話題
「動物は人間の玩具か」イケメンのゴリラ写真集、編集しながら考えた
「イケメン」として有名な東山動植物園のゴリラ、シャバーニの写真集が出版されます。「行き過ぎた動物のアイドル化はやめてほしい」との園側の要望に応える形での出版。代わりにニーチェやダンテら偉人の名言を添えたことで、重厚感ある異色のゴリラ写真集となりました。
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「イケメン」として有名な東山動植物園のゴリラ、シャバーニの写真集が出版されます。「行き過ぎた動物のアイドル化はやめてほしい」との園側の要望に応える形での出版。代わりにニーチェやダンテら偉人の名言を添えたことで、重厚感ある異色のゴリラ写真集となりました。
「イケメン」として有名な東山動植物園(名古屋市千種区)のゴリラ、シャバーニの初のソロ写真集が出版されることになりました。「行き過ぎた動物のアイドル化はやめてほしい」との園側の要望に応える形での出版。代わりにニーチェやダンテら偉人の名言を添えたことで、重厚感ある異色のゴリラ写真集となりました。
シャバーニは18歳のニシローランドゴリラ。同園が今年の「春まつり」のポスターにシャバーニを起用したところ、「イケメンすぎる」などとSNSで拡散し、一躍全国区の人気になったそうです。
今回写真集を出版することになった扶桑社出版企画部の編集者、鈴木友美さんもネットでシャバーニの「イケメンぶり」に気づいた一人でした。「リサーチのついでに何げなくネットサーフィンをしていたら、シャバーニのまとめサイトができていて。表情がりりしくて確かにイケメンでした」
さっそく動植物園側と話し合いが持たれましたが、園側にはある不安もあったそうです。それは「動物の過度な擬人化にならないか」ということ。園の広報担当者は「話題として取り上げてもらうのは本当にありがたいのですが、バラエティー的要素だけが一過性のブームの中で一人歩きし、ゴリラを始め動物そのものへの関心が逆に高まらない結果となってしまうのではないかと思った」と明かします。
「動物を人間のおもちゃにしてしまう、しかもそれを動物園が音頭をとってするというのはちょっと違うんじゃないか、とも思ったんです」
扶桑社側はそうした園側の要望を全面的に受け入れることを決めました。小林孝延編集局長はこう言います。「動物園側の言うことがすごく理解できた。写真集はキャッチーで派手な作りにはならなかったかもしれないが、長く愛され続ける写真集にしたいという思いは当初から編集者の鈴木にあった。しかも東山動植物園の公認の写真集にすることができた。結果としてこれでよかったんです」
鈴木さんも言います。「擬人化しないという方向で決まり、例えばシャバーニに吹き出しを付けてしゃべっているかのようにする見せ方も使わないようにしました。それでもシャバーニの表情には深みがあって、表情豊かで…。十分に成立したんです」
さらに企画会議の中で「偉人の名言を載せたらどうか」という案が出ました。たしかにシャバーニの威厳ある顔つきは、今にも人々をうならせる格言を口にしそうな気配を感じます。「『シャバーニならこんなことを考えてそう』と名言を並べ、スタッフと話し合いながら写真とつなげていきました」と鈴木さんは言います。
動植物園の担当者は「細かい調整で心配していた点がクリアされた。過去の偉人の言葉だとシャバーニ自身がしゃべっているような印象はほとんど受けないので、よかった」と話しています。
この数カ月、仕事を通じてシャバーニと向き合ってきた鈴木さん。デスクまわりは「ゴリラまみれ」になったそうです。
小林編集局長は「『シャバーニと視線が合ったらキュンとする~』とか、写真並べて『こっちの方がイケてるよね』とか、僕には理解できないレベルにゴリラ女子化してました」と話していました。
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「東山動植物園オフィシャルゴリラ写真集 シャバーニ!」は10月3日、全国の店頭に並ぶ予定。A5判64ページで1080円(税込み)。
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