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 朝日新聞社メディア事業本部

「言われたことがわからない」「言葉が出てこない」失語症者のコミュニケーションを支えるために

言葉によるコミュニケーションが難しくなってしまう原因は数多くあり、その症状もまた人によって異なっています。「失語症」もそのひとつです。脳が傷ついたことで起きるこの後天的な障がいを取り巻く現状と、失語症の人たちのコミュニケーションを支える意思疎通支援者、その養成を担う言語聴覚士の仕事について、日本言語聴覚士協会の立石雅子副会長と立石恒雄事務局長にうかがいました。

脳の損傷で、伝えたいことがうまく言葉にできなくなる

失語症とは、交通事故や脳梗塞(こうそく)などによって脳の言語中枢が損傷し、伝えたいことをうまく言葉にできなくなってしまう障がいのことです。言葉のイメージから、「完全に話せない人」と誤解されがちですが、そうではありません。

まったく話せないわけではないけれど、自分の考えを「言葉」の形にすることができず、「話す」「読む」「書く」「聞く」といった言語コミュニケーション全般で困難が生じます。「聞こえていても言葉の意味がわからない」「言葉が出ない。言い誤ってしまう」「文字や文章の意味がわからない」といった症状は、耳が聞こえない人ともまた違い、見た目には障害の内容やニーズがわかりにくい上、自分の困りごとを自分で話して伝えることができないことから、誤解されることも少なくありません。

日本言語聴覚士協会の立石副会長によれば、失語症者の人数についても、推計で20万~50万人とされているだけで、明確な数字はわかっていないそうです。そのため行政の施策がまだ行き届いていない現状もあり、社会生活の不自由を改善し社会参加を促すためにも、多様なニーズやシーンに応じた支援が必要とされています。

日本言語聴覚士協会の立石雅子副会長(左)と立石恒雄事務局長

研修を受けて失語症者の意思疎通を支える

失語症者への支援は、家族や言語聴覚士が主に担ってきました。言語聴覚士とは、言葉でのコミュニケーションに困難のある人たちを支援する医療職です。言語の障がいの原因は、失語症のほかにも、聴覚障害、言葉の発達の遅れ、声や発音の機能障害などさまざまあり、それぞれにあわせて、本人がコミュニケーションを取りやすくなるよう訓練や指導、サポートする専門家なのです。1997年に国家資格に制定され、2022年3月現在で、合格者は約3万8千人になります。

2013年の障害者総合支援法施行に伴い、地域の生活を支える事業として、意思の疎通が困難な人を支援する人材の養成や派遣の仕組みが整備されました。失語症に関しては、2018年から、「失語症者向け意思疎通支援者」(以下、意思疎通支援者)の養成がスタート。一般の人でも研修を受講することで、意思疎通の支援に従事できるようになりました。

意思疎通支援者は、研修を受けて登録された都道府県の自治体から派遣され、失語症者の意思や希望を仲介して伝えることで、自立した生活を送れるよう支援するのが仕事です。派遣先は多岐にわたり、自宅や公共機関、金融機関など、失語症者の暮らしに直結する場面に同行しサポートすることになっています。

グループに分かれての演習

意思疎通支援者と失語症者をつなぐ言語聴覚士

日本言語聴覚士協会は、意思疎通支援者の養成カリキュラムの作成や、支援者養成の指導者育成研修なども担っています。言語聴覚士は各自治体で、失語症者本人の特性やニーズなどに合わせて、相性のよい意思疎通支援者を派遣する先を決めたり、研修を受けて支援者養成カリキュラムの指導者となったりする役割もあります。

一般の人が受講できる意思疎通支援者の養成カリキュラムは、講義よりも実習の時間が多い構成で、必修科目40時間、選択科目40時間となっています。実習では、外出先や買い物で失語症者が直面する状況を想定し、音声や文字、絵、身ぶりを使ってコミュニケーションする技術や、身体介助の方法などを習得します。自治体によっては修了時に試験を実施することもあり、しっかり学んだ上で意思疎通支援者として派遣されることになります。

また、意思疎通支援者の指導者を養成する研修は、令和4年度までに795名が終了しています。しかし、言語聴覚士には他にも多くの仕事があり、それに追われて、指導者としての活動が難しくなっているのもまた現実といいます。「意思疎通支援者養成研修も指導者養成研修も徐々に拡大はしていますが、まだ全都道府県では実施されておらず、支援者が都市部に集中する傾向があります。新型コロナの影響で支援者は養成したが、派遣できなかったという地域もありました」と立石副会長は課題を挙げました。

立石恒雄事務局長は「そもそも言語聴覚士の人数が十分ではないので、失語症者支援のためにも、言語聴覚士の数を増やし、より手厚い対応ができる体制を目指したい」と述べました。

失語症者向け意思疎通支援者指導者研修に参加する人たち

まずは知ることから始めよう 4月25日は「失語症の日」

失語症に関しては、症状もどんな困難に直面しているかも一般的にはあまり知られていません。しかし、事故や病気である日突然、言葉を失ってしまう可能性は誰にでもあります。まずは、失語症や意思疎通支援について、知ることが重要になります。

神奈川県には、「オープンスペースふらっと」と名付けた、失語症者や家族、言語聴覚士や支援者らが集まって交流できるスペースがあります。全国各地には「失語症友の会」などの活動を展開している団体もあります。「各種研修の修了者や当事者が、継続的に参加できるような交流の場を作ることも求められています。そうした場を維持し広げていくことで、一般の人たちへの理解も深めていきたい」と立石副会長は話しました。

失語症の人に対して「じっくり聞く」「ゆっくり話す」「丁寧に確認する」といった対応をとることも支援になるそうです。4月25日は「失語症の日」。失語症について理解を深め、支援を広げる機会にしたいですね。

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本事業は、意思疎通支援従事者確保等事業
(厚生労働省補助事業)として実施しています
(実施主体:朝日新聞社)