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俵さんご自身が子どもの頃に好きだった絵本は?
『三びきのやぎのがらがらどん』(絵:マーシャ・ブラウン、訳:瀬田貞二、福音館書店)は、まだ字が読めないうちから一字一句を覚えていましたね。自分の本を買ってもらえたのがすごくうれしくて。今にして思えば、一字一句を覚えるまで読んでくれた親の方が、私よりも偉かったんだなと感じています。それぐらい、一冊の本を大事に読んでいました。
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親として読み聞かせる立場になってから、どんな絵本との思い出がありますか?
久しぶりに絵本と出会い直してみて、素晴らしいツールだなと思いましたね。絵本を読むことは、ただの読書ではなくて、子どもとのスキンシップの時間であり、コミュニケーションをスムーズにさせてくれます。
『花さき山』(作:斎藤隆介、絵:滝平二郎、岩崎書店)という切り絵の絵本は、いいことをすると山に一つ花が咲くというお話です。その絵本を読んで、息子に「あなたの花は咲いている?」と聞くと、たとえば「白い花が咲いている」と答えるんです。どうしてかと尋ねると、「幼稚園で牛乳をこぼしたのを拭くのを手伝ってあげたから、白い花が咲いている」って。子どもに「今日は幼稚園で何かあった?」と聞いても、「普通」とか「楽しかった」とかいう答えしか返ってこないんだけど、「何色の花が咲いている?」と言えば、すごく自然にいろんな話をしてくれて。私は『花さき山』のおかげで、自分が見ていない時の子どもの様子を知ることができました。
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親子のコミュニケーションをつなぐツールだと言えますね。
子どものペースに合わせて親が読んであげたり、好きなところは何回も読んだり、脱線したり、わからないところをもう1回詳しく話したり。肉声で語りかけるということ自体が、スキンシップの一環だと感じました。読み聞かせの上手下手はあまり関係なくて、一緒に笑ったり一緒にハラハラしたりすることが、子どもはうれしいと思うんですよね。