コラム
古典から現代に聞こえてくる 『平家物語』を生きた人々の魂の声
提供:アーツカウンシル東京(東京都歴史文化財団)
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
平家の鎮魂のために琵琶法師たちが語り継いだ『平家物語』の冒頭のフレーズを知らない日本人はいないだろう。
800年を超えてなお愛される物語の魅力を、琵琶、講談、舞踊という異なるジャンルから光を当てて読み解くことで、それぞれの『平家物語』に出会えるはずだ。
平家一門の栄華から滅亡までを描いた『平家物語』には、日本の歴史の中に実在した人物が多く登場する。親子、主従、恋人、敵味方などの人間関係やそこから生まれる生と死、愛と別れの物語は、日本人の心を捉え、古典芸能の名作を生み出してきた。
そんな『平家物語』を題材に、琵琶、講談、舞踊における旬の演者が一堂に会し、それぞれによる『平家物語』が表現されるのが、年明け1月17日(木)に世田谷パブリックシアターで開催される「『平家物語』の世界〜日本人の心をうつす古典芸能〜」だ。
時代を超えてなお人の心を捉えてやまない物語の魅力を、日本舞踊尾上流四代家元の尾上菊之丞さんと薩摩琵琶奏者の友吉鶴心さんはこう語る。
菊之丞さん
鶴心さん
口承文学の源流に位置している『平家物語』は、琵琶法師が琵琶の音に乗せて語り、その無常の物語に、武士や貴族はもちろん、文字を読めない民衆も耳を傾け、登場人物たちに思いを馳せてきた。
鶴心さん
今回の公演では、この日のために菊之丞さんと鶴心さんにより作られた舞踊と琵琶の新曲「忠度(ただのり)」も披露される。平忠度は、清盛の弟で和歌の名手。平家滅亡への大きな鍵となった「一ノ谷の合戦」で戦死するが、戦に赴く際にわざわざ引き返して藤原俊成に自分の和歌を預けていく。戦場に向かうこと、そして自分の和歌が勅撰和歌集に残るもそれが読み人知らずとされていることへの無念が琵琶と舞踊で表現される。
菊之丞さん
鶴心さん
日本の伝統芸能を背負って立つ、旬の若手が競演する本公演は、『平家物語』の世界を、それぞれの芸の世界観から触れることができるのも魅力だ。
菊之丞さん
鶴心さん
華麗な競演は、どんな『平家物語』を見せてくれるのか──。一夜限りの物語に期待が高まる。