2019年、大きな時代のうねりの中で、日本を沸騰させる全く新しい映画が誕生した。映画『新聞記者』は、一人の新聞記者の姿を通して、報道メディアは権力にどう対峙するのかを問いかける衝撃作。原案となったのは東京新聞社会部記者・望月衣塑子氏のベストセラー『新聞記者』。政権がひた隠そうとする権力の闇に迫ろうとする女性記者と、理想に燃え公務員の道を選んだある若手エリート官僚との対峙・葛藤を描いたオリジナルストーリーとなっている。
いよいよ6月28日に公開となる本作だが、本作の主人公、女性記者・吉岡エリカを演じるのが今、映画界大注目の韓国人女優シム・ウンギョンだ。
韓国では『サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』など、日本でもリメイクされた話題作のオリジナル版で主役を演じており、広瀬すずや多部未華子ばかりでなく、日本の映画界が注目している抜群の演技力で知られる韓国の若手トップ女優である。
そんな彼女が次に選んだチャレンジは日本映画への進出。中でも精緻でリアルな演技を要求される社会派サスペンスドラマを選んだ。
シム・ウンギョン自身は脚本段階では、果たして自分にこのテーマが表現できるだろうかと悩んだそうだ。
「ただ主人公に惹かれた」
と彼女は言う。
「吉岡エリカという複数のアイデンティティを持ったキャラクターに惹かれた。彼女がときに苦しんだり挫折したりしつつも、集団に対して自分の意志をどう伝えていくかを演じてみたかったんです。」
なんとシム・ウンギョンは全編日本語の芝居に挑戦。圧倒的な表現力と存在感で「父は日本人、母は韓国人、育ちはアメリカ」という多元的アイデンティティを持つキャラクターを完璧に体現してみせた。
断っておくが、本作の主人公は望月衣塑子氏がモデルではない。シム・ウンギョンは脚本を読み込んで、さらに東京新聞社会部を訪れ、望月記者を含む複数の記者に“取材”し、自分の中の女性記者・吉岡エリカを構築していったのだ。
その新聞記者と対峙する内閣官房の情報機関、内閣情報調査室のエリート官僚・杉原を演じる松坂桃李もシム・ウンギョンの演技には賞賛の声を惜しまない。「本番で2回、3回とテイクを兼ねる度に新しい演技のパターンで来るんですね。相対する僕はその引出しの多さには常に圧倒されていました」と語る。
さらにシム・ウンギョンは映画のテーマについても役者ならではの深い洞察を加える。
「今回の『新聞記者』はジャーナリズムに関する映画であると同時に、いろんな考え方が交差する今の世の中に、私たち一人ひとりがどう向き合っていくべきかを問いかけている作品だと思います。」
彼女のコメントを裏付けるようにこの映画における吉岡エリカの存在感は屹立している。新聞記者としてのプロ意識と正義感、家族への想いがないまぜになって生まれる、前のめり過ぎる取材対象への突進力。吉岡はヒーローでも優等生でもないが、まさに「同調圧力」の時代に反発する「個」そのものとして、観る者を圧倒するのである。
「吉岡エリカという役を通じて、『新聞記者』という作品が持つメッセージの深さを伝えられたのか。自分に与えられた宿題をしっかりこなすことができたのか。映画が完成した今も、ずっと考え続けています。そして少しでも多くの方に「あなたは一人じゃないですよ、一緒に悩んでいる人々がいますよ」と伝わってほしいなと、心から願っています。」
フェイクニュースが社会を揺さぶり、報道の価値が厳しく問われる現代。これは「たった今。」リアルに人びとに襲いかかる、さまざまな社会問題にダイレクトにリンクする、今までの日本映画になかった全く新しい社会派エンタテインメント。
『新聞記者』は6月28日に全国公開。
東都新聞社会部の若手記者・吉岡エリカ。ある日、彼女のもとに「医療系大学の新設」に関する極秘文書がファックスで届く。首相肝いりの案件らしいが、誰が何のために送ってきたのかはわからない。許認可先の内閣府を洗い始めた吉岡は、神崎というキーパーソンの存在に気付くが、まさにアプローチしようとした矢先、彼は投身自殺を遂げてしまう。一方、内閣情報調査室(内調)に勤める杉原拓海は苦悩していた。外務省から出向してきたエリート官僚だが、その任務は政権を守るための情報操作やマスコミ工作ばかりだ。有能な公務員としてひたすら上からの指示を遂行してきた彼もまた、外務省時代の尊敬する上司・神崎の死を通じて、官邸が強引に進める驚愕の計画を知ることになる。内調がかけてくる有名無形のプレッシャーと、誤報を出す恐怖。愛する妻子を抱えた一生活者としての立場と、本当の意味で国民に尽くす人間としての矜持。それぞれのキャリアと全人生を賭けた、二人の選択とは!?
『新聞記者』
6月28日(金) 新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国ロードショー
©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
配給:スターサンズ/イオンエンターテイメント
出演:シム・ウンギョン 松坂桃李
本田翼 岡山天音
西田尚美 高橋和也
北村有起哉 田中哲司
監督:藤井道人
脚本:詩森ろば 高石明彦 藤井道人
音楽:岩代太郎
原案:望月衣塑子「新聞記者」(角川新書刊)河村光庸
■シム・ウンギョン/吉岡エリカ(東都新聞社会部記者)
1994年5月31日生まれ、 韓国ソウル特別市出身。04年、ドラマ「張吉山」でデビュー後、子役として多くの作品に出演。06年のドラマ「ファン・ジニ」では主人公の幼少期を演じ、KBS演技大賞青少年演技賞を受賞する。11年、映画『サニー 永遠の仲間たち』で主人公イム・ナミの高校時代を熱演。14年の『怪しい彼女』では第50回百想芸術大賞・最優秀主演女優賞をはじめ数多くの賞を獲得した。また2019年4〜5月にはTBS赤坂ACTシアターにて舞台「良い子はみんなご褒美がもらえる」にも出演。