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 朝日新聞社メディア事業本部

遠隔手話通訳でろう者の活躍の場を広げる 「ShuR」が目指す世界

ShuR(シュアール)は、「Tech for the Deaf(技術を聴覚障がい者のために)」というスローガンのもと、手話とITを組み合わせた「遠隔通訳」などのサービスを提供するベンチャー企業です。21歳で起業し、手話通訳士の資格も持つ代表取締役の大木洵人さんに、事業の歩みや聴覚障がい者と聴者が対等に活躍する社会をつくりたいという思いをうかがいました。

聴者とろう者の間にある「言葉の壁」を壊したい

株式会社ShuRは、遠隔手話通訳サービス「モバイルサイン」と手話のデータベース「SLinto(スリント)」を提供する企業として、2008年に設立されました。

代表取締役をつとめる大木さんが手話に興味を持ったのは、偶然でした。中学生の頃、NHKでやっていた手話教室を見て「いつか手話をしてみたい」と思ったのが、最初の接点なのだそうです。

代表取締役の大木洵人さん

身近にろう者がいたわけではなく、手話に興味を持ったことがきっかけで、大学に入ってから、ろう者と関わるようになりました。ろうの仲間や友人が増えていくにつれ、「活動的ですごく輝いている人ばかりなのに、聴者の社会と全然つながっていない」ことに気づきました。その原因は日本語と手話という、言葉の壁でした。

「この壁を壊したい」と、ろう者と聴者をつなぐ方法がないか考えるようになったころ、経営学の授業課題で新しいビジネスモデルを発表することになりました。その時思い出したのが、高校時代、アメリカ留学していた時、日本の家族と連絡を取っていたSkypeでした。「これを使えば、身近なろう者の困りごとを解決できるのではないか」と、テレビ電話を使った手話通訳サービスというアイデアが生まれました。「ろう者を助ける新しいビジネスをつくるというより、ろう者と仲良くなりたい、というイメージで活動が始まりました」と大木さん。高い評価を受けた学生プロジェクトから、ShuRは生まれました。

関東から遠隔手話通訳で被災地の聴覚障がい者をサポート

設立から3年後、2011年に東日本大震災が起こりました。甚大な被害を受けた被災地では、聴覚障がい者らが支援を受けられない状況が発生しました。

災害時には、社会的弱者が情報を得られないことで、他の人よりも危険な状況に陥るリスクがあります。聴覚障がいがあるために、口頭で伝えられたことがうまく伝わらないなどの事態は、生命を左右しうるものです。

ShuRは震災が起きた当日から被災地に向けてサービスを無料で提供し、手話通訳者のボランティアをSNSで募集し、24時間体制で被災地の聴覚障がい者をサポートしました。こうした迅速な取り組みや遠隔通訳の利便性が評価され、各種団体から助成や補助金を受けることができるようになり、通訳者もボランティアではなく雇用に切り替えるなど運営が安定しました。

モバイルサインを使った対面型通訳サービス

また、そのころ普及し始めたiPadなどタブレット端末で手話通訳サービスを始めたところ、JR東日本での導入が決まり、各駅の窓口に端末を置いてもらえるようになりました。その後も大企業や自治体での導入が進み、電話リレーサービス(*)の業務も受託しています。「私たちが独自の技術を開発したわけではありません。サービスの内容が世の中の変化にうまく合致したことで受け入れられていったのだと思います」と大木さんは振り返ります。

(*)電話リレーサービス:聴覚や発話に困難のある人との会話を、通訳オペレーターが手話や文字、音声を双方向で通訳する電話による公的サービス。法律に基づき2021年にスタート。

遠隔手話サービスで若手通訳者の働く場が広がる

遠隔手話通訳を取り巻く状況は、変化しています。大木さんによれば、以前は駅や自治体窓口などでの業務が中心でしたが、働くろう者の増加に伴い企業現場での通訳が増えているそうです。特に新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンラインでのミーティングが増えました。その結果、対面で会議をしていたときのように企業内でろう者をサポートするのが難しくなり、遠隔手話通訳に対する理解とニーズが高まっているそうです。

モバイルサインを使ったコールセンター型通訳サービス

遠隔手話サービスや電話リレーサービスの普及は、手話通訳者にとって新たな市場の創出にもつながります。特に若い世代の手話通訳者たちはITの活用に積極的で、手話通訳者側にも、ろう者側にも若手の活躍機会が拡大しているそうです。

またShuRでは当初、手話通訳者を正社員として雇用していましたが、プロジェクトごとに相性のいい手話通訳者をマッチングして業務にあたる方が、より柔軟な働き方が可能になるとの考えから、現在は業務委託契約に切り替えています。

手話通訳者になるには、地域での講習会や手話サークルで手話を学び、手話通訳士の資格を取得するのが一般的です。しかし、手話通訳士の合格率は低く、また合格者の平均年齢も40歳を超えているなど、安定して手話通訳者が増えることを見こめる状況ではありません。

25歳で手話通訳士の試験に合格した大木さんは、「手話通訳士は入り口」と考えています。手話通訳士の試験が難しいという声もありますが、大木さんは手話通訳の質を保つためには必要な難易度だとします。資格をとっても「日常的に訓練していかないと、現場で使える技術はなかなか身につきません」と話します。

例えば、アメリカの大学では、ろうの学生には卒業するまで授業にはマンツーマンで手話通訳者がついて、学びをサポートします。手話通訳者にとっては専門性を高める訓練の場であり、学生の卒業後はその通訳のスキルを社会に還元していくサイクルができているそうです。大木さんは、「手話通訳の市場を動かす、育てていく構造が必要ではないか」とも指摘しました。

「ろう者の人が聴者の世界で輝くことを支えたい」

ShuRが掲げるビジョンは「聴覚障がい者と聴者が対等な社会を創造する」ことです。その思いを大木さんは最後にこう語ってくれました。

「輝いているろうの人が手話で、日本中で世界中で活躍できる社会を作っていきたい。ろう者のなかには、手話通訳が入ることで、確実に人生の選択肢が広がる方がいます。起業でもいいし、大企業で活躍するのでもいい、ビジネスの世界で成功するろう者が生まれるよう、陰ながら応援していきたいですね」

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本事業は、意思疎通支援従事者確保等事業
(厚生労働省補助事業)として実施しています
(実施主体:朝日新聞社)