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エンタメ

イビツな恋だっていいじゃない!? 不器用なオトナに贈る物語

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目次

映画『愛がなんだ』公開記念 特別対談

原作者 角田光代さん
主演 岸井ゆきのさん

直木賞作家・角田光代さんのリアリティあふれる片思い小説を映画化した『愛がなんだ』が、4月19日から公開されます。これを記念し、原作者の角田さんと映画の中で一方通行の恋に全力を傾けるアラサー女子・テルコを演じた岸井ゆきのさんが対談。熱量100%で生きる“テルちゃん”の生き方と映画の魅力について語り合いました。

恋は勝ち負けじゃない。
映画の中のテルコに
言われた気がします

未来のテルちゃんに
後悔しないで欲しいと
思いながら演じました



不器用なオトナに贈る物語
 

生身の人間が演じる 映画だから伝わること

角田 映画、とてもおもしろかったです。自分が30歳の頃、こんな感じだったのかと思ったら泣けてきちゃったくらい(笑)。登場人物一人ひとりの佇まいがとてもきれいで、みんな一生懸命に生きている感じがしました。それがこの作品の清らかさになっていますよね。

岸井 角田さんにそんな風に言ってもらえるなんてうれしいです。原作を読んで「テルちゃんをやりたい」と思ったから。テルちゃんって極端なんだけど憎めないんです。私自身とは違うけれど、好きになった人に真っ直ぐ向かっていく気持ちは理解できたので演じることに抵抗はありませんでした。そして、撮影中に気づいちゃったんです。ひょっとしたら、私もテルコみたいになり得るかもって(笑)。なので、私の中のテルコと話し合いながら演じていました。

角田 テルコは原作より全然魅力的だと思う。特に恋敵のすみれさんに対する気持ちを歌うラップがすごく良かった。彼女の精神の高潔さが出ていますよね。彼女の〝マモちゃんになりたいと思うほど好き〟というのは原作にもありますが、小説だとなかなかわかってもらえなくて。でも、映画だと、カッコいいのにどうしようもなく弱いマモちゃんや逆にこんなにも自分を明け渡しているのに異様に強いテルちゃんがよくわかる。生身の人間が演じる凄みってあるなぁと感じました。

岸井 テルちゃんって、マモちゃんにどんなにひどい扱いをされても誰よりも幸せそうで。あれだけの熱量を好きな人に向けられるってすごいなぁと思うし、憧れます。

角田 うん。恋愛がうまくいっているから幸せとか、結婚が決まったから幸せとかではないなぁ、とテルちゃんを見ていると思うよね。

岸井 テルコがもっと大人になってマモちゃんのことが過去になったとしても、私は彼女に絶対に後悔しないでほしいんですよね。未来のテルちゃんに「それでもよかった」と思える時間を今、過ごそう、と思いながら撮影していました。

角田 私、恋愛映画を見ると若かった頃のバカな恋愛、あんなに負けちゃって恥ずかしい自分を思い出して後悔しがちなんです。私は二十代のころ、恋愛を勝ち負けで考えていたので。でも、この映画のテルちゃんには「恋に勝ち負けなんてないよ」と言われている気がしたんですよね。未来のテルコに後悔させたくない、という岸井さんの思いが伝染してきたのでしょうね。
 

恋愛からこぼれ落ちる 繊細な人間関係

岸井 27歳の恋愛という設定が絶妙なので、どの世代の方にもおもしろく感じられる瞬間がきっとある映画だと思います。かつてテルコみたいだった人も、今まさにテルコみたいな恋をしている人にも、まず、見ていただきたいです。

角田 今泉監督の映画って恋愛に似た何かを扱っても、そこからこぼれちゃうような繊細な人間関係が描かれることが多くて、この映画もそうですよね。私と同じテルコより上の年代の人はあの頃ってこんなにきれいだったんだと思うだろうし、テルコと同世代の人には、今自分がとてもきれいな時間の中にいることに気づいてもらえたら。キラキラした映画じゃないからこそ、よりきれいさが心に残る。それを共有できたらいいなと思いますね。
 
恋は勝ち負けじゃない。映画の中のテルコに言われた気がします
恋は勝ち負けじゃない。映画の中のテルコに言われた気がします
未来のテルちゃんに後悔しないで欲しいと思いながら演じました
未来のテルちゃんに後悔しないで欲しいと思いながら演じました

【左】かくた・みつよ/1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し文壇デビュー。2005年『対岸の彼女』が直木賞に輝くなど、これまでに数多くの文学賞を受賞。『八日目の蝉』『紙の月』など、映像化された作品も多い。近年は『源氏物語』(現在、上・中巻まで発売中)の現代語訳に取り組んでいる。

【右】きしい・ゆきの/1992年神奈川県生まれ。2009年にドラマ「小公女セイラ」で女優デビュー。以降、映画、ドラマ、舞台と様々な作品に出演。17年には初主演映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』で第39回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。NHK連続テレビ小説「まんぷく」では主人公・福子の姪、タカ役を演じた。


〈Story&Introduction〉 恋をするって素晴らしい!? 全力疾走の片思い映画

猫背でひょろひょろのマモル(成田凌)と出会い、恋に落ちたOLのテルコ(岸井ゆきの)。以来、仕事中も“マモちゃん”からの電話をひたすら待ち、呼び出されれば真夜中でも彼の元へ駆けつける日々だ。友人の助言も全く耳に入らないテルコは今や会社もクビ寸前。それでも彼のそばにいるだけで幸せなテルコだが、実は、マモちゃんはテルコのことが好きじゃない……。直木賞作家・角田光代が2003年に刊行した同名小説を、恋愛映画の旗手・今泉力哉監督が映画化。一方通行の恋に自分の全てを傾ける主人公・テルコと彼女を取り巻く男女それぞれの恋愛模様を軸に、不器用ながらも懸命に生きるアラサー世代の人間関係がみずみずしく描かれている。

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