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皮膚の病気の患者さんが受ける誤解【PR】

WEB市民公開講座シリーズレポート PR・by・日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

 

目次

私たちの知らないところでも、皮膚の病気に悩んでいる患者さんは多くいます。例えば「アトピー性皮膚炎」。アトピー性皮膚炎は、一般にも名前が知られている皮膚疾患の一つですが、その症状や悩みまでは理解されているでしょうか ?

なかには、強い痒(かゆ)みから全身をかき、傷ついた皮膚から出血したり、眠れなかったりといった辛(つら)い身体的な症状に悩まされている人もいます。

しかし、皮膚疾患の患者さんが抱える悩みは身体的な症状だけではありません。周囲からの視線や誤解によって苦しむケースも少なくないのです。

なぜ、こうした誤解が存在しているのでしょうか? 今回は、その背景を知り、患者さんの明るい未来を作っていくために開催された市民公開講座の内容から、皮膚疾患にまつわる誤解の存在や、患者さんに向けられるさまざまな視線の存在について紹介します。

皮膚が傷つくことで心も傷つく

講座に登壇した埼玉医科大学皮膚科学教授で医師の常深祐一郎(つねみ・ゆういちろう)先生と、認定NPO法人「日本アレルギー友の会」副理事長の丸山恵理(まるやま・えり)さん
講座に登壇した埼玉医科大学皮膚科学教授で医師の常深祐一郎(つねみ・ゆういちろう)先生と、認定NPO法人「日本アレルギー友の会」副理事長の丸山恵理(まるやま・えり)さん
2021年9月26日に東京虎ノ門グローバルスクエアコンファレンスで開催された全5回のWEB市民公開講座シリーズ「みんなで考える市民公開講座 皮膚の病気、患者さんの笑顔のために」。第1回のテーマは「皮膚の病気の患者さんが受ける“誤解”」です。
 
当日は、埼玉医科大学皮膚科学教授で医師の常深祐一郎先生、患者の立場を代表して認定NPO法人「日本アレルギー友の会」副理事長の丸山恵理さんが登壇しました。
 
丸山さんはアレルギー疾患の患者会「日本アレルギー友の会」の副理事長で、喘息やアトピー性皮膚炎などの患者さんのサポート活動をしています。
 
自身が生後3カ月から現在まで続くアトピー性皮膚炎の患者だという丸山さんは、皮膚の病気の辛さをこう語ります。
 
「身体的に最も辛いのは強い痒みです。表面をかくだけでは治まらず、皮膚の奥から湧き出るような強い痒みが続き、夜も眠れないことが多いのです。半分眠りながらかいてしまい、朝起きると出血していることもよくあります。乾燥した皮膚が全身からボロボロ剥(む)けてフケのように落ちるため、落ちた皮膚が目立つ黒い服を着ることができません。
 
私の場合は、17歳ごろに顔や頭皮からも血や浸出液が出て体を動かすだけで痛みが出たり赤く黒く腫れあがったりする状態になり、かきむしってボロボロになった自分の皮膚を見るだけで悲しくなって、こんなに辛い毎日なら死にたいと泣く日々でした」
 
現在はステロイド外用薬などを使って、日常生活に支障がない程度にコントロールされていると言います。丸山さんは、「皮膚が傷つくことで心も傷ついています」と精神面の辛さについて語りました。
 
「日本アレルギー友の会の機関紙『あおぞら』でアンケートを取ったところ、患者さんが辛いこととして一番多く挙がったのが『他人の視線』でした。見た目が気になる10代から20代に悪化すると、特に辛い思いをします。他人の視線が気になり、そのために自分に自信が持てなくなる方もいます」
 
丸山さんも、長年にわたって「皮膚症状がある私は何もできないダメな人間なんだ」という劣等感を抱えていました。では、どのようにしてその気持ちと向き合えばいいのでしょうか。
 
「私も少し症状が良くなってからわかったのですが、自分が思っているほど周りの人は他人の皮膚を見ていません。また、どんなに皮膚の状態が悪化していても、明るい人やいろいろなことにチャレンジしている人はとても素敵に思えます。内面を磨くことで自信がついて他人の視線が気にならなくなってくると思います」
 
