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エンタメ

『ホテルローヤル』2時間3,800円の非日常空間で見つけたもの

累計100万部越え、直木賞受賞作が待望の映画化

PR by ファントム・フィルム

目次

 北国の広大な湿原を望む高台にひっそりとたたずむラブホテル。そこで繰り広げられるさまざまな人間模様。人間の深みを浮き彫りにする直木賞作家・桜木紫乃さん原作『ホテルローヤル』が映画化された。主役を演じた波瑠さんと、原作者の桜木紫乃さんに、映画の魅力を聞いた。

自分を肯定できたとき 新たな一歩を踏み出せる

俳優
波瑠さん
はる/1991年、東京生まれ。2006年にドラマ「対岸の彼女」(WOWOW)でデビュー。15年にNHK連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインを務めたほか、数々の作品で主役を演じる。主な映画出演作に『弥生、三月-君を愛した30年-』などがある。

閉じられた生活空間

受け身でやり過ごす日々

 人それぞれの日常があるけれど、私が演じた雅代はちょっと特別かもしれません。子どもの頃から親が経営するラブホテルに住み、さまざまな大人が出入りするのを見てきました。ラブホテルに住むなんて普通ではちょっと考えられないけれど、そこで生まれ育った雅代にとってはそれが当たり前。私も10代前半で芸能の世界に入り、同級生とはまったく違う学生時代を過ごしてきたから、非日常と日常が隣り合わせの雅代の境遇が少しはわかる気がします。

 とはいえ、雅代が自分の置かれた環境に満足していたかというと、そんなことは全然なかったと思います。地元である北海道・釧路という広大な土地が逆に閉塞感をもたらし、今の生活が窮屈でしかないわけです。家族同然の従業員といるときも、みんなの輪の中に入っているのか、距離を置いているのか分からない空気を漂わせている。全編を通して雅代がほとんど受け身なので、演じながらこれでいいのかという不安は常にありました。何もしないでどこまで役を表現できるかという意味ではおもしろい挑戦でしたが、完成した作品を見るまではちょっと落ち着かなかったですね。
 

いますぐに答えを

見つけなくてもいい

ただ、雅代はきっとこう考えていたはずだと、決めつけるのも違う気がして。誰かが言っていたあの言葉が、いまなら理解できるってことあるじゃないですか。雅代の気持ちも、もしかしたら自分がこれから10年、20年と年を重ねるなかで見つかるものなのかもしれない。そういう意味で、見る時々で受け止め方は変わるだろうし、長く咀嚼できる作品だと思います。

 悩みながら大人になって、大人になってもまだ自分の居場所を探してる。そのときよりどころになるのは、自分はここにいて良かったのだと納得できること、自分で自分を肯定できることだと思います。さまざまな人間模様を見てきたけれど、常に傍観者だった雅代がラストで見つけたものから、前向なパワーを感じてもらえたらと思います。(談)

〝前向きな逃避〟はときに人を強くしてくれる

作家
桜木紫乃さん
さくらぎ・しの/1965年、北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。13年に『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。社会の隅で生きる人々に光をあて、人間の深みを描き続けている

ラブホテルを経営する

親のもとで育って

 
 映画化の話をいただいたとき、監督には「どうぞ自由に作ってください」とお伝えしていたのですが、完成した作品を観て見事にやられました。私が小説で描いていたのは、ホテルローヤルを訪れる人や関係者たち、つまり架空の人だったのですが、映画ではすっかり私自身が裸にされてしまった。気づかなかった自分の一面を見透かされたようで、悔しかったですね。

 私自身、ラブホテルを経営する両親のもとで育ち、「ラブホの娘」とからかわれたこともあります。父が家に帰ってこなかったり、ギャンブルで家の上がりを持っていってしまうことに苛立ちを感じたりはしましたが、文句を言ったことはありませんでした。なんとしても借金を返さなければならなかったので、自分を犠牲にしているとも思っていなかった。借金を生んだ建物に、若くして使われている人間だったんです。

だから、主人公の雅代を演じた波瑠さんにハッとさせられました。文句も言わずにホテルの部屋を掃除していた私は、波瑠さんが演じる雅代のように無表情だったろうと思います。父親を演じた安田顕さんが、ホテルを取り囲むマスコミに怒鳴るシーンも忘れられません。言葉にならない怒鳴り方、腹の底からの怒り。父親がああやって怒鳴ることを思い出しました。
 

大切な人との関係を

深めるきっかけに

多かれ少なかれ、人は迷いやしがらみを抱えて生きていると思います。だけど、そこから逃げるのは悪いことじゃない。すべてを捨てる決意をして鮮やかに逃げるのは、前向きであることと同じなんです。私は、雅代を見ていて「ああ、よかったね」と思えた瞬間、涙が出ました。

 わからないまま進むのと、理解して進むのでは全然違います。前向きな逃避は、人を強くしてくれる。雅代の姿に励まされる人はきっと多いと思うし、何かしらの感情のスイッチを押され、大切な人との関係を考え直す、あるいはもっと大切にするきっかけにしてもらえたらと思います。(談)
 

身も心もさらけ出した

男と女の現実(リアル)が紡がれる場所─

11/13(金)公開『ホテルローヤル』

過去と現代が交錯する、それぞれの人間ドラマ



■STORY
秘密を抱えた人々が「非日常」を求めて訪れるホテルローヤル。そのホテルローヤルとともに人生を歩んできた雅代が見た、切ない人間模様と人生の哀歓の数々──。経営者一家、従業員、客たちの日常の一コマを、過去と現代を交錯させながら大胆に描き出す。雅代を演じるのは、りんとしたたたずまいで作品に一筋の光を与える波瑠。共演には松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、原扶貴子、夏川結衣ら実力派が名を連ねる。累計発行部数100万部を超えた直木賞受賞作『ホテルローヤル』を「全裸監督」の武正晴監督が独自の視点で映像化した。
波瑠
松山ケンイチ
余 貴美子 原 扶貴子 伊藤沙莉 岡山天音 
夏川結衣/ 安田 顕

原作:桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社文庫刊)
監督:武 正晴 脚本:清水友佳子
音楽:富貴晴美 主題歌:Leola「白いページの中に」(Sony Music Labels Inc.)
配給・宣伝:ファントム・フィルム
©桜木紫乃/集英社 ©2020 映画「ホテルローヤル」製作委員会 (日本/カラー/5.1ch/シネスコ/104分)
札幌フィルムコミッション支援作品
 
■映画「ホテルローヤル」の公開情報はこちら
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=hotelroyal
 
■映画「ホテルローヤル」公式サイトはこちら
https://www.phantom-film.com/hotelroyal/
 
■映画「ホテルローヤル」公式Twitterはこちら
@hotelroyalmovie
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