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エンタメ

生き方に迷う全ての大人たちへ―。映画『泣く子はいねぇが』特別対談

PR byスターサンズ

(左)監督:佐藤快磨 (右)企画:是枝裕和
(左)監督:佐藤快磨 (右)企画:是枝裕和

目次

是枝裕和監督がほれこんだ新たな才能。佐藤快磨監督 劇場デビュー作品

 親になることからも、大人になることからも逃げてしまった主人公が、過去の過ちと向き合い、不器用ながら大人へ成長する姿を描く、青春グラフィティー。秋田県・男鹿半島の伝統文化「ナマハゲ」から、“父親としての責任”、“人としての道徳”というテーマで、新進気鋭の佐藤快磨監督が、約5年をかけてオリジナル脚本を書き上げた。本作の脚本に魅了された是枝裕和は、新しい才能を全力で応援しようと自ら企画として参画。佐藤監督鮮烈の劇場デビュー作品の公開にあたり、二人の特別対談が実現した。
 
 
監督佐藤快磨
さとう・たくま/1989年生まれ、秋田県出身。2012年よりニューシネマワークショップ映画クリエイターコースを受講。初の長編監督作品『ガンバレとかうるせぇ』(14)が、ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2014で映画ファン賞と観客賞を受賞、第19回釜山国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の様々な映画祭で高く評価される。文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015」にニューシネマワークショップより推薦され、『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(16)を監督。その後、『歩けない僕らは』(19)などを制作している。
企画是枝裕和
これえだ・ひろかず/1962年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。2014年に独立し制作者集団「分福」を立ち上げる。主な監督作品は、『誰も知らない』(04)、『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)、『三度目の殺人』(17)、『真実』(19)など。世界の映画祭で数々の賞を受賞し、『万引き家族』(18)では、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドール、第44回セザール賞外国映画賞を受賞し、第91回アカデミー賞®️外国語映画賞にノミネートされた。

『泣く子はいねぇが』の脚本を読んだとき、圧倒的にラストシーンが見事だった

―佐藤監督の魅力とはどんなところでしょうか。

是枝:佐藤くんの脚本は、まず会話がいい。この年代の会話というか…、要するに僕には書けない会話だった。そして、最初読んだとき、圧倒的にラストシーンが見事だったから、この着地があれば、時間をかけて直していけば大丈夫だと思っていた。こういう終わりのキレのよさって、感動だよね。非常に普遍性を持った着地点だった。彼の短編を見たときにも感じていたのは、いい意味で自主映画っぽくなくて、エンターテイメントがその中に内包されている。そういう広さを感じられる映画を撮れるのはある種の才能です。

佐藤:僕は、いわゆるシネフィルじゃなくて、そんなに映画も観てこなかった。おそらく、自分が面白いと感じる視点から描いてしまっているだけなんだと思います。

是枝:たくさん観ていれば、いい映画が撮れるというわけでもない。もちろん、観た方が良い部分もあるけれど、彼が持っている“ある種”のものが大事。生まれて30年間に培ってきたものが、脚本の魅力になっている。
 

初めて誰かの幸せを願う瞬間を表現したかった

―今回は、父親になりきれない男が主人公ですが、どんな思いがあったのでしょうか。

佐藤:かっこいい父親像を描きたいのではなく、僕自身も父親になってもいい歳ではあるけれど、そんなビジョンは今のところ想像もできない。そんな現実の僕も主人公に投影しつつ、新しい視点の映画を作ってみたいと思いました。自分のことで精一杯の情けない主人公が、初めて誰かの幸せを願うようになる瞬間を表現したかった。

是枝:父親ってテーマとして難しい。母親の方が感情的には具体的だし。父親はどうしても観念的なものになる。だからそれをドラマの中でやるには、意外と難しい。たぶん僕が作ってきたものもそうですし、佐藤くんもそうだと思うけど、いわゆる父親像が不在の話ですよ。だから自分の中で明快な父親像を持っていない青年が、父親になって戸惑っちゃっている感じがすごくリアルだと脚本を読んでいても思いましたし、映像では仲野太賀さんがそれを誠実に演じてくれていました。
 

