IT・科学
ドクター・中松、絶体絶命! 余命宣告で選んだ「楽しくて難しい道」
数々の奇想天外な発明で世の中を沸かしてきたドクター中松氏(87)。その彼がいま、正真正銘の「命をかけた発明」に全精力を注いでいます。自身が患う「前立腺導管がん」の治療法です。「この発明ができなかったら、私は今年末に死ぬんです」
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数々の奇想天外な発明で世の中を沸かしてきたドクター中松氏(87)。その彼がいま、正真正銘の「命をかけた発明」に全精力を注いでいます。自身が患う「前立腺導管がん」の治療法です。「この発明ができなかったら、私は今年末に死ぬんです」
数々の奇想天外な発明で世の中を沸かしてきたドクター・中松氏。その彼がいま、87歳にして初めての「命をかけた発明」に全精力を注いでいます。自身が患う「前立腺導管がん」の治療法です。「この発明ができなかったら、私は今年末に死ぬんです」。ノーベル賞の発表を目前に控え、10年前にイグ・ノーベル賞に輝いた「世界の発明王」が語った言葉は――。
13年12月、近所の病院に検査入院した際、医師から「リンパ腺が腫れている」と指摘されました。腸内などを調べてもらいましたが、がんは見つかりません。「それでもリンパが腫れるのは何かあるって思った。それで生検をやってくれと私の方からお願いしたんですよ」。針を使って体の組織を採取する生検法をやってみると、がん細胞が見つかったのです。
「適切な健康管理で最大144歳まで生きられる」とかつて論文に記した中松氏。「ウソだろうと。毎日の食生活を写真で記録して、ここまで栄養に気を遣ってきたのは私だけなんですから。そんなことはありえないと」
国内の屈指のがん専門医を訪ねまわったものの、結果はやはり前立腺導管がんで「治療法なし、余命は2年」。この時、これからとるべき三つの選択肢が頭に浮かんだと言います。
1.このまま何もせずに黙って死を待つ。
2.ちまたの人が「いいよ」と勧めるがんに効く治療法を試してみる。
3.自分で治療法を発明する。
「瞬間的に3番目を選びましたね。先が短いわけだから。ある人には『治らないがんだから、粛々と死になさい』と。キノコを持ってきて効くからと来られた人もいるんだけど、丁重にお断りして。ここぞまさに天性の発明力を発揮する時と思ったんですよ。そして考案したのが、このがん撲滅の10のメソッド(DNT1~10)です」
――最初に「がん撲滅の歌」とありますね。
「どういう仕組みか説明しましょう。これは歌に特殊な周波数の振動と言葉を練り込んであるんです。これを患者が歌うことによって、横隔膜と声帯が前頭葉の免疫を増大する部分を刺激し、免疫力を高めるという発明です。不治の病を治すための治療法としての歌ですね」
――先月のイグ・ノーベル賞授賞式で歌われたのがこれだったんですね。
「そうです。ハーバードで歌って1500人が拍手喝采。アメリカで歌手としてもデビューしたわけです」
「そして…」と中松氏が取り出したのは『打ち破る力』と銘打ち、7月に出版した自著。
「この本は『最終講義』って書いてあって、まあ、死ぬ前提になっちゃてるんですが、まあそれは置いておきましょう。ここには30の言葉を紹介してます。歌で免疫力が高まった状態に、目からこの言葉をぶち込むんです。これが2番目のメソッドですね」
中松氏によると、ほかにがん撲滅の「飲み物」(DNT3)、「サプリメント」(DNT4)、「味」(DNT5)の発明ができたそうです。残るはカレーや筋トレ法、最後にはがん撲滅のロボット… 年末まで3カ月を切りましたが、間に合うのでしょうか。
「大変ですよそれは。タイムリミットが迫ってきてます。ハーバードとかMITとかに講義に行ってるから、発明の時間がなかなかとれない。隙間を縫うようにしてやってるんです」
――それでも失礼ですが、どこか楽しんでいるようにも見えるんです。
「それはこういうことです。物事には易しい道と、難しい道がありますね。私は撰難楽(せんなんらく)と言ってるんですが、そういう易しい道と難しい道がある時は必ず、難しい道を選べと。しかもそれをしかめっ面して『嫌だ嫌だ』と言って難しい道を行くんじゃなくて、楽(らく)、すなわち楽しみながら行けと。今回のがんという非常に難しい道もそうです。楽しんで行くと。いままでの医療では解決できないんだから、新しい治療法を発明していく、それも楽しみながら。こんな具合に新しく発明精神を適応してやってるわけなんですよ」
最後に、ノーベル賞で日本人の受賞者が出るのか尋ねてみました。
「1996年に私がスウェーデンを訪れて、ノーベル賞関係者を前に講演をしたことがあった。以来、私が黒子役として働きかけているので大丈夫だと思います」
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