4弾は「皮膚疾患と希少疾患にまつわるスティグマ」をテーマに、医師と患者さんにご登壇いただく予定となっております。開催5月頃を予定しております。

【第4回の講座お申し込みURL】
https://reg31.smp.ne.jp/regist/switch/00051c0007BgBEbq3b/nbiseminar4
 

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