お金と仕事
スーパーの中国人店員が見た「日本の変な所」接客の決まり文句いる?
人手不足が叫ばれる中、外国人の働き手を目にする機会が増えています。夜のスーパーのレジでも時々見かける中国人の店員。スーパーで働く中国人の店員は何を考え、何を見てきたのでしょうか。スーパーから見た「日本」について聞きました。
話を聞いたのは、スーパーでの勤務経験のある中国人2人です。
陳さん(雲南省麗江市出身、26歳)は今も働いており、段さん(山西省長治県出身、24才)は2016年の12月まで約1年間、働いていました。
陳さんは「日本のスーパーのシステムは素晴らしい」と称賛します。
「例えばスーパーのカゴの側面をよく見ると、実は長方形ではなく、台形です。台形は最も安定的な形ですので、重なっても倒れにくい。こういう細かいところの気遣いは素晴らしいです」
陳さんが働く際、分厚いマニュアルを渡されました。「覚えるのは大変でした」という陳さんですが、教育システムは評価しています。
「商品の数によって、レジ袋のサイズ、枚数などもきちんと決まっていて、とても作業がしやすいです」
また、マニュアルを通して日本の食文化の勉強もできたそうです。
「エビフライとエビの天ぷらの違いとか、違う種類のオレンジの名前とか、一個一個名前を覚える必要があります。マニュアルで詳細に記載されているので、とても勉強になりました」
一方、段さんもマニュアルのわかりやすさを認めつつ、決まり文句になっている接客用語は、気になったそうです。
「何十回も何百回も『いらっしゃいませ。商品をお預かりします。…ポイントカードはお持ちですか。○○円を預かりました。○○円のお釣りです。ありがとうございました』を重複しなければなりません。たいへんですね」
決まり文句の繰り返しは、お客さんのサービスにもよくないと思っているそうです。
「店員は疲れてしまい、効率も悪くなります。中国のスーパーのレジの人は、少し無表情で黙々と作業をする感じですが、日本よりは、レジが早く進んでいるような気もします……」
陳さんは、扱う商品の多さに驚いたそうです。
「駐車券、ビールの共通券、卵券、ハーゲンダッツ券、JCBのギフト券などの扱い方を覚えないといけません。さらに、お客さんのポイントを確認する必要があるし、失効するポイントのこともお客さんにリマインダーしないといけないですね」
段さんは自分の仕事に、三つの比喩的な名前をつけています。
「煉瓦運び」
「ミズ袋こすり」
「腎臓売り」
「煉瓦運び」は、棚整理の時に、重い水のボトルなどを運ばないといけないこと。
「ミズ袋こすり」は、半透明の袋を使いやすいように口を開けておく作業。生鮮食品を入れるお客さん用で単純な作業が続きます。
気になる「腎臓売り」は?「いわゆる命を削ってお金を稼いだという意味です」(段さん)。
食品名などは覚えられるものの、重労働のわりには、日本語の上達になかなかつながらない限界を感じているという2人。
段さんは我慢の末、1年間ぐらいで仕事を辞めました。陳さんもシフトの管理が厳しいことから、辞めることも考えているそうです。
陳さんが気になったのは、スーパーに来る一人暮らしの高齢者です。
自炊している高齢者が、少量のパックのお肉をいくつも買っていくそうです。
「あんなお年寄りが一人でスーパーに来ることは、中国では考えられません。親戚や孫が同伴すべきだと思いますけど」
段さんは、一人の孤独なおばあちゃんとのエピソードを教えてくれました。
「かなり高齢で、背も縮んでおり、自分も何か手伝うことがないかと思い、きちんとすべての商品をミズ袋(生鮮食品用の半透明の袋)に入れて、渡したんです。そうしたら、おばあちゃんは『優しいですね』と褒めてくれて、ポケットからビスケットやせんべいなどのお菓子を取り出し、私にくれました。何だか、とても印象に残りました」
日本の買い物客はどのように見えるのでしょう?
主婦はじっくり商品を選択するそうです。鮮度や、値段など、商品を比較しながら手に取っていきます。主婦のお客さんは、ほぼ毎日来るので、スーパーのその日の特売品を中心に購入し、買い物の量はそれほど多くありません。大体一日の量を購入する感じで、食材から献立の推測もできるそうです。
2人が「面白い」と口をそろえたのは、サラリーマン。
「彼らは携帯を手にしながら、おそらく帰宅途中に、奥さんの指示で買い出しをしているのでしょう。『ネギ1本、はい。豆腐、絹か木綿か、はい、木綿…』サラリーマンは奥さんの指示通りに商品を選びます。おそらく任務終了が目的なので、ぜんぜん商品の詳細を見ず、どんどん商品をカゴに入れます。最後は、自分の好きなお酒を選んで、買い物終了という感じになります」(段さん)
嫌な思いはなかったのでしょうか?
陳さんは、「挫折」の経験を話してくれました。
「『ポイントカードを持っていらっしゃいますか』と言うと、なぜかすぐ外国人だとバレてしまうんですね。そして、お客さんが私のネームカードを見て、外国人だと分かると、急にとても簡単な日本語で話しかけてくれるんです。ジェスチャーを交えながら、『2000円、チャージ、して、くださいね』」と話してくれるんですが…。自分の日本語のせいだと思い、挫折感を覚えますね」
また、陳さんは「もともと機嫌が悪かったか、あるいは私の名札を見て、中国人だと分かって機嫌が悪くなったのか不明なんですが…」と前置きした上で、「本当に嫌な思い」も教えてくれました。
「当時、彼は91円の缶のお酒を購入しました。袋はいらないと言ったので、2円のエコ割引を適用して、私は『89円になります』と言いました。すると、なぜか91円にこだわり、『外国人だから頭が悪い』とののしってきたんです。小さい出来事ですが、やはり心が傷つきますね」
日本人のマナーについても気になる場面に出くわしたことがあるそうです。
陳さんは、レジで袋がいらないと言い、2円のエコ割引を受けたお客さんが、その後「袋をください」と言いに来たことがあり、驚いたそうです。
また、段さんは、備品を持っていく日本人のお客さんを目撃したことがあるそうです。
「ストロー、スプーン、割り箸などは、それが必要な商品を買ったお客さんのために用意されています。でも、中には、お弁当や即席麺を1個買っただけで、何膳もの割り箸を持っていく人や、飲み物を一つしか買っていないのに、ストローをいっぱい持ち出す人がいましたね」
「どんな国でも、マナーのいい人と、悪い人はいるものです」というのが2人の結論でした。
スーパーでは「お客さんが神様です」と叩き込まれ、かなり鍛えられたという2人。
一人っ子で、中国にいた時にアルバイトの経験がゼロだったこともあり「スーパーを経験してから、おそらくほかのどんなバイトにも耐えられるようになったと思いますよ」と前向きに話してくれました。
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