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さんからの取材リクエスト
SNSで人気爆発、あの映画の俳優はどんな人たち?
「カメラを止めるな!」個性派俳優の正体 ヒット導いた「素の演技」
異例のヒットを続ける映画「カメラを止めるな!」出演俳優の濱津隆之さんと真魚さんに撮影秘話やプライベートなどをインタビュー しました。
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SNSで人気爆発、あの映画の俳優はどんな人たち?
異例のヒットを続ける映画「カメラを止めるな!」出演俳優の濱津隆之さんと真魚さんに撮影秘話やプライベートなどをインタビュー しました。
異例のヒットを続ける「カメラを止めるな!」で見逃せないのが、個性的な役者陣です。オーディションで抜擢され一躍、話題の人になった日暮隆之役の濱津隆之さんと日暮真央役の真魚さんは「役柄が素のまま」と明かします。撮影現場では「むしろ演技しないで」と言われたそうです。口コミで広がった人気、この日も、深夜にテレビ出演を控えた2人でしたが、アットホームな雰囲気で取材は始まりました。
——役者は脚本ができる前のオーディションを兼ねたワークショップで選ばれたそうですね。どのような意気込みで参加しましたか?
濱津さん「特に……」
真魚さん「特に、かい!」
濱津さん「ワークショップ自体は役どうこうというか……。なんというか……。なんでしょう……。うーん……(笑)」
真魚さん「ちょっとしっかりしてもらっていい? 眠たいの? しっかりしてよ!(笑)」
濱津さん「いや……(笑)」
真魚さん「濱津さんって最近いつも見るたびに『くたびれてんなー』って思ってます(笑)」
(一同爆笑)
——あらためて、当時を思い返すと、どんな気持ちでしたか?
濱津さん「その時は最終的に何を撮るか分かっていなかったので、何かしら今後につながればいいなーと思っていた程度の気持ちでした。もちろん出せるものは全部出すつもりでしたが」
真魚さん「私は割といつもみたいに『挑戦するぞ』って気持ちでした。前の事務所ではエキストラばかりだったので『事務所に頼ってばかりではなく、自分からも役を取りにいかなきゃ』と思って見つけました。書類を出したら全員オーディションはしてくれたので、顔さえ出せば何かしらの役を得るアピールができると思って行きました」
<正反対のキャラの2人ですが、この個性のぶつかり合いが映画の面白さでもあります。脚本は役者の性格や人となりをそのまま反映させる「当て書き」という手法で出来上がったそうです>
——役との共通点は、やはりありますか?
真魚さん「私、きちんと空気を読める人間なので、そこだけはちゃんと書いておいてください!」
濱津さん「(爆笑)」
真魚さん「ほんと誤解されがちなんですけど!」
濱津さん「(話を遮って)あのままじゃん!(笑)」
真魚さん「グイグイ行かないと、何かしらの役がもらえるかもしれないし」
濱津さん「舞台挨拶の後、タメ口ギリギリで初対面の人と話していたら相手が『制作会社の社長です』みたいなことがあったよね」
真魚さん「最初に言ってくださいよ、みたいな」
濱津さん「そして急に『すいません、すいません』ってなったり(笑)」
——濱津さんはどうでしょう?
濱津さん「当て書きということで、ほとんどあのまんまです。共通点は……なんだろう……」
真魚さん「冴えないところ?」
濱津さん「ハハハハハハハ そうですねー。。。強く言えないところは、まんまです。はい」
<映画は最初、都内の2館だけのスタートでした。それがツイッターなどSNS上で話題になり、あっという間に全国展開に。今も有名人アカウントによる「感染」報告が相次いでいます>
——ここまでのヒットは想像していましたか?
濱津さん「全くしていませんでした。完成披露の上映だけで、本公開すら想像していませんでした」
真魚さん「脚本が面白いと思っていたので『もしかしたら」とは思っていましたが、ここまでになるとは……」
——ヒットした理由ついて考えることはありますか?
真魚さん「同じような構造の話を『思いついていた』という人がたくさんいるとよく聞きます。その中でも上田慎一郎監督は、実際に形にまで仕上げて『こういうのを見たかった』という潜在意識とマッチさせたことでバズったのかもしれません」
——ツイッターでも話題になっています。
真魚さん「フォロワーの多い方たちがつぶやいてくれたことも大きな要因だと思っています。でも実は、出演者の人たちは、このご時世なのに、あんまりSNSが使えてなくて……。今頑張っているところです(笑)」
濱津さん「他の人が出演しているところで何度見ても笑ってしまうんですよね。出演者の魅力みたいなものが監督の腕によって画面に滲み出ているところもあるかもしれませんね」
<脚本ができる前のオーディションから始まった本作。撮影現場での上田監督の指示もユニークなものでした>
—— 監督に言われて心に残ったことはありますか?
濱津さん「そこまで細かい演出というものが無くて、むしろ『演技しないで』って言ってたよね?」
真魚さん「言ってましたっけ?」
濱津さん「(苦笑)監督は『人としての良さを活かしていきたい』と思ってくれていたので、演技に関してあまり言われませんでしたね」
真魚さん「確かにあまり言われた記憶がないですね。『緊張しないで』とか言ってましたね」
濱津さん「演技がかった芝居をしてしまった時に『いつもの感じでやって』って言われたくらいですからね」
真魚さん「『当て書きにした意味がなくなっちゃうんで緊張しないで、考えてきたお芝居をとりあえずやってみて』と言われてましたね」
<インタビューでは息のあったトークを繰り広げる2人ですが、実際の撮影現場では「ほとんどしゃべらなかった」そうです>
——プライベートではどんな会話を?
