MENU CLOSE

話題

被災者の声を聞くことが「災害ボランティア」の出発点

全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)がつなぐ支援の輪

PR by 東京都

全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 代表理事 栗田暢之さん
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 代表理事 栗田暢之さん

目次

いつ、どこで起こるか分からない自然災害。東日本大震災から10年が経った今、改めて考えておきたいのが、災害ボランティアのあり方です。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)代表理事の栗田暢之さんは、1995年の阪神・淡路大震災以来、災害ボランティアの活動に取り組んできました。栗田さんに、災害ボランティアの活動内容や、経験の中で見えてきた課題について伺いました。

1人1人のボランティアに役割がある

宮城県七ケ浜町でおこなった足湯で、被災者の話を聞くボランティア(RSY提供)
宮城県七ケ浜町でおこなった足湯で、被災者の話を聞くボランティア(RSY提供)
1995年の阪神・淡路大震災では1年間で約137万人が被災地に駆けつけたとされ、この年は「ボランティア元年」と呼ばれています。いま災害ボランティアは、被災地の復旧・復興に欠かせない存在となっています。
当時、名古屋市のとある福祉系大学の職員だった栗田さんの背中を押したのは、学生たちの思いでした。
 
「学生たちが、『自分たちにできることがあるのでは』と大学の窓口に相談に来たんです。その声をきっかけに大阪に支援拠点を設けるなど、大学をあげて取り組むことになりました」
 
被災地での炊き出しや、障害者へのサポートなど、活動内容は多岐にわたり、約2カ月間でのべ1500人の学生が参加。栗田さんは活動を通して、学生たちの姿から様々なことを学んだそうです。
 
「最初から最後まで活動した学生のなかに、車椅子の学生がいました。当初、『自分が行っても邪魔になるのでは』と話していましたが、活動拠点の事務局の要として、被災地との連絡役を務め、学生たちのケアも担ってくれました。彼が毎日つくった活動レポートを大学で見て、後から参加してくれた学生もたくさんいました」
 
みんなの役割が被災地の支援につながっていると考えると、1人1人が大事な役割を担っている自覚を持って活動に臨める、と栗田さん。また、様々な人が活動に参加する意義を次のように話します。
 
「色々な立場の人が参加することは、より困難な状態に追い込まれている方への支援につながります。子どもは大丈夫だろうか。障害のある人は困っていないか。こうした気づきがたくさん生まれるには、多様な視点が重要です」
 

支援を豊かにする、ボランティアたちの「創造性」

駄菓子の販売や交流スペースのある「きずなハウス」で遊ぶ子どもたち(RSY提供)
駄菓子の販売や交流スペースのある「きずなハウス」で遊ぶ子どもたち(RSY提供)
栗田さんは災害ボランティアの活動には「創造性」が大切だと考えています。
 
「災害の現場はどれ一つとして同じではありません。被災の状況も土地柄も様々ですから、マニュアルはあってないようなもの。正解は分からないけれどまずはやってみよう、という創造性が求められる場面も多いです。たとえば、自衛隊による仮設の風呂の浴槽がとても深いと知った学生が『これでは高齢者や障害者は大変だろう』と、福祉用の浴槽を借りてきて専用の風呂を設置しました。独自の発想で新しい支援を組み立てたのです。豊かな創造性から学んだことは多いです」
 
また、炊き出しでも、3日連続で豚汁だったと申し訳なさそうに言う被災者の声を聞いた学生が、次の炊き出しでは事前に聞き取りを行い、圧倒的に希望の多かった焼肉を提供したことも。被災後ようやく再開した店で肉や野菜を買い、焼肉の炊き出しを決行。学生たちの工夫が実り、大盛況だったといいます。
 
「学生がもたもた焼いていると、おばちゃんが『私が代わってあげるよ』と言って焼いてくれたり、歌の披露や自己紹介、自身の被災体験を語る人も出てきたりしました。最終的に涙あり、笑いありの大バーベキューになったんです。そのときに気づいたんですよ。炊き出しは被災者の生の声を聞く機会だったのだ、こうした場づくりも、ボランティアの重要な役割なのだと」
 
これらの経験は、その後の様々な被災地での活動に活かされています。栗田さんが代表を務める認定NPO法人「レスキューストックヤード(RSY)」(名古屋市)は、東日本大震災で被災者の声を聞く場づくりとして足湯の活動に力を入れ、全国の仲間と共にのべ16,000人もの足を温めました。
 
「足湯をすると、こちらから聞かなくてもだんだん話してくれるんです。ポツポツと話す人もいれば、堰を切ったように話す人もいます。『子どもが屋根の上に取り残されて流されていったんです。助けて助けてってこっちを見てるんだけれど、何もしてあげることができなかった』とか、まるで自分を落ち着かせるかのように話される。被災者の生の声を聞いたときに、では自分たちに何ができるのだろうと考えることが、災害ボランティアの出発点だと考えています」
 
宮城県七ケ浜町での支援で、こうした被災者の声から生まれたのが、地域の憩いの場所「きずなハウス」です。移動学び舎バスの「きずな号」は、「仮設住宅が狭くて友達を家に呼べない」という子どもたちが落ち着いて勉強できる場所となりました。

横につながり、支援の漏れ・ムラをふせぐ

2018年の西日本豪雨では、広島県で開かれた情報共有会議に多くの支援団体が参加した(JVOAD提供)
2018年の西日本豪雨では、広島県で開かれた情報共有会議に多くの支援団体が参加した(JVOAD提供)
混乱の中で多くの団体、人が活動する災害ボランティア。現地に駆けつけてくれたボランティアたちを受け入れ、調整する機能を担うのが災害ボランティアセンターです。
 
「近年は社会福祉協議会による災害ボランティアセンターの仕組みが整い、一般のボランティアによるがれきの撤去や、泥のかきだし作業などは不可欠な支援となっています。他方、災害ボランティア=泥かき、というイメージを持つ方が多いかもしれませんが、専門的なスキルを持ち、重機によるがれき撤去や、瓦が飛ばされた屋根にのぼってブルーシートをかける活動、また子どもやマイノリティーの支援に取り組むNPOも大きな力となっています。被災者の多様なニーズに自分の力を活かせる支援を探って欲しいと思います」
 
現地で活動する以外にも、義援金や支援金で被災者やNPOなどの活動を支えることもできます。また、被災直後だけでなく、長期的な支援も求められています。
 
一方、これまで、被災地全体の支援状況を俯瞰し、活動を調整する存在がいないという課題があったといいます。
 
「東日本大震災では支援団体同士の連携が十分ではなく、互いの過不足を補い合うこともあまりできませんでした。この課題から、JVOADでは行政、社協、NPO・企業等民間支援セクターとのネットワーク構築を推進し、情報共有することで必要な支援が漏れ・ムラなく届くコーディネーションの仕組みづくりをめざしています。1人のボランティア、1つの団体ができる範囲には限りがありますが、各団体が連携することで今までできなかった支援もできます」
 

「お互いさま」の気持ちで助け合える社会に… 長年災害ボランティアの活動をしてきた栗田さんの思い

全文を読む

東京ボランティアポータルにはボランティア情報がいっぱい

 
都民のボランティア活動を応援するための多様な情報を一覧できるボランティア情報の総合ポータルサイト。著名人のロングインタビューや、ボランティアにつながるリンク集など、様々な切り口からボランティアの魅力や情報を紹介しています。以下のバナーをクリックして是非のぞいてみて下さい。


 
CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます