IT・科学
ビル・ゲイツ、中国のSNS戦略 「微博」ではなく「微信」選んだ理由
ツイッターやフェイスブックが使えない中国。世界の著名人の多くは、中国内で使われているSNSにチャンネルを開設しています。ビル・ゲイツ氏のその一人ですが、彼が選んだのは中国版のLINE「微信(WeChat=ウィーチャット)」でした。中国版のツイッター「微博」アカウントは「開店休業」状態です。両者の使い分けから見える、ゲイツ氏のSNS戦略とは?
ゲイツ氏は2月、「微信」に中国語の動画で「ニーハオ、ようこそ私のWeChatアカウントへ」とあいさつしました。続いて英語で「これは私の個人ブログです。私が会った人、読んでいる本、そして勉強しているものをシェアします。あなたもこの会話に参加することを待っています」と投稿しました。
「微信」側もゲイツ氏の公式アカウントであることを認めています。
今後は、健康問題やエネルギーイノベーション、教育改革と読書ノートなどを公開していくとしています。
アカウントは、北京にある「播鋭智コンサルティング」というコンサル会社が運営しています。
「播鋭智コンサルティング」は、ゲイツ氏が立ち上げた「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」と関係の深い会社「Global Health Strategies」が主な株主になっています。
今回、注目されているのは、ゲイツ氏が、中国版ツイッターの「微博」ではなく、LINEと似た機能を持つ「微信」を選んだということです。
これまで、外国の著名人の多くは「微博」のアカウントで発信をしています。例えばイギリス前首相のキャメロン氏、インド首相のモディ氏、アップルCEOのティム・クック氏、メディア王のルパート・マードック氏、宇宙物理学者スティーブン・ホーキング氏がいます。
ゲイツ氏も2010年には「微博」のアカウントを開設し、325万を超えるフォロワーを有しています。ただし更新が少なく、2016年には「微博」がまったく更新されませんでした。
ゲイツ氏は、なぜ、新たに「微信」を選んだのでしょう?中国のSNSに詳しい中国・復旦大学ジャーナリズムスクールの周葆華(ゾウ・バオホア)教授に聞きました。
周教授は、まず「微信が持つ強いコミュニケーションチャンネルの効果」を挙げます。
「微信」は現在、中国で最大のSNSになっています。ユーザー数は8億人を超えています。「ユーザー数が多く、情報拡散の形式も多種多様です。(多くの人に発信できる)パブリックアカウントのほか、(特定の人と交流する)チャット、グループチャット、モーメンツなどがあります」
周教授が注目するのは「コミュニティ」の強さです。
「他のSNSに比べて、ユーザーの『忠誠度』が高く、ゲイツ氏は微信の持つコミュニケーションチャンネルとしての効果を重視したのでしょう」
周教授は「微博」と「微信」の違いについて「微博は『広場』であり、マスコミュニケーションに適しています。微信は『リビングルーム』で、一部のオーディエンスへの情報伝達に優れています」と分析します。
「微博は、気軽な情報でも良いのに対し、微信は、よりまとまった情報提供がメインになります」
周教授は、「微博」ではなく、「微信」を選んだところに、ゲイツ氏の考えが見て取れると指摘します。
「ゲイツ氏は微博のアカウントを持っていますが、あえて微信を開通したのは、彼が精力を注いでいる慈善事業を、より専門的なオーディエンスに届けたいと考えているからでしょう」
一方、周教授は課題もあると言います。
「微信はSNSとしての爆発的な成長時期を過ぎています。そのため、フォロワー数の確保や、今後、ハイクオリティのメディアとして成長できるかは、未知数です」
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