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渡辺謙、自殺も考えた絶望の日々 阪神大震災で目覚めた「生」
55歳でブロードウェイに挑んだ渡辺謙さん。活躍に世界が注目しています。その成功を手にするまでには、自殺も考えた絶望の日々がありました。
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55歳でブロードウェイに挑んだ渡辺謙さん。活躍に世界が注目しています。その成功を手にするまでには、自殺も考えた絶望の日々がありました。
米国演劇界最高の栄誉・トニー賞で、渡辺謙さん(55)がミュージカルの主演男優賞にノミネートされました。受賞は逃したものの、主演作「王様と私」はリバイバル作品賞など4部門で受賞しました。
渡辺謙さんは1959年新潟県生まれ。劇団の研修生からスタートし、84年「瀬戸内少年野球団」で映画デビュー。87年のNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」で一躍有名になりました。
ところが89年、急性骨髄性白血病に襲われ、撮影中だった主演映画「天と地と」を降板。治療を経て復帰するも、94年に再発――。
《軌道修正して肉体的、精神的、経済的にもマイナスからゼロに戻し、やっと立ち上がった瞬間にいきなり超ヘビー級のパンチを食らった感じ。最初の病気の時は一瞬自殺を考えたこともあったけど、二度目はそんなことを考える気力もないほど深い絶望でした》(99年12月6日アエラ 現代の肖像)
退院後、悶々とした自宅療養の日々で生きる意味を見いだせずにいた渡辺さんを震撼させたのが阪神大震災でした。
《あの時ほど自分の無力さを感じたことはなかった。そんな僕にできるのはやはり俳優として人々に喜んでもらい、社会と繋がっていくことしかないと思いました。それができるなら僕の『生』にも意味があると》(同)
二度目の復帰後はドラマに映画にとさらなる飛躍を見せる渡辺さん。トム・クルーズさん主演のハリウッド映画「ラストサムライ」(03年公開)では、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされます。受賞は逃すものの国際的スターの道を歩み始めました。
渡辺謙さんをハリウッドに送り込んだキャスティング・ディレクターの奈良橋陽子さんは「(渡辺さんは)外国人にはセクシーに映る。セクシーは米国で成功するには重要な資質。謙さんはそれを自然に醸し出せる」と話します。05年の米誌ピープルは米国外の「セクシーな男性」の一人として渡辺さんを選出しています。
一方で、前夫人の巨額借金騒動やドロ沼離婚裁判など、家庭内での問題も抱えていました。05年4月に正式に離婚、同年12月に女優の南果歩さんと電撃再婚しています。
会場に入りました! pic.twitter.com/sYkTNZWOrZ
— kahominami 南 果歩 (@kahominami) 2015, 6月 8
前夫人との間の子ども、渡辺大さんと杏さんはともに俳優として活躍しています。01年の夕刊にはこんな記事が掲載されていました。
《渡辺謙さん 娘の温かさ感じるマフラー》
1年前の冬、北極圏で1カ月半ほどの仕事があった。現地入りして二週間、日本から届いた荷物に中学二年の長女(14)からの手編みマフラーが入っていた。犬の刺しゅう入り。手作りのプレゼントをもらったのは初めて。出発前、コソコソやってるなと気づいていたが「バレンタイン用か? クッ……色気づきやがって」と思っていた。「僕のだったとは。うれしくもあり、まだまだ子どもかと拍子抜けした感じでもあり……」と、父は感激と妙な気分を味わった。「ただ、現地は極寒過ぎてこのマフラーでは外に出られなかった。今、犬と散歩に行く時にありがたく巻いてます」
進行中の仕事によって家でも顔つきがころころ変わるらしい。役に入り込んで静電気みたいな不快な刺激を発するのか、以前は一仕事終わるたびに家族のだれかが熱を出した。自分の影に光を当てて別人を生む仕事ぶりを間近に見守ってきた家族とは、思っていることを言い合える仲だ。「僕の健康にかみさん以上にうるさいのは娘。何げなく不在を気にかけるのは高校一年の息子の方ですね」(01年2月13日付夕刊)
杏さんはNHKの連続テレビ小説「ごちそうさん」で夫役の東出昌大さんと結婚。その時、父・渡辺謙さんは……
娘が嫁ぐことになりました。予定は聞いておりました。彼も仕事を通して人となりを存じております。本当に子育てと言う大きな事業が終わったなというホッとした感覚です。あまり身内で誉めるのもどうかと思いますが、本当に良縁に恵まれたなと。どうか今後とも二人を応援して頂ければと、父より。
— 渡辺謙 (@harryken311) 2014, 12月 27
ところで、渡辺さんは熱狂的なプロ野球・阪神ファンとしても知られています。しばしば甲子園球場で観戦しているところをツイートされたり写真に撮られたり、自撮りらしき画像をアップしたりしています。
弛めない和田監督の采配に脱帽です。きっちり勝ちパターンで締めたゲーム。ゴメス殿にはプレッシャーの文字は無い。メッセ君もいつも通りのキレの良いピッチ。集中した打線。これ以上何も言うことないナイスゲーム!また明日。 pic.twitter.com/7tHSmFTmqZ
— 渡辺謙 (@harryken311) 2014, 10月 25
トニー賞ノミネート後の5月にも、阪神の戦いぶりを異国から熱くツイートしていました。
少しタイガースをフォローする余裕が出てきた休演日。GWで満員の甲子園、情けないゲーム。負ける試合はあるのは当然、でもこんな無様な負け方はファンに失礼かと。バッテリーに問題は無いのか?もっとしつこく粘っこく攻めてほしい。もう昨年の屈辱と後悔を忘れてしまったのか?どうしたタイガース!
— 渡辺謙 (@harryken311) 2015, 5月 4
こういうゲームを待ってました。粘って粘って最後まで諦めない!ベンチも一体になって、ひっくり返す。開幕2戦目を思い出すような関本君の打席、新井くんの食らい付くサヨナラ打。各チーム決めての無いセリーグ混迷の中、こうやって一つ一つ勝ち上がって行く内に眠っていた虎の本能が目覚めるのです。
— 渡辺謙 (@harryken311) 2015, 5月 6
そんな渡辺さんは、トニー賞授賞式後の公演前に、こうツイートしています。
休演日明け。祭りの後、喧騒も静まり、新しい週が幕を開けます。僕の挑戦もあと1ヶ月と少し。ここから本当のブロードウェイが始まる気がする。低く垂れ込めていた霧は晴れ、目標は目の前の観客。一回毎の舞台にどこまで真摯に向き合えるか。さぁ、行ってくっぺ、Show must go on!!
— 渡辺謙 (@harryken311) 2015, 6月 9
ハリウッドに続き、55歳でブロードウェーに挑戦しトニー賞ノミネートという名誉を得た渡辺さん。「王様と私」への出演は7月半ばまでだそうですが、ロングラン公演のため、来年再び参加したいと希望されているようです。熱いハートとチャレンジ精神で世界中の演劇ファンをまだまだ魅了し続けてくれることでしょう。