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全面「西」だらけ!西日暮里駅「文字だけ看板」ヤケじゃない製作理由
「アイデンティティ」を守るための秘策
東京・下町に位置するJR西日暮里駅。構内に掲示された看板が、ツイッター上で注目を集めています。表面には、これでもかと言わんばかりに敷き詰められた「西」の文字。しかしよく眺めてみると、別の単語が現れる仕組みになっているんです。社員のアイデアを形にしたという、不思議な外見の一枚が誕生した背景には、現場が抱える切実な事情がありました。(withnews編集部・神戸郁人)
今年6月、看板の画像がツイートされました。
「『西』に紛れて別の字が混ざっています。探してみて下さい!」。そんな一文の下には、白地に緑色の枠の中に、500個の文字がびっしり並んでいます。
そのほとんどが「西」ですが、注意深く見たとき、光景が変わります。「夕やけだんだん」「谷中銀座」といった、近隣にある観光地の名前などが編み込まれているのです。
「つい見てしまうほど魅力的」「センスの塊」。画像を目にした人々からは、驚きと感動の声がいくつも上がりました。
この看板は、西日暮里駅のオリジナルデザインです。どのようにして独特の表現が生まれたのか、JR東日本を取材しました。
同社の広報担当者によると、看板が改札付近に掲示されたのは、今年3月下旬のこと。誕生の理由を探るカギとなるのは、ポスター下部に、日英両文でつづられた文章です。「改めてご利用は『西日暮里』駅で間違いないですか?今一度お確かめください」
西日暮里駅は、山手線や京浜東北線などの主要路線が乗り入れる、日暮里駅と隣り合っています。そっくりな名称や、距離の近さゆえ、降り間違えてしまう利用客が絶えないそうです。
同社では、駅名を強調した横断幕を改札内に掲示し、現地スタッフが利用客に直接案内するなどの対策を講じました。しかしなかなか改善せず、社員間で協議した結果、両駅の違いを伝える切り札として、看板のアイデアが飛び出したのだといいます。
「西」以外の語句は全8種類。シークレットとして、「酉(とり)」という文字も潜ませました。「当駅で下車した方から、特に多くの問い合わせをいただく場所や路線の名前を選定しています。お客様にハッと気付いて頂くことを意識しました」
画像が話題になって以降、製作の経緯をめぐり「新型コロナウイルスの影響で企業広告が減り、ヤケになってしまったのでは」との臆測が、SNS上を駆け巡りました。これについて、担当者は明確に否定します。
「日暮里駅へと向かうお客様が、誤って西日暮里駅で下車されることを防ぐのが狙い。決して、広告が減少したからではございません」
担当者によると、看板の掲示期間は未定です。ただ当面は、現在の位置に据え置く予定といいます。ネット上で人気を博したことに関しては、こう語りました。
「内容を好意的に受け止めて下さり、大変うれしいです。西日暮里駅周辺には、魅力的なスポットがいくつもあります。日暮里駅と間違えて降りるのではなく、ぜひ目的地としてご利用頂ければと思っております」
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