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#78 イーハトーブの空を見上げて
かゆを炊いて、農作物の作況占う 450年続く「御例神事」の結果は

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#78 イーハトーブの空を見上げて
Hideyuki Miura 朝日新聞記者、ルポライター
共同編集記者岩手県一関市の山間にある藤沢町に、450年以上続くとされる正月行事「御例(おためし)神事」がある。
山奥で地域住民らがかゆを炊き、その年の天候や農作物の作況を占う。
日がとっぷりと暮れた1月11日午後6時、気温マイナス2度。
地域住民ら約40人が真っ暗闇の雪の山道を進んでいく。
約20分かけて白沢神社に到着すると、持ってきた鍋に米5合と水、小さな竹筒を入れて火にかけた。
竹筒の表面には天候や作物名などが記されている。
かゆが炊けた後、竹筒の中にいくつ米粒が入っているかで、天候や作況を推測する。
かゆが炊けるまでの間、住民らは田植えや稲刈りなどの作業を、苗や稲の代わりにワラを使って演じる。
かゆが炊けると、山を下り、地域のコミュニティーセンターで鍋のふたを開けた。
「日は7、雨は1」「トマトも1、キュウリは2」
占いの結果が読み上げられる度に、会場からは「もう、野菜作んのやめた!」などの声が上がり、笑い声で満たされる。
占いの結果の解説をした小野道教宮司は「日照りが強く、雨が少ない。温暖化の影響も出ているのかもしれません」。
参加した農業千葉敏雄さん(74)は「今年はなんだか大変そうだが、占いにめげずに頑張ろうな」と笑顔で友人の肩を叩いた。
(2025年1月取材)
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