真魚さん「そもそも、全然。お互い話さなかったよね」
濱津さん「(苦笑)」
真魚さん「演技練習が終わった後はすぐ『お疲れ様でしたー』って感じで」
濱津さん「でも1回だけ、日暮晴美役のしゅはまさんと3人で飲みにいったよね」
真魚さん「その飲み会もそんなに盛り上がらなかったよね」
濱津さん「……(苦笑)」
真魚さん「最初、濱津さんは全然喋らなかったので暗い人だと思ってました。濱津さんって元芸人なんですけど『こんな人が芸人やってたの? 無理無理!』と思ってました(笑)」
濱津さん「今はインタビューだから喋るよ(笑)」
<予算300万円で生まれたという「カメラを止めるな!」。役者陣の中心にいる2人が演技の道に入った道もかなりユニークです。濱津さんは元芸人、元DJでした>
——濱津さんが役者になったきっかけは?
濱津さん「大学卒業の時に『これで飯食っていけたらいいな』と思っていた分野が2つありまして『芸能』と『音楽』でした。始めは大学を卒業して1年フリーターをしてお金を貯め、吉本興業の養成所である東京NSCに入りました。養成所卒業後にお笑い芸人になったのですが、1年を持たずに辞めました。その後、DJを30歳の手前までやってました。でも、DJでは趣味より先へ行く力がないと思いはじめていました。そこで思い出したのが芸人時代にコントをやっていた時の楽しかった気持ちで、じゃあ役者かなと思いました。誰かに憧れていたとかではなく、流れ着いたのがきっかけです。そこから本腰入れて役者やろうと考えて、DJも辞めて活動を続けてきました。全てが繋がっていると思っています」
真魚さん「すごい喋るじゃん。最初から喋ってよ」
濱津さん「(タジタジ)」
——ちなみにDJの名前は?
真魚さん「私も知りたいです」
濱津さん「DJ.HAMA1(ハマワン)です。濱津という名前から『HAMA2』というのをメールアドレスで使っていたので、それとは違う『HAMA1』にしました」
<役者としては遅咲きの真魚さん。まったく違う世界に生きていた真魚さんを変えたきっかけは「ある有名すぎる日本映画」だったそうです>
——真魚さんの人生を変えたという作品は?
真魚さん「私が役者をやろうと思ったきっかけは岩井俊二監督の『スワロウテイル」をDVDで観た時に、友達がびっくりするくらい泣いてしまったんです。『え、映画ってこういうのがたくさんあるってこと?』と思い、こんな凄いものがあるのに『全然、知らなかった』と愕然としました。こんな凄い作品に出たいと思って事務所を探しはじめたんです。その時は、古着屋で正社員として働いていたんですけど『私、女優になります』と宣言し、辞めさせてもらうよう言いました。その時が23歳だったので女優を目指すには遅すぎるとはよく言われたんですけど、『でもやっぱ出たいし、こっちの世界に早く入りたい』と思いました。今でも、あの映画の出演者全員に憧れています」
<映画のヒットと同時に一躍、「時の人」となった2人。テレビや雑誌への登場が相次いでいます>
——私生活で変わったことはありますか?
濱津さん「疎遠になってた人から『見たよ』と連絡がくるようになったので、本当に嬉しかったです」
真魚さん「元カノとか?」
濱津さん「……これ録音してるから(笑)」
真魚さん「今フリーで活動しているんですけど、メールアドレスをTwitterに載せたらお仕事の依頼がくるようになりました。バラエティーが多くて、芸人さんがいると邪魔しちゃいけないと思って本領発揮できないんですよね」
濱津さん「全員、俺だと思えばいいじゃん」
真魚さん「そっか。全員、濱津さんだと思えばいいのか!」
——今後挑戦してみたい役はありますか
真魚さん「日暮真央を2回やってもしょうがないので、全然違う、正反対の役をやってみたいですね」
濱津さん「監督と作品が違えば何かしら違うと思うので、同じような役でもやってみたいです」
——お互いに向けて一言
濱津さん「お互い……」
真魚さん「まあ頑張ってよ」
(一同爆笑)
濱津さん「そ、それが出せればいけるよ」
真魚さん「誰目線?」
濱津さん「(タジタジ)」
真魚さん「あなたも結構いい顔面力持ってるから」
濱津さん「頑張ります」
真魚さん「元芸人なんだから、もっとベシャリをちゃんとしたらいいですよ」
濱津さん「演技とかじゃないんだ(笑)」
真魚さん「最近、Twitterで『濡れた犬に似てる』って言われてるよね(笑)」
濱津さん「田中邦衛さんとか」
真魚さん「外見がすごいパワーを持ってるんだから、しゃべりをがんばるといけると思うよ。集中して行こうな!」
濱津さん「はい!」
2人のトークは、まるで映画の中からそのまま出てきたような「スピンオフ」のような展開に。「そのまま」の役者さんたちの魅力を「そのまま」作品に昇華した上田監督の手腕をあらためて感じる結果になりました。
「そのまま」を貫く2人を通じて、この作品がSNSで話題になった理由も見えててきました。「インスタ映え」や「幸せ自慢」などに疲れた人たちが、役者の人柄そのままをカメラに収めた作品を熱狂的に支持するのは、ある意味、必然だったのかもしれません。
演技をしたいというピュアな気持ちだけで集まったチームが作り上げた映画だからこそ、観客の「応援したい」という「嘘や偽りのない気持ち」を呼び起こしたのだのでしょう。「カメ止め」現象は当分、終わりそうにありません。