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この秋の話題作『楽園』特別対談/綾野剛・杉咲花が映画の魅力を語る
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『悪人』(2010)、『怒り』(16)と映像化が続くベストセラー作家・吉田修一の新たな最高傑作「犯罪小説集」が、『64 -ロクヨン-』(16)を大ヒットさせた瀬々敬久監督により映画化。容疑者の青年、傷ついた少女、追い込まれる男―。3人の運命が、二つの事件を軸に絡みあっていく衝撃のサスペンス大作!主演の綾野剛、そして杉咲花が作品の魅力を語った。
―12年前、地方の小さな集落で起きた少女失踪事件。その犯人と噂される豪士(綾野剛)と、消えた少女の親友だった紡(杉咲花)が出会うことから物語は動き出します。事件の真相は、真犯人は誰かという謎を追うサスペンスであると同時に、登場人物の繊細な心の揺れを丁寧に描く人間ドラマとしても見応えがあります。難しい役をどのように演じましたか。
綾野 豪士は外国に生まれ日本に渡ってきた移民で、もともと地域に受け入れられていたとは言い難い。むしろ集落の人にとっては、ずっと「見えない」存在だったと思います。母親さえも異国で生きることに必死で、本当の意味では息子を見ていない。でも紡だけが、彼を見つめてくれた。彼女に会って初めて豪士は、自分が存在していることを実感できたんだと思います。
杉咲 紡についての最初の印象は、いろんなことを「諦めている」子。親友がいなくなった責任をずっと背負っていて、自分だけが幸せになってはいけないという思いが強い。だから、ただ今日が終わって明日が来て……ということのほかには何も期待していないように感じました。
綾野 二人とも、自分が暮らすコミュニティーに居場所がない点で共通している。どこか似た部分を持つ人たちが引き付け合うというのは、吉田修一さんの作品に特徴的な構図かもしれません。
―二人の関係をどう捉えていましたか。
杉咲 紡は豪士に対して、どこか母性的なものを感じていた気がします。「大丈夫じゃない」人が目の前にいる。その人を包み込んであげるほどの余裕は自分にもないけれど、そばにいて一緒に立っていたい、というような。二人の出会いが、彼女が周囲に少しずつ目と心を開いていくきっかけを作ったんだと思います。
綾野 杉咲さんとは一度、彼らの関係はlikeなのかloveなのか、というような話をしたことがあります。はっきりした答えは出なかったけど、もしも豪士が一緒にどこかに行こうと言っていたら、彼女はどこまでもついてきてくれた気がするんです。少なくとも彼らは必死でどこかにたどり着こうとしたし、全然違う場所に行ける可能性もあった。作品を客観的に見られるようになった今では、ここに描かれた二人の関係はとても強烈なものだと感じます。
―俳優としてのお互いをどうご覧になりますか。
杉咲 綾野さんは自分を厳しく追い込んで、現場でも一人で役と向き合う時間が長い方なんだろうというイメージを勝手に持っていたんです。だからあまりお話もできないと思っていたら、クランクインの日にお会いしたとき「こっちへおいでよ」とそばに呼んでくださって。いろんなお話をさせてもらって、すごくうれしかったです。
綾野 なんだか彼女がすごく所在なげだったもので(笑)。誰にでもそんなふうに声をかけるわけではないですが、俳優さん一人ひとりが芝居しやすい環境を僕はなるべく作りたいんです。この現場でいえば、むしろ僕も杉咲さんに助けられた部分が大きいと思っています。彼女の目線と言葉に素直に反応しているだけで僕も豪士という役を生きられたし、紡を演じたのが杉咲花で本当によかったと思っています。
―彼らにとっての『楽園』とは何だったのだと思いますか。
杉咲 演じる間それをずっと考えていて思ったのは、少なくとも紡は楽園をどこかで信じているんだなあということです。それを探す最後の力が残っていたからこそ、明日が来ることを受け入れられた。物語を理解して役を考えるうえで、私はこのタイトルにすごく助けられました。
綾野 豪士にとっては残酷なものですよね。彼はずっとそれを探していて、でも結局どこにもないことも知っていて。ただ僕のそんな理解の仕方も、時間が経てばまた変わるかもしれない。いろんな受け止め方のできる映画ですので、多くの人に観て、感じて、考えてほしいです。
綾野 剛 杉咲 花 /佐藤 浩市
主題歌:上白石萌音「一縷」(ユニバーサルJ)
作詞・作曲・プロデュース:野田洋次郎
原作:吉田修一「犯罪小説集」(角川文庫刊)
監督・脚本:瀬々敬久
rakuen-movie.jp ©2019「楽園」製作委員会
STORY
孤独な青年・豪士(綾野剛)は、12年前にY字路で消息を絶った少女の親友だった紡(杉咲花)と知り合う。次第に心を通わせる二人だが、再び同様の失踪事件が起こり、周囲は豪士に疑いの目を向ける。善次郎(佐藤浩市)は近所の人とともに少女の捜索に加わり、怯えたように立ちすくむ豪士の姿を見つける……。