あなたは、フランスのダンケルクという港町が、いま世界で注目をされていることを知っていますか? 77年前この場所で、世界の運命を変える出来事がありました。第二次世界大戦の戦局を大きく左右し、スティーヴン・スピルバーグ監督が『プライベート・ライアン』で描いた「ノルマンディー上陸作戦」にもつながった「ダンケルクの戦い」と呼ばれる出来事です。
この史実を、『ダークナイト』『インセプション』など新作発表のたびに世界を驚嘆させ続けるクリストファー・ノーラン監督が映画化。ノーラン監督が最新作の題材に選んだことで、世界中の映画ファンの熱い視線が小さな街に注がれているのです。
「ダンケルクの戦い」でイギリス国民がとった行動は、“ダンケルク・スピリッツ”として今なおイギリス国民の心に深く刻まれています。どんな困難に遭っても決してあきらめず、みんなで一丸となって助け合えば、未来への希望を見いだせる。まさにそのことを実証する“奇跡”でした。なぜいま、ノーラン監督はこの奇跡を描こうと思ったのか? 9月9日(土)日本公開の前に、「ダンケルクの戦い」を紐解いてみましょう。
1939年9月1日、ドイツ軍がポーランドへ侵攻し、イギリスおよびフランスが宣戦布告をしたのを機に第二次世界大戦が始まりました。ポーランド侵攻で勝利を収めたドイツ軍は翌年の1940年5月10日、オランダ・ベルギー・ルクセンブルクの三国に侵攻。さらに完全ノーマークだったベルギー南東部からフランス領土内へ侵攻、5月17日以降にはフランス北部まで席巻しました。
ドイツ軍は戦車や戦闘機といった新しい兵器を使って電撃戦を展開、火力と機動力を集中して運用させるという当時からすると全く新しい戦法スタイルであっという間に英仏連合軍をベルギーとの国境近いフランスの港町ダンケルクまで追い詰めます。背後はドーヴァー海峡、陸路は全方向すべてドイツ軍に包囲され、英仏連合軍は絶体絶命の状況に陥りました。
ダンケルクに追い込まれた英仏連合軍兵士は約40万人。戦争なので、「命を捨ててでも戦え」と兵士を鼓舞し、戦線を突き進ませるのが普通です。ところが、時のイギリス首相チャーチルは40万人の兵士を撤退させると英断しました。
戦って相手を打ち負かすのではなく、命を最優先に「撤退」という選択をしたという意味で、これは特筆すべき決断だと言えます。
40万人といえば、ほぼ品川区の人口ほどの人数。まさに史上最大の撤退作戦が行われようとしたわけですが、海軍省が用意した船だけではとうてい足りません。刻一刻とドイツ軍の総攻撃が迫る中、ドーヴァー海峡に浮かぶ民間の貨物船、漁船、遊覧船、救命艇などあらゆる船舶に召集がかかりました。9日間で急遽集められた船数は約900隻。決死の覚悟でそれらの船たちはダンケルクへ向かいます。歴史上、戦場から兵士や軍隊が市民を救う話はいくつもありますが、市民が兵士を救援するという例はほとんどありません。
特に兵士たちが若かったこと、そして彼らがいかに絶体絶命の状況に置かれていたかに心を動かされたクリストファー・ノーラン監督。「戦争という壮大なテーマを扱いつつも、本作は従来の戦争映画とは異なる。海辺での兵士たちの戦いそのものよりも、戦争という絶体絶命の状況と混乱のなか、追い詰められ、葛藤し、生き抜いていこうとするものだから。」と語るノーラン監督は、これまでメジャー大作で語られることのなかった史実「ダンケルクの戦い」の映画化に踏み切りました。
ノーラン監督が手掛ける初の実話とあって、これまで以上にリアリティーを追求。CGに頼らず、スピットファイアやメッサーシュミットが飛行するシーン、沈没する戦艦のシーンなど、大勢のエキストラを動員して撮影し、容赦なく敵勢が迫る中、陸・海・空の3つの視点の時間軸でストーリーが同時に進行。時間描写において一線を画すノーラン監督ならではの緊迫のタイム・サスペンスを、最高の才能と最先端の技術を駆使して、別次元の新感覚の映像をつくり上げました。それはまるで、1940年のダンケルクの浜辺にいるかのような究極の映像体験と言えるでしょう。
その迫力と臨場感はすさまじく、「まるで戦場のど真ん中に放り込まれるようだった」と出演俳優のマーク・ライランスも語る本作品。この史上最大の撤退作戦をノーラン監督がどう再現したのか、その先に描かれる人間の気高さとは? 映画『ダンケルク』の公開を今から心待ちにしたいものです。
監督・製作・脚本:クリストファー・ノーラン
出演:トム・ハーディー マーク・ライアンス ケネス・ブラナー キリアン・マーフィー ハリー・スタイルズ
配給:ワーナー・ブラザース
公式サイト:
dunkirk.jp #ダンケルク