また、「毎日薬を塗らなければ生きていけない」と思うより「毎日薬を塗るだけで普通に生活ができる」と少しずつでも前向きな考え方に変えていくことが大切だと話しました。
 
そして最も大切なのは、患者さん自身が病気の正しい知識を持ってセルフコントロールすることだと言います。
 
「現在テレビやネットでさまざまな情報が錯綜していますが、まずは医療機関を受診することが大切です。症状のある部位を医師にしっかりと見せて、症状を把握してもらってください。処方薬を塗る箇所、回数、量、期間を確認し、適切な使用をすることで早く良くなる可能性があると思います」
 
医師が忙しそうにしていると質問を遠慮してしまう患者さんもいますが、「質問事項をあらかじめ3つほどにメモにまとめて診察の際に渡す」など、医師とのコミュニケーションを工夫することも大切だと話す丸山さん。
 
最後に丸山さんから患者さんへメッセージが送られました。
 
「あなた自身が変わることで新しい世界が見えるかもしれません。人と比べるのではなく、あなたらしい生き方をするために一歩前に踏み出してみましょう。皮膚疾患があっても充実した人生にしていってくださいね」
 

病気への誤解はなぜ生じるのか

皮膚の病気の患者さんに限らず、さまざまな疾患、性別、職業など、その人の属性に対するネガティブな誤解に基づく認識は、社会学や心理学の用語で「スティグマ」と呼ばれます。
 
常深先生はスティグマが生まれる仕組みや、それが皮膚の病気の患者さんの身体的、精神的な健康を阻害することについて解説しました。

「スティグマには複数の種類があります。1つは周囲の人がある人の属性の一部分だけを見て、誤解や偏見に基づいて認識する『公的スティグマ』。

例えば最近では、医療関係者の子どもに対して『親が医者だからその子どもはコロナに罹(かか)っているかもしれない』『看護師の子どもは保育園に来ないでほしい』と言われたという事例がニュースになりました。

また、肥満や生活習慣病の方などは『努力が足りないから克服できないんだ』と判断され、スティグマの対象になりやすいと言われます。実際には生まれ持った身体的な制限などもありますから、努力不足でそうなってしまったとは限らないわけです。

スティグマという言葉にはあまりなじみがないかと思いますが、こういったことは皮膚の病気を含め、世の中で多々起きています。みなさんも身近で見聞きしたことがあるのではないでしょうか」

またスティグマには段階があり、根拠のないきっかけから誤解に基づいた行動に至ってしまうと説明する常深さん。

「例えば『きっかけ』として、ある人がAさんの皮膚に疾患があるのを見たとします。その次が『ステレオタイプ』で、乾癬(かんせん)という病気らしい、乾癬は感染する病気なのではないかという、誤った認識に基づいて判断します。そして『偏見』の段階では、『Aさんは感染する皮膚病だから近づかないようにしよう』という根拠のないレッテルが貼られます。最終的に、本人や周囲にそういった発言をするなどの差別的な行動に至ってしまいます。

きっかけはほんの些細なものですが、最後の差別的な行動は決して許容されるものではありません」

このような「公的スティグマ」の他に、「自己スティグマ」があります。これは、例えば皮膚の病気の患者さんが「周りの人に嫌がられるかもしれないから、できるだけ皮膚を出したくない」「みんなと一緒に出かけるのはやめよう」と自分自身に対して誤解に基づく認識を持ってしまうことです。

「自己スティグマで特に問題なのは、『今の状況を引き起こしたのは自分の責任だ』と思いこんで他者の手を借りることを避けるようになり、医療を受けることも控えてしまうことです。そのため病気が長引き、さらに自分を責めるという悪循環に陥ってしまいます」

差別を避けるために外出を控えてしまうことで運動する機会が減り、身体的な健康を害してしまったり、社会的な孤立によって、場合によってはアルコールやタバコ、薬物に走ってしまうことで、さらに健康を害してしまったりすることも。

