エンタメ
「Do As Infinity」不器用に色あせず18年…「私、ポンコツなんです」
9月にデビュー18周年を迎える「Do As Infinity」。その歴史はけっして平坦(へいたん)ではありませんでした。6周年での”解散”、それから3年後の再結成。出産を経て「音楽に救われた」と言うボーカルの伴都美子さん。”解散”中にギター修行をした大渡亮さん。今年は、TVアニメ『進撃の巨人』などの音楽で注目を集める澤野弘之をロデュースに迎え「Alive/Iron Hornet」をリリース。南米4カ国、台湾、シンガポールと、海外公演のオファーも続いている。不器用ともいえる。でも、だからこその味がある。その秘密を探りに行ってきました。(ライター・藤井美保)
――澤野さんとの初顔合わせはいかがでしたか?
伴 そもそも私、臆病でビビリーなポンコツなんです。頭でっかちになりやすくて、抱えきれずひとりで爆発しちゃうことも(苦笑)。だから、最初はどう接していいか戸惑いました。でも、ある瞬間ふと、「何事もやってみないとわからない。とにかく乗っかろう」と思えて。
大渡 澤野さんとレコーディングした1曲目「Alive」のときは、たしかに伴ちゃん、なかなか入ってこなかったよね。
伴 2曲目「Iron Hornet」のときに私からリクエストしたことが、理想的な音で返ってきて、そこから急にやりとりが楽しくなったんです。
大渡 澤野さんとの第2弾シングル「To Know You」のレコーディングでは、目を見張るような前向きさで伴ちゃんがアイデアを出してました。そこから制作がスタートしたと言ってもいいくらいなんです。
――「To Know You」は、東京で暮らしている人たちがうれしい気持ちになるようなキラキラとした曲ですね。
伴 「Alive/Iron Hornet」がダークな感じだったので、今回はとにかく明るい曲にしたかったんです。私自身にもそういった陽気な部分はあるし、たった今のモードもそうだし。澤野さんの伝えたキーワードは「ワクワク感」でした。なんか私のなかのドアが開いたのかもしれないですね。
――主人公のまなざしは伴さんまなざしでもありますか?
伴 まさにそうです。地方出身者の私にとって、東京は夢にあふれた憧れの街。打ち合わせで「東京といえば何だろう?」という話になったときは、熊本から初めて飛行機で上京したときの景色を思い出しました。レインボーブリッジを渡って都心に入るときに見えたビル群と東京タワー。今でもあれを見るたびに、「ああ、私はここで生きている」というポジティブな気持ちが芽生えますね。
――エレクトロ風味ということもあって、今回リード・ギターのないサウンドになってますね。
大渡 ロックおじさんに見られがちですが、こういったサウンドも好きなんですよ。そして、カッコよければリードがなくても何の問題もない。ギターは、曲をよりおいしくするための「ふりかけ」だと思っているので(笑)。この曲では澤野さんの指定もあって、フワッとしたシンセにあえてギターを重ねてます。音の芯となる部分を担ういい「ふりかけ」になってるんじゃないかなと。
――ご自分のギターの進化を、今どう感じていますか?
大渡 今から思えば、”解散”前の自分は、グループの運営にばかり興味や意識がいっていて、「俺はギター」というのがおこがましいほど技術を高める努力をしてなかったと思うんです。”解散”後、べつの場所でギターを弾く機会が増えて周りを見回したときに、「俺は今まで何してたんだろう?」と急に後悔しました。そこから一念発起して腕を磨き直したんです。
――どういうふうにギターと向き合ったんですか?
大渡 まず、いま一度道具を知ろうと思いました。次に、ジェラシーを感じるプレーについて、自分がどういうポイントでそれを感じるのかを分析していった。端的にいうと、自分に足りなかったのはブルースの要素だったんです。それを意識しながらコード進行とフレーズの関係を研究ていきました。なんでこういうフレーズなんだろう? とそのプレーヤーの人間的な部分まで感じながら、自分の血肉にしていったんです。
――ちなみにジェラシーを感じた人たちの名前をうかがってもいいですか?
大渡 ロベン・フォード、スティーブ・ルカサー、ラリー・カールトン、マイケル・ランドウといったLAのセッション・ギタリストたちです。
――伴さんは、ボーカリストとしてのご自分の変化をどう感じてますか?
伴 出産、育児という人生のひとつの転機で、見るもの、聴くもの、読むもの、すべてのとらえ方が変わった気がしますね。以前より、一つひとつ「なんで?」と、考えるようになりました。歌を歌い、ときには歌詞も書く人間として、自分はどうあるべきかということもしょっちゅう考えてます。
――育児をしながらの活動は大変ではないですか?
伴 育児に関しては、奮闘してますがちゃんとやれてるかどうかはわかりません。年子の男の子ふたりで、1歳半と3歳。とても手のかかる時期なので、活動が続けられているのはまず周りの協力があってこそ。手を抜くくらいならやめるべきとも思ってますし、極論を言えば、私ひとり歌わなくなっても、誰も困りはしないよねとも思うんです。
――それでも続けているのは?
伴 音楽がなくなったらって考えると、自分がどうなるかちょっと怖いですね。もちろん、具体的に生活でもあるわけですけど、もはや仕事と思っていないところもある。救われてきた部分も大きいですしね。「なんで?」の答えは永遠に出そうにないけれど、今、自分はここにいる。歌が好きで、「Do As Infinity」が好きで、幸せを感じられてる。それくらい大きな存在である音楽に、出会ってしまったということだと思います。