マンガ
「心臓がちぎれそう」続きが気になるマンガ「眠れないオオカミ」
「動けないオオカミ」「孤独を知るハチ」それは私たちかもしれない…
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「動けないオオカミ」「孤独を知るハチ」それは私たちかもしれない…
夜空の下、荒野の中で、たった一匹ぽつんとたたずむオオカミ。「ねえ?オオカミくん」と話しかけるのは、モグラの子です。
「何をそんなバカみたいに ずーっとたってるの?」「まるでカカシだね」。そう言われたオオカミは、ためらいなくモグラを捕まえて食べてしまいます。
それからしばらくして、やってきたのは「ハチ」。「最近ずーっとココにいるね」と話しかけます。最初は穏やかだったオオカミも、「白いメスのオオカミ」の話になると態度が激変。ハチに襲いかかろうとしますが、足が地面にくっついて動けません。
オオカミの状況を把握したハチは、彼に毎日会いにくることにしました。ハチは彼に種を与え、彼の足は「精神的なモノが原因だろう」と語りかけます。「過去を今で埋めるんだ」。そう言われたオオカミは、ジョウロの使い方もわからないまま、種を育て始めます。
花にまつわる出来事に、一緒にいた「白いオオカミ」の記憶が重なり、喪失感にさいなまれるオオカミ。「白いオオカミ」の真実を知るキツネ、息子を殺されたモグラ、さまざまなキャラクターの思いが交錯します。そして、ハチが彼を気にかけるのにも理由があってーー。
少しずつ明かされる過去と、残酷さとあたたかさが共存する独特の世界観、どこか心に傷を負ったキャラクターたちにひきこまれ、ツイートには「なぜか涙が止まらない」「続きが気になる」とコメントが寄せられています。リツイート数は5万を超え、17万件以上の「いいね」も集まっています。
「眠れないオオカミ」① pic.twitter.com/6erGWHIUh2
— したら領 | マンガ (@shitara_ryo) March 28, 2020
「眠れないオオカミ」のストーリーで特徴的なのが、主人公が動けない代わりに、生き物が入れ替わり立ち替わりやってきて進んでいくという展開。したらさんは「自分が動けていないような感覚がここ数年あった」と振り返ります。
「漫画を描いていてもプロとしてなっていない、どこか遠くに行きたいけど行けない窮屈さみたいなのがあって。オオカミや他のキャラクターにも、自分を重ねる部分があるのだと思います」
一方で、「いざ描いてみたら、『動けない』ってストーリーとしてつくりづらいんですけど」と苦笑しますが、「逆に制限があることで、余計なことを考えずに済んでいる気もします」。
オオカミやハチ、モグラなど、喪失感と不足感を抱いたキャラクターが多く描かれるこの作品。したらさんは「もともと自分がコミュニティに上手くなじめないというか、そこはかとない疎外感みたいなのを持っていた」と語ります。
「誰かに対する陰口とか、ちょっと見下す空気とかがコミュニティの中を盛り上げたり、絆を深めたりすることがありますよね。自分が全くしてこなかったとは言えないんですけど、苦手で、協調することができなくて……」
それを理解されない居どころのなさ。この物語の端々に、したらさんの心の内が表されていました。
「自分がどこか欠けていると感じるから、こういったキャラクターが出てくるのだと思います。自分が普段言えないことも、キャラクターを通して話されている気もします」
漫画に集まる「泣きました」「心臓がちぎれそう」というコメントから、読者の心にもある小さな孤独感と共鳴しているように感じました。
漫画はまだ完結しておらず、最新話は9話ですが「まだ2分の1か、3分の2くらい」というしたらさん。ぼんやりと展開を考えているそうですが、「話数を重ねるごとにプロットを捨てて、また描き直したりしています」。悩みながら描いているため、本当にこの先どうなるかは誰もわかりません。
この漫画をまとめてツイートする前は5千人程度だったフォロワーは、いまや9万人を超えています。漫画が拡散されていることについて、「コルクラボマンガ専科の方がリツイートしてくださり、コミュニティの強さがありがたかった」といいます。一気に多くの人の目に触れる怖さを感じながらも、「5~6年進んできた自分の方向が間違っていなかった」と嚙み締めるように語ります。
漫画には「続きが気になる」という声も数え切れないほど集まっています。期待の声に、「7~9日スパンで更新するので、お待たせしてしまってすみません」。
「物語は渓流の川下りのようで、操作はできるけど戻れず流されてしまうようなところもあり、自分でもコントロールしきれないところがあります。もしかしたら悲しんじゃう人がいるかもしれないけど、なるべくハッピーエンドになる方には持っていきたいと思っています。気長に待っていていただけたらうれしいです」
完結していないからこそ、今から物語の行方を見守り、ワクワクを多くの人と共有できるチャンスでもあります。これからの更新が楽しみです。
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