「よく『治らない病気だと言われた』という患者さんがいますが、最近の医療の技術は非常に進歩していますから、数年前にそう言われたとしても、今や治る病気かもしれない。そういう病気はいくらでもあります。医療機関を受診して、新しい知識を得ていただきたいと思います」

常深先生は「スティグマはまったく根拠のないところからスタートしている」と指摘します。

「スティグマはみなさんの病気への認識さえ変われば解決できる問題です。これまでの慣習や噂に対する認識を一度捨てて、考え直してみましょう。まだ世の中に正確な情報が少ないため、我々もしっかり情報発信していかなければならないと思っています」

常深先生は、スティグマのない社会を実現するための重要なポイントを2つ挙げました。

「最も大切なのは正しい知識を持つことです。正しい情報は専門家に聞いていただくのが一番です。

もう1つ重要なのは患者さんの周囲の方が、病気はその人のごく一部の性質に過ぎないことを理解し普通に接することです。何か困っていることがあれば耳を傾け、患者さんが正しい情報を得て治療を受けられるようサポートしていただきたいと思います」

私たちができること

講座の最後にはオンラインの受講者から、病気に関する悩みやスティグマをなくすための取り組みについて質問が寄せられました。
 
Q:皮膚の症状がひどいときは他人の視線がいつも以上に気になり、外に出かけることに消極的になってしまいます。何かアドバイスがあれば教えてください。
 
常深先生:「症状の程度にもよりますが、基本的には遠慮せずご自身のやりたいことをやって生活をしていただければと思います。自己スティグマに陥らないためにも大事なことです。そしてきちんと治療を受けていただければ、普通の社会生活ができるようになると思います」
丸山さん:「皮膚を出したくないという気持ちはとてもよくわかります。でも隠すよりも笑顔で対応したほうが、その方自身の人柄が見えてくると思うのです。人からどう見られるかよりも、ご自分が何をしたいのかという前向きな生き方のほうが大事だと思います」
 
Q:病気に関して正しい情報を見極めるためにはどうすればいいでしょうか?またそれを他の人にわかってもらうためにどうしたらいいでしょうか?
 
常深先生:「例えば日本皮膚科学会のホームページなどで、まずは正確な情報を押さえてください。その上でいくつかのウェブサイトを見れば、間違った情報がすぐにわかると思います。今の医療の進歩はものすごく速いですから、最終的には治療することも兼ねて専門家に話を聞くとよいと思います」
Q:丸山さんがご自身の疾患と付き合っていく中、周囲の対応でうれしかったことがあれば教えてください。
 
丸山さん:「普通に接してくれることです。症状を見ると驚いてしまう方も多いのですが、そこをなんとか抑えていただいて、丸山というひとりの人間として付き合っていただくのが一番うれしいです」
 
Q:我々患者が誤解を持たれないようにするためには、周りに対してどのように行動していけばいいのでしょう?
 
常深先生:「1つは隠したり引きこもったりせず、なるべく普通に生活をして周囲とコミュニケーションを取ることだと思います。2つ目は、正確な情報を得て治療を受けて症状をよくすること。この2つが大切だと思います」
 
丸山さん:「私自身に関心を持って病気について質問してくれる人には、私は『子どもの頃からずっとアトピーなんだよ』と気軽に答えています。アトピーをはじめ、皮膚疾患があっても普通に生活できるという理解を深めていただけるとありがたいと思います」
 
Q:新型コロナウィルスの感染拡大による影響について常深先生のご講演の中で触れられていましたが、世の中の病気に対して我々はどのような意識で接していくべきでしょうか?
 
常深先生:「新型コロナに限らず、病気はご本人の責任ではありません。罹った人に責任を求めたり差別したりするのではなく、誰がいつ罹ってもおかしくない、罹った人をみんなでサポートしようという考え方がとても大事です。現在は大変な状況ですが、逆に一つの機会と捉えて、皆で積極的に意識を変えていただければと思います」

 常深先生、丸山さんの講演は、受講者にとって深く考える機会となったのではないでしょうか。病気に対する誤解が生まれる背景、周囲は患者さんにどう寄り添うべきか、そして患者さん自身が疾患とどう付き合っていくべきか――。お二人の真摯な言葉が印象的でした。
 
 

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