男の父性の物語には、その脇にいる女性がちゃんと描けているかどうかが大事

―余 貴美子さん演じるたすくの母と、吉岡里帆さん演じる元妻のことねがパチンコ屋で出会うシーンも印象的でした。

是枝:意味深だよね。完成したものを観ると、佐藤くんが仲野さんにシンパシーを感じながら、父親になりきれない男を描くというのはもちろんよくできているし、脚本でも描かれていたものだからそんなに驚かなかったの、実は。だけど、たすくの母とことねのシーンの描写が、思っていたよりもはるかによかった。余さんと吉岡さんが、とてもすばらしかったと思う。こういう男の父性の物語には、その脇にいる女性がちゃんと描けているかどうかが大事でしょうね。

佐藤:映画を作る前に、「男は身体的な変化がないまま父になるけれども、女性は妊娠と出産という変化を経て母になる」みたいなことを言ったとき、女性スタッフが「妊娠・出産したからといって、母になっているわけではないよ」と。その言葉がヒントになりました。ことねも「母になるとはどういうことなのだろう」と、本当はたすくと同じような悩みを持っていたはず。結局は、そこに向き合っているかどうかの覚悟の問題だった。吉岡さんもそこを考えてくださったからこそ、たすくとことねを対比できたと思っています。

脚本を超え、素晴らしい着地点にたどり着いた

―是枝さんは完成したものをご覧になって、率直な感想はいかがでしたか。

是枝:脚本を最初にんだときの感動?感動でいいのかな?(笑)。それをはるかに超えるものになっていました。脚本を読んでいいラストだと思ったけれど、実際に仲野さんと吉岡さんの演じたものを観ると、それを超えていた。すばらしい着地点にたどり着きましたね。
 
―佐藤監督、最後にメッセージをお願いします。

佐藤:本当に幸せなデビュー作を撮らせていただいたと思います。是枝監督に背中を押していただいたこともそうですが、撮影現場もこんな幸せな環境があるのかと思うほど、キャストの皆さんもすばらしかったですし、スタッフさんも準備から仕上げまでずっと熱心に関わってくださいました。そして男鹿の方々にも感謝しています。自分でも納得できる映画が完成しました。ぜひ、一人でも多くの人に劇場で大きいスクリーンで観ていただけたら幸せです。
 
A FILM BY SATO TAKUMA × DEVELOPMENT KORE-EDA HIROKAZU
SPECIAL DIALOGUE
 
STORY
たすく(仲野太賀)は娘が生まれ喜びの中にいたが、妻・ことね(吉岡里帆)は、父親になる覚悟が見えない彼に苛立っていた。大晦日の夜、地元の伝統行事「男鹿のナマハゲ」に参加し泥酔したたすくは「ナマハゲ」の面をつけたまま全裸で街を走り、その姿がテレビで全国放送されてしまう。ことねには愛想をつかされ、逃げるように上京して2年、そこにもたすくの居場所はなく、地元に戻る決意をするが、現実はそう容易いものではなく…。果たしてたすくは、自分の“生きる道”を見つけることができるのか?
 
第68回サン・セバスティアン国際映画祭 最優秀撮影賞 受賞 月永雄太
第56回シカゴ国際映画祭 ニュー・ディレクターズ・コンペティション部門 正式出品
第21回東京フィルメックス コンペティション部門 正式出品
第40回ハワイ国際映画祭 スポットライト・オン・ジャパン部門 正式出品

 
11月20日(金)全国ロードショー
仲野太賀、吉岡里帆、寛 一 郎、山中 崇、余 貴美子、柳葉敏郎 
監督・脚本・編集:佐藤快磨 
主題歌:折坂悠太「春」(Less+ Project.) 
企画:是枝裕和
nakukohainega.com(ソーシャルマーク)、
配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ
©2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
 
■映画「泣く子はいねぇが」の公開情報はこちら
https://nakukohainega.com/theater/
 
■映画「泣く子はいねぇが」公式サイトはこちら
https://nakukohainega.com/
 
■映画「泣く子はいねぇが」公式Twitterはこちら
@nakukohainega
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