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渡辺謙、自殺も考えた絶望の日々 阪神大震災で目覚めた「生」

55歳でブロードウェイに挑んだ渡辺謙さん。活躍に世界が注目しています。その成功を手にするまでには、自殺も考えた絶望の日々がありました。

渡辺謙さん
渡辺謙さん 出典: 朝日新聞

 米国演劇界最高の栄誉・トニー賞で、渡辺謙さん(55)がミュージカルの主演男優賞にノミネートされました。受賞は逃したものの、主演作「王様と私」はリバイバル作品賞など4部門で受賞しました。

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米ニューヨークで7日、第69回トニー賞の授賞式会場に到着した渡辺謙さん(中央)と共演者のケリー・オハラさん(右)、ルーシー・アン・マイルズさん=ロイター
米ニューヨークで7日、第69回トニー賞の授賞式会場に到着した渡辺謙さん(中央)と共演者のケリー・オハラさん(右)、ルーシー・アン・マイルズさん=ロイター

大病を越えて

 渡辺謙さんは1959年新潟県生まれ。劇団の研修生からスタートし、84年「瀬戸内少年野球団」で映画デビュー。87年のNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」で一躍有名になりました。

 ところが89年、急性骨髄性白血病に襲われ、撮影中だった主演映画「天と地と」を降板。治療を経て復帰するも、94年に再発――。

 《軌道修正して肉体的、精神的、経済的にもマイナスからゼロに戻し、やっと立ち上がった瞬間にいきなり超ヘビー級のパンチを食らった感じ。最初の病気の時は一瞬自殺を考えたこともあったけど、二度目はそんなことを考える気力もないほど深い絶望でした》(99年12月6日アエラ 現代の肖像)

 退院後、悶々とした自宅療養の日々で生きる意味を見いだせずにいた渡辺さんを震撼させたのが阪神大震災でした。

 《あの時ほど自分の無力さを感じたことはなかった。そんな僕にできるのはやはり俳優として人々に喜んでもらい、社会と繋がっていくことしかないと思いました。それができるなら僕の『生』にも意味があると》(同)

急性骨髄性白血病治療のため入院すると記者会見する俳優の渡辺謙さん=94年8月
急性骨髄性白血病治療のため入院すると記者会見する俳優の渡辺謙さん=94年8月

「国際的スター」への道

 二度目の復帰後はドラマに映画にとさらなる飛躍を見せる渡辺さん。トム・クルーズさん主演のハリウッド映画「ラストサムライ」(03年公開)では、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされます。受賞は逃すものの国際的スターの道を歩み始めました。

 渡辺謙さんをハリウッドに送り込んだキャスティング・ディレクターの奈良橋陽子さんは「(渡辺さんは)外国人にはセクシーに映る。セクシーは米国で成功するには重要な資質。謙さんはそれを自然に醸し出せる」と話します。05年の米誌ピープルは米国外の「セクシーな男性」の一人として渡辺さんを選出しています。

ゴールデングローブ賞の助演男優賞候補に選ばれ、会見する渡辺謙さん=03年12月、都内で
ゴールデングローブ賞の助演男優賞候補に選ばれ、会見する渡辺謙さん=03年12月、都内で

妻、そして子どもたちは

 一方で、前夫人の巨額借金騒動やドロ沼離婚裁判など、家庭内での問題も抱えていました。05年4月に正式に離婚、同年12月に女優の南果歩さんと電撃再婚しています。


 前夫人との間の子ども、渡辺大さんと杏さんはともに俳優として活躍しています。01年の夕刊にはこんな記事が掲載されていました。

《渡辺謙さん 娘の温かさ感じるマフラー》
 1年前の冬、北極圏で1カ月半ほどの仕事があった。現地入りして二週間、日本から届いた荷物に中学二年の長女(14)からの手編みマフラーが入っていた。犬の刺しゅう入り。手作りのプレゼントをもらったのは初めて。出発前、コソコソやってるなと気づいていたが「バレンタイン用か? クッ……色気づきやがって」と思っていた。「僕のだったとは。うれしくもあり、まだまだ子どもかと拍子抜けした感じでもあり……」と、父は感激と妙な気分を味わった。「ただ、現地は極寒過ぎてこのマフラーでは外に出られなかった。今、犬と散歩に行く時にありがたく巻いてます」
 進行中の仕事によって家でも顔つきがころころ変わるらしい。役に入り込んで静電気みたいな不快な刺激を発するのか、以前は一仕事終わるたびに家族のだれかが熱を出した。自分の影に光を当てて別人を生む仕事ぶりを間近に見守ってきた家族とは、思っていることを言い合える仲だ。「僕の健康にかみさん以上にうるさいのは娘。何げなく不在を気にかけるのは高校一年の息子の方ですね」(01年2月13日付夕刊)

渡辺大さん(左)と杏さん
渡辺大さん(左)と杏さん

 杏さんはNHKの連続テレビ小説「ごちそうさん」で夫役の東出昌大さんと結婚。その時、父・渡辺謙さんは……


ネットでも話題、熱いタイガース愛

 ところで、渡辺さんは熱狂的なプロ野球・阪神ファンとしても知られています。しばしば甲子園球場で観戦しているところをツイートされたり写真に撮られたり、自撮りらしき画像をアップしたりしています。


トニー賞ノミネート後の5月にも、阪神の戦いぶりを異国から熱くツイートしていました。



ここからが本当の開幕

 そんな渡辺さんは、トニー賞授賞式後の公演前に、こうツイートしています。


 ハリウッドに続き、55歳でブロードウェーに挑戦しトニー賞ノミネートという名誉を得た渡辺さん。「王様と私」への出演は7月半ばまでだそうですが、ロングラン公演のため、来年再び参加したいと希望されているようです。熱いハートとチャレンジ精神で世界中の演劇ファンをまだまだ魅了し続けてくれることでしょう。

渡辺さんの故郷・新潟県魚沼市も快挙をたたえています。写真は14年11月、名誉市民の称号を受けた時の渡辺謙さん(中央)。右は妻の俳優南果歩さん、左は大平悦子市長=魚沼市の小出郷文化会館、魚沼市提供
渡辺さんの故郷・新潟県魚沼市も快挙をたたえています。写真は14年11月、名誉市民の称号を受けた時の渡辺謙さん(中央)。右は妻の俳優南果歩さん、左は大平悦子市長=魚沼市の小出郷文化会館、魚沼市提供 出典:新潟)「渡辺謙さん、魚沼の誇り」 米トニー賞で作品